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音楽CDの感想を綴っていきます

PROJECT TOKYO Mixed by DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH! / 妄走族

PROJECT TOKYO MIXED BY DJ NOBU A.K.A. BOMBRUSH!


曲目リスト


1. PROJECT TOKYO / 妄走族 feat. ZEUS, RAW-T, YOUNG FREEZ, SIMON JAP, 輪入道 & 十影
2. Ready to Fight / バラガキ, ZEUS & Zeebra
3. ONE / K5R
4. NOW -今の時間- / ZORRO feat. DEN
5. 熱くてテキトー / 妄走族
6. BACK IN THE DAY / 妄走族
7. STAY GOLD / MASARU feat. DEN
8. SOUND MISSION / ZORRO feat. K5R
9. 野良犬 INTRO / KENTA5RAS
10. RESURRECTION / DEN feat. ANI, 宇多丸
11. Gossip Girl / 十影 feat. LADY CAT, AYA a.k.a PANDA
12. フェラ Pe チーノ / KENTA5RAS feat. DEN
13. Run of the City / ZEUS & BRGK
14. GUERILLA / 妄走族
15. LOVELETTER [Chorus : 亜矢(房州達磨)] / 神
16. 世界はお前が大ッ嫌い / 般若
17. Tokyo / COGA feat. 神 & DEN
18. ヴァンガード 96' / 妄走族 feat. 十影
19. 最ッ低のMC / 般若
20. トビラ / 般若 & Anarchy
21. 積み木崩し / 妄走族 feat. RAW-T, SIMON JAP, G.O, CAZINO, スナフキン
22. 日本語ラップ is DEAD !? / JBM, D.O, VIKN, SIMON, DEN & MISSIE
23. PRIDE / 妄走族
24. ワルイ奴等HANDS UP / 妄走族
25. 叩き上げ / 輪入道
26. BEDTOWN / スナフキン
27. Take me higher / YOUNG FREEZ
28. 世にも奇妙なこの世界 / 和み & ROOZ
29. 大日本平和党 / 神 feat. 般若, ZAPPY SOUL
30. RECKLESS / CAZINO feat. MURDAH BABY
31. Yatta / YUKI a.k.a. JUTO
32. お金部隊 / RAW-T & G.O
33. TOKYO BOY / SIMON JAP feat. Zeebra


評価: ★★★★★★★☆☆☆


東京三軒茶屋で結成されたラップグループ、妄走族のMixアルバム。
2014年5月28日発売。


90年代後半から活動を開始し、2000年からコンスタントにアナログやアルバムをリリースしてきた妄走族
2004年からはグループ中心だった方向を転換し、2004年には般若。2005年には神、MASARU、KENTA5RAS(現K5R)、565(現G-MAN)。2006年にはDEN、ZORRO。2007年には剣桃太郎がソロの1stアルバムをリリース。
それぞれのソロ活動に力を入れるようになりました。


それぞれがソロ活動を本格化してからはより一層メンバー間で違う道を歩むことになります。
般若、DEN、神はソロ活動を続けながらも音楽レーベルを設立。
ZORROはアメリカのNYに修行の旅へ。
KENTA5RASは麻薬関係で逮捕され、監獄生活。
MASARU、剣桃太郎、565は地道にライブ出演や、他のラッパーたちの作品の客演参加、裏方活動などを重ねていきました。


ソロ活動後最も飛躍した般若を初めとして、シーンでも立ち位置を確保していた妄走族メンバーたちでしたが、妄走族としての音源リリースは、2004年の4thアルバムからされることはありませんでした。
それぞれのソロ作品やユニット作品に客演で参加するなど、メンバー同士の絆と見えるものは確認できるものの、上にも書いたように進んだ道がバラバラであったため、

「もう妄走族で集まることなんてないんだろうなあ」

というのリスナーの間で共通認識となり、「妄走族」という名前だけが漠然としてシーンに残っている。
そんな状態が長い間続きました。


ところが活動休止状態から9年経った2013年の冬、妄走族のグループとしての再始動が告知されました。
恐らくリスナーの9割以上は「もう再始動ないだろ」と思っていたであろうグループの再始動の告知。
シーンに多大なる衝撃を与えたことは言うまでもありません。


まずは9年ぶりでの妄走族名義の新曲「塗りつぶせ」をフリーダウンロードで配信。
その後は2014年1月に「走 -RUN-」、2月に「PRIDE」(M-23)、4月に「PROJECT TOKYO」(M-1)をネット上で配信していきます。
再始動前の妄走族が行っていたイベント「核MIX」も復活。


