りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

The Hunger For More / Lloyd Banks

The Hunger For More


曲目リスト


1. Ain't No Click feat. Tony Yayo
2. Playboy feat. DJ Whoo Kid
3. Warrior
4. On Fire feat. 50 Cent
5. I Get High feat. 50 Cent, Snoop Dogg
6. I'm So Fly
7. Work Magic feat. Young Buck
8. If You So Gangsta
9. Warrior Part 2 feat. 50 Cent, Eminem, Nate Dogg
10. Karma feat. Avant
11. When The Chips Are Down feat. The Game
12. Til The End feat. Nate Dogg
13. Die One Day
14. South Side Story
15. Just Another Day
16. Take A Good Look


評価: ★★★★★★★★☆☆


皆さんお久しぶりです。仕事先で新たな場所で仕事することになり、奔走していました。
とりあえず今年の〆として本作を紹介させて頂きます。
今月に入って、結構聴いていた作品なので・・。


アメリカのNY出身のラッパー、Lloyd Banksの1stアルバム。
2004年6月29日発売。


HIP HOPミュージシャンは過酷な家庭で育った経歴を持つラッパーが多いですが(というかそもそもそれがHIP HOPという文化においては一種のステータスになっている)、このLloyd Banks(以後Banks)も例外ではありません。
Banksの両親が未婚の状態でBanksは産まれ、父親はほとんど刑務所にいるという家庭でした。
自身が所属するG-UNITのメンバーであるTony Yayo(以後Yayo)と同じストリートで育ったのです。

50 CENT(以後50)が友人であるYayoとラップグループのG-Unitを結成したのが1997年だったのですが、Banksは当時学生だったこともあってか共通点が少なく、そんなに一緒には活動していませんでした。
2000年に50が銃撃事件に巻き込まれ、地元に帰った際に、Banksが少しスタイルが変わった、ということをYayoから聞きつけ、Banksが自分たちのスタイルと合ったスタイルになったということを認識したのです。

それが結果的に彼のG-Unit加入に繋がったのは2001年9月10日の夜(偶然にも911の前夜)のこと。
とあるクラブの前で営業活動を終わった後にタムロをしていたメンバーに対し、何者かが発砲し、5人がケガをしたという事件が起こりました。
その内の1人がBanksだったのです。
その時に「過去に自分も撃たれた経験がある」50に対し、彼に付いていくことを心に決め、G-Unitへ加入することに。

50がG-Unitとしてリリースするミックステープに参加するようになり、様々なHIP HOPミュージシャンから注目を浴びることになります。
2003年にリリースされたG-Unitの1stアルバムがセールス的にも話題作になったこともあり、リスナーからも要注目のラッパーの1人になりました。
50からも「生涯のダチ」と言われるほどの信頼を獲得。


2004年にとうとう、初のソロアルバムである本作をリリースしました。
当然ながら話題作となり、100万枚以上のセールスを記録し、様々な賞にノミネート。
G-Unitの1stアルバムの成功により、ただでさえ名前の広がっていたBanksの名前をさらに音楽業界に刻み込みました。


さて、内容に。


Banksの特徴はまるで聴いているこっちも舌がもつれてしまいそうなくらいのラップさばき。
G-Unitの1stアルバムでも50やBuckがホニャホニャ、モッサリとしていたラップをしていただけに彼のスタイルも強烈なスタイルとして映っていました。
そんな彼の1stアルバムである本作。
50周辺のミュージシャンたちにもある聴きやすい雰囲気もあるものの、50やG-Unitの1stアルバムに比べるとハードな雰囲気を放っています。


まず銃声のイントロから始まる、POPさの欠片もないハードなビートにラップが乗っかるM-1Ain't No Click feat. Tony Yayo」から存分にヤバさがわかるというもの。
所々でYayoからの煽りを受けながら淡々とラップを乗せていくBanksがカッコいいのは勿論ですが、最後のバースで一気に暴れまわるYayoの鬼気がすごいです!
他の作品(50やG-Unitの1stアルバムやミックステープ)では余り存在感が無かった(ように個人的に感じた)Yayoですが、この曲ではすごくカッコいいと感じました。

