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Beg For Mercy / G-UNIT

Beg for Mercy


曲目リスト


1. G-Unit
2. Poppin' Them Thangs
3. My Buddy
4. I'm So Hood
5. Stunt 101
6. Wanna Get To Know You feat. JOE
7. Groupie Love
8. Betta Ask Somebody
9. Footprints
10. Eye For Eye
11. Smile
12. Baby You Got
13. Salute U
14. Beg For Mercy
15. G'D Up
16. Lay You Down
17. Gangsta Shit
18. I Smell Pussy


評価: ★★★★★★★★☆☆


アメリカのNYで結成されたラップグループ、G-Unitの1stアルバム。
2003年11月14日発売。


G-Unitは1999年に既にHIP HOP界隈では名前の知られていた50 Cect(以後50)が、地元の友人であったTony Yayo(以後Yayo)と結成したラップグループ。
50の1stアルバムの記事で書いた事件に巻き込まれて活動がやりにくくなるなど、当初は不幸も多く、中々目が出なかったようです。
その後にLloyd Banks(以後Banks)が正式に加入し、3人組のグループに。
50が復帰してからは50のミックステープに客演として参加したり、50と共にG-Unit名義でミックステープをリリースするなどして名前を徐々に広げていきます。
彼らの転機となったのは2003年。50がEMINEMDr.Dreの全面プロデュースした1stアルバムが世界でもヒットアルバムとなり、アメリカのHIP HOPの歴史に名を刻みました。
そのスポットライトは50とずっと一緒に活動してきたG-Unitにも向けられ、注目をあびることに。
彼らもEMINEMのバックアップの下、アルバムリリースをすることになったものの、製作中にメンバーであるYayoが銃所持で逮捕され、勾留するという事態になってしまいます。
その穴埋めとしてYoung Buck(以後Buck)を急遽G-Unitのメンバーとして加入。
そんなゴタゴタな上での1stアルバムである本作のリリースに踏み切りましたが、当時の彼らの勢いにのり、見事にセールス的にも成功した作品となりました。


では、内容に。


G-Unitの特徴は、50のソロ作品と同じくハードさと聴きやすさが同居したような不思議な雰囲気のギャングスタラップ。
どんなにハードなビートでも彼らのラップが乗ると聴きやすい雰囲気になってしまうのが彼らの魔法です。
50のホニャホニャとしたラップ、Banksの舌のもつれるようなラップ、Buckのモッサリとしたラップ、どれもしっかりとスポットライトが当たっている内容になっています。
Yayoも参加しているものの、2曲のみですし4人の中では一番ラップに特徴がないので、本作ではちょっと印象が薄いですね。


挑発的ながらも聴きやすいトラックの上で3人が怖いもの知らずのラップを披露するM-1G-Unit」で始まりを告げた後は、シングル曲のM-2「Poppin' Them Thangs」で耳をガッチリとロック。
重たいトラックの上で3人ともこれまたベストパフォーマンスを披露。Hookは50が担当しているため聴きやすい雰囲気。
上にも書いた特徴であるハードながらも聴きやすい部分をこれでもかというくらい出しています。

M-3「My Bubby」は銃声のSEを所々に入れ込んだハードな楽曲で、流れとしても一気に暗い部分へリスナーを連れ込んでいくような雰囲気。
しかしながら聴きずらさは一切なく、すんなり聴けてしまいます。


M-4「I'm So Hood」は50のソロ曲で、50の武器である耳に残るHookが印象的。
そこからM-5「Stunt 101」、M-6「Wanna Get To Know You feat. JOE」とシングル曲が2曲続く豪華な展開。
どちらも全員バリバリ個性を発揮していますが、前者は特に最後のBuckのラップ、後者はお洒落な雰囲気を後押しするHookでのJOEの歌がインパクトが強くて耳に残ります。
ヒットしたのも頷けますね。


M-7「Groupie Love」、M-8「Betta Ask Somebody」は気の抜けた雰囲気の50のHookともう2人(ちなみに前者はYayoとBanks、後者はBuckとBanks)の緊張感のあるラップの対比が面白いです。
Hookに至っては口ずさんでしまう方も多いのでは?
ギャングスタ系のラップなのにこんな雰囲気をだしてしまうことこそG-Unitの真骨頂。

M-9「Footprints」はBuckのソロですが、Hookは50が担当。
Buckの硬派なラップと50のざっくりとしたHookの対比がこれまた面白い楽曲。本当に曲の作りがうまいです。

クラシックをHookの随所でサンプリングしたトラックが耳に残るM-10「Eye For Eye」を挟んだM-11「Smile」はBanksのソロ曲ですが、本作のメンバーソロ曲では唯一のシングル曲です。
本作では唯一の優しい雰囲気の楽曲で、Hookでもあえてラップで乗り切るBanksの底力が感じられる楽曲になっています。


M-12「Baby You Got」はピコピコ音が印象的なトラックですが、ちょっと好みが分かれそうですね。
50のHookは相変わらずインパクトがありますが。

M-13「Salute U」は、ラップもトラックもまるでギャング映画の1シーンのような緊迫感がある楽曲。
所々で聴こえる銃声もそれを後押ししており、聴いているだけでゾクゾクしてしまいます。
その後に間髪入れず表題曲のM-14「Beg For Mercy」に行く流れもいいですね。
表題曲にも関わらず3分足らずで終わりますが、その短い時間で3人とも見事な仕事ぶりを披露。
ちなみにこの曲のトラックは50の1stアルバムを聴いた方はニヤッとすると思います。

M-15「G'D Up」はハードながらも聴きやすいトラックの上で3人がM-13「Salute U」と同じく緊張感のあるラップ披露する様がインパクト強め。


中盤と同じく気の抜けた雰囲気の50のHookとBuckとBanksのラップの対比が楽しめるM-16「Lay You Down」の後に控えるM-17「Gangsta Shit」は中々分かりやすい攻撃的なトラックで本作でも異色な雰囲気。
最も3人とも難なくラップを乗せており、聴きごたえはかなりあります。
最後を締めくくるM-18「I Smell Pussy」はシンプルな落ち着いた雰囲気のトラックで、良い雰囲気でアルバムを〆てくれます。
Yayoのラップが本作で一番冴えているのはこの曲ですかね。とは言ってもこの曲の他に1曲しかありませんが。


全体的にみてもヒットしたのも頷ける中々の快作です。
18曲という多めの曲数でも、様々なビートによって聴き飽きることはありません。
誰誰が目立っている、誰誰が目立っていないということもなく、バランスの良さもかなりのもの。
上にも書きましたが、本当にハードさと聴きやすさが同居したような感じなんです。
HIP HOPが得意でなくても抵抗なく聴け、ハードなラップ好きでも聴けそうな内容。
見かけたらチェックをどうぞ。


↓M-3「My Bubby」のPV。
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