そして、5月にとうとうCD音源として本作をリリース。
妄走族メンバーたちのソロ音源、妄走族名義での新曲、メンバーたちがフックアップを測る若手MCたちの楽曲などをDJ NOBUがMIXしたMIXアルバムです。

復活の挨拶代わりとも言える1枚ですね。


では、内容に。


曲目リストを見ると分かりますが、妄走族の音源だけでなく、妄走族の影響を受けた若手の楽曲も多く収録されています。
妄走族名義の過去の楽曲はわずか3曲のみ。
なので、過去の妄走族が好きで、その雰囲気を楽しもうというのは捨てた方がいいです。確実に裏切られます。
妄走族メンバーがラップで参加していない楽曲も多いため(というかメンバーがラップしている曲はM-29「日本平和党」で最後)、正直妄走族の作品!という感じは余りしません。
妄走族主導のコンピレーションMIXアルバム、と言った方が内容的には正確ですね。
なので妄走族としては本当に挨拶代わり、と思った方がいいです。


ただMIXアルバムとしての出来が良くないか!と言われたら決してそんなことはありませんよ!
かなり嬉しいポイントもゴロゴロとあります。


まず、本作で収録されている妄走族の過去音源は3曲なのですが、この3曲は3曲とも妄走族の2ndシングル「GUERILLA」に収録された楽曲です。
M-14「GUERILLA」は4thアルバムに収録されていましたが、他の2曲は長らくそのシングルでしか聴けなかったので、これは有り難い収録です。
M-6「BACK IN THE DAY」、M-24「ワルイ奴等HANDS UP」がその2曲なのですが、DJ NOBUのMIXが上手いこともあり、どちらも中々のカッコ良さです。
最もどちらもフルでは収録されていないので、フルが聴きたい場合はシングルの入手ですね。

メンバーのソロ曲やコラボ曲も聴きごたえがあるものが多いです。特にいいものを挙げると、
まずM-10「RESURRECTION」。こちらはDEN、ANI(スチャダラパー)、宇多丸(RHYMESTER)という異色な3人のマイクリレー。3人とも個性が強く発揮されていてすごく聴きごたえもありますし、Hookもカッコいい。
MASARUによる前向きなリリックが光るM-7「STAY GOLD」、KENTAの歌がすごく心地よいM-12「フェラ Pe チーノ」も好きですね。

般若のソロ曲であるM-16「世界はお前が大ッ嫌い」、M-19「最ッ低のMC」は流石の般若のリリシスト振りが光ってます。1バースとHookのみの収録なのに、それだけでも格の違いを見せつける力量は流石ですね。Anarchyとのコラボ曲のM-20「トビラ」でもAnarchyと共にリリシスト振りを発揮してます。


妄走族の楽曲は入手困難なコンピ収録曲であるM-5「熱くてテキトー」、新曲のM-23「PRIDE」は名曲と言っていい域。前者は般若と神とDEN、後者は般若と神とZORRO、K5Rによるマイクリレー(K5RはHookのみですが)。とにかく全員が熱い。熱すぎます。
活動休止前にあった彼らの特色である勢いと、活動再開後のリリックの奥深さが同居した凄まじい楽曲になっています。
同じく十影を客演に迎えた新曲であるM-18「ヴァンガード 96'」はそんな好きな曲というわけではないですが、この曲のMASARUのラップはキレキレでカッコいいです。メンバーの中でもソロ活動で真摯にHIP HOPに向き合っていた成果が存分に発揮されています!


妄走族が参加してない楽曲では、十影によるM-11「Gossip Girl」が耳を惹きましたね。
この曲の十影のラップは純粋に聴いてて面白いです。


と、とてもいい楽曲が多く、楽しめるMIXアルバムであるのは間違いないのです。
ただ苦言を言うとすれば、妄走族メンバーが参加していない楽曲でいいと思える楽曲はそんなにありませんでした。
新曲のM-1PROJECT TOKYO」、M-21「積み木崩し」もそうなんですが、正直全体的に詰め込みすぎで訳が分からなくなっています。
「若手のフックアップをしたい!」というのはベテランラッパーの志としては立派ですし、絶賛する姿勢ではありますが、それなら「妄走族メンバーがお勧めするラッパーたちのコンピレーション!」みたいな形で別にコンピレーションアルバム作った方が良かったんじゃないですかね。


それでも十分に楽しめる一枚ではあるので、興味のある方はあくまで妄走族の挨拶代わりという認識でチェックをどうぞ!


↓M-18「ヴァンガード 96'」のPV。
www.youtube.com