その後もBanksのラップの味が楽しめるナンバーが続きますが、個人的にはM-3「Warrior」、先行シングルカットされたM-4「On Fire feat. 50 Cent」がお気に入りです。前者はちょっと歌心もあるタイトル名を言うHook、後者はHookでもひたすらラップを込めまくる様がとても聴きごたえあり。
後者はヒットしたのも頷けますね!(その次に控える50とSnoopが参加したM-5「I Get High feat. 50 Cent, Snoop Dogg」はそれぞれのバースはいいものの、50が担当するHookがイマイチでちょっとつまずいた感が否めないものの)


そしてこれまた先行シングルカットされたM-6「I'm So Fly」。
これはもうBanksだからこそできた曲と言っても過言ではないですね。
リリックの内容はひたすらビッグマウスなものの、包むようなシリアスなトラックとBanksのラップの相性が何とも言えない良さです。
この後に続くM-7「Work Magic feat. Young Buck」という飛び切りハードな曲に行く流れも聴いていて楽しい(まあ和訳を見るととても楽しいなんて言ってはいけない内容ですが・・)です。


M-6「I'm So Fly」と似たような路線のM-8「If You So Gangsta」を挟んだ後に控えるのがM-9「Warrior Part 2 feat. 50 Cent, Eminem, Nate Dogg」。
M-3「Warrior」の続編となるわけですが、本作の中盤のハイライトと言っていい楽曲ですね!
50にEminemとBanksのマイクリレー、HookをNate Doggが担当するという構成ですが、全員持ち味を生かしたパフォーマンスを披露。
シンプルながらもハードなトラックも半端なくカッコいいですし、この曲だけでも本作を聴く価値はあります。

M-10「Karma feat. Avant」はそれまでのハードな展開とは違いHookにAvantの歌を採用したちょっと異色な曲ですが、Banksとのラップはしっかりハマっています。
ドライブのBGMにはもってこいでしょうね!
最も続く楽曲が本当に重たい内容なので、使うとしたらこの曲のみにした方がいいかもと思いますが・・。(M-11「When The Chips Are Down feat. The Game」は思ったよりGameが目立っていませんでした。M-12「Til The End feat. Nate Dogg」は暗すぎるトラックとNate Doggのバックコーラスの調和がナイス)
後半はひたすらハードなトラックの上でBanksがラップするという内容。どの曲もトラックとBanksのラップの相性が抜群で、客演なしでもしっかりと聴き通せる内容になっています。


M-15「Just Another Day」、M-16「Take A Good Look」の2曲は国内版限定のボーナストラックです。
前者は臨場感のあるトラック、後者はシンプルなトラックの上でBanksが硬派なラップを乗せる楽曲。
どちらもBanksのラップが冴えた内容で、是非ともチェックしてほしい楽曲です。
ボーナストラックまでしっかりと楽しめる内容になってますよ。


全体を通してみると、流石に50と共にEminemらが惚れ込んだのもあり、Banksの才能をこれでもかと言うくらい感じられる内容になっています。
G-Unitが2003年から2005年まで一種のブーム状態になったのも頷けますね。
シングルの「On Fire feat. 50 Cent」(M-4)、「I'm So Fly」(M-6)だけかと思ったら大間違い。
シングルカットしてもいいと感じる曲が他にもたくさんあります!
もう15年近く前の作品ですが、今聴いても色あせてないですよ。


しかしながら、最近のBanksはもう音楽活動に対する意欲が減ってしまったらしく、今年のネットニュースで「またアルバムを出してくれよ」というファンに対し、SNSで「現実を見てくれ。もう俺のことを注目している奴なんて一人もいないよ」と発言したことが取り上げられていました。
これだけのいい作品を出せるラッパーなのに・・ちょっともったいない気もします。
最も、ダラダラ続けるよりはいいのかな、なんて気もしますが。


とりあえず、今聴いても全く色あせていない作品、興味があればぜひチェックしてください!

↓M-10「Karma feat. Avant」のPV。
www.youtube.com