りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

PLATINUM TONGUE / DABO

PLATINUM TONGUE


曲目リスト


1. PLATINUMINTRO
2. MIC CHECK
3. マチガイナイ!
4. O-RE-BA-NA
5. BUNNY TALKS
6. PLATINUM TONGUE feat. SUIKEN
7. HI-LIFE (RELAXXX)
8. PINKY ~だから、その手を離して~ feat. Tyler
9. 拍手喝采
10. レクサスグッチ
11. 徒然草 feat. HUNGER, MACCHO
12. 愛しのサブリナ
13. R.E.C.ROOM (BAD TRIP)
14. DAIMONION FUNK (I GOT CHA)
15. JOLLY’S PIANO
16. この指止まれ feat. CQ
17. SNEAKER PIMP (TWO PIMPS IN A CYPHER MIX) feat. TWIGY
18. ZERO (MUKASEE MUKASEE MIX)


評価: ★★★★★★★★★☆


千葉県出身のラッパー、DABOの1stアルバム。
2001年6月13日発売。


90年代から活動を始め、日本語ラップの代表的グループであったNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの一員でもあったDABO。
何枚かシングルをリリースした後、NITROの1stをリリースした翌年に、フルアルバムの本作をリリースしました。
NITROの1stアルバムリリース後、メンバーはそれぞれソロ活動にも精力を入れるようになりましたが、SUIKENが1stアルバムをリリースしたちょっと後にリリースした形になりましたね。


本作からはリリース前にはM-9「拍手喝采」、M-18「ZERO」の2曲が先行シングルとしてリリース(後者はちょっとバージョンが違いますが)され、リリース後にはM-8「PINKY ~だから、その手を離して~ feat. Tyler」、M-10「レクサスグッチ」がシングルカットされています。

NITROの中でもずば抜けたラップスキルで一際有名だったDABO。そんな彼の1stアルバム。話題にならないはずがありません。
リリースされるや否や、様々な雑誌で高評価の嵐。
「日本版ILLMATIC(アメリカのHIP HOPの伝説的なクラシックであるNASの1st)だ!」なんていう声も上がるほど。
DABOのアルバムと言えばこれ!というリスナーも未だに多いはずです。


では、内容に。


4thシングルの感想を書いたときにも感じましたが、とにかくDABOのラップのスムーズさと聴き心地の良さは反則的。
今でも出てきたらびっくりさせられるであろうラップなのに、これが21世紀に入ったあたりに聴かされたというのは驚きでしかありません。


特に序盤はあまり目立たないクールでダークなトラックが中心で、客演もいないのにしっかりと聴きごたえのある流れになっています。
イントロを経てのM-2「MIC CHECK」なんて、4thシングルで聴いたときにはまあまあいい曲だな、としか思わなかったのに、この流れで聴くとめちゃめちゃカッコいい楽曲に聴こえます。
続くM-3「マチガイナイ!」、M-4「O-RE-BA-NA」もリリックこそオラオラ系俺様リリックですが、DABOのラップとトラックの相性がこの上なく抜群で、ついつい聴いてて首を振りたくなってしまいます。


スキットのM-5「BUNNY TALKS」を経てからのアルバム表題曲のM-6「PLATINUM TONGUE feat. SUIKEN」に行く流れ。
この煽りが非常に効果的で、くだらない喋りから一気に爆発力のある表題曲に行く展開がたまらないですね。
迫力あるトラックの上でのDABOとSUIKENのラップ合戦がかなりカッコいいです。
DABOとSUIKENが2人とも全盛期と言ってもいい頃だったこともあり、一曲として見てもしっかりと聴きごたえのある楽曲になっています。
そこからM-7「HI-LIFE (RELAXXX)」に行く流れもナイスです。
曲名からも予想できる通り、リラックスできるような雰囲気のトラックの上でのDABOのラップの転がしっぷりがとても気持ちいいです。


そして・・ここからはシングルカットされた曲が3曲連続で続くという気が抜けない展開!
3曲とも全くタイプの楽曲ですが、どの曲もDABOのラップの様々な魅力を詰め込んだ内容になっていますよ。
この3曲に関してあえて何も言いません。是非ご自身で聴いて堪能してください。

その次のM-11「徒然草 feat. HUNGER, MACCHO」はアルバム曲にも関わらず、シングル3曲にも全く引けを取らないマイクリレーです。
DABOとHUNGER、MACCHOそれぞれが見事な100点満点の仕事ぶりで、一度聴けば頭に楽しい雰囲気が残ることは間違いなし!

その後の客演なしの3曲も、DABOのスムーズなラップとクールなトラックが楽しめる流れ。本当にこの頃のDABOのフロウは天下一品。そう感じざるを得ないですね。


それからスキットのM-15「JOLLY’S PIANO」を経てからの客演付きの2曲。
客演はCQTWIGYですが、2人ともDABOに負けず劣らずの素晴らしい仕事ぶりを披露。
曲自体も良曲なのは言うまでもなくです。

先行シングルとして切られた「ZERO」のREMIXもDABOらしいですが、最後の〆としてはちょっと弱いかも。


久しぶりに聴いた本作ですが、率直に言って余りの内容の良さにびっくりです。
DABOのリリック自体は俺様俺様が中心で、そこまで中身があるとは言えないですが、そんなことすらマイナス要素になっていないくらい、ラップの聞き心地が異次元。
当時高評価の嵐だったのも、そりゃそうだろうと思ってしまいます。
最も・・DABOは本作以降もコンスタントにアルバムをリリースしていきましたが、リリースするたびにアルバムの評価は下がっていき、ビッグマウスと作品の内容が釣り合わなくなったことによってリスナーから冷めた目で見られていくという未来を知っている身からすると、ちょっと複雑な気分にもなりますが。
とにかくこのDABOの1stアルバムに関しては、絶対に1度は聴いてほしいですね。
今聴いても全く色あせてませんよ!


↓M-10「レクサスグッチ」のPV。
www.youtube.com

Street Dreams / Fabolous

Street Dreams


曲目リスト


1. Intro
2. Not Give a F**
3. Damn
4. Call Me
5. Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo
6. Bad Bitch
7. Why Wouldn't I feat. Paul Cain
8. Up on Things feat. Snoop Dogg
9. Sickalicious feat. Missy Elliott
10. This Is My Party
11. Into You feat. TAMIA
12. Change You or Change Me
13. Respect
14. Forgive Me Father
15. Never Duplicated
16. My Life feat. Mary J. Blige
17. Throw Back
18. Keepin' It Gangsta (Remix) feat. Styles, Jadakiss, M.O.P.
19. Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge
20. Can't Let You Go (Main Remix Original Version)


評価: ★★★★★★★★★☆


アメリカのNY出身のラッパー、Fabolousの2ndアルバム。
2003年3月4日発売。


2001年にリリースした1stアルバムが100万枚以上のセールスでチャート4位に食い込み、ゴールドディスクを獲得するという、新人としては異例の大健闘を果たしたFabolous
2002年からはNELLYAmerie、Big Tymersなどとのパッケージツアーを行い、アメリカ全土を回りつつも、2ndアルバムである本作の制作に取り掛かりました。


本作からはリリース後に3枚のシングルをリリースしましたが、その内の「Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo」(M-5)、「Into You feat. TAMIA」(M-11)はチャートでも上位を獲得し、2003年のHIP HOPシーンの代表曲とも言える存在に。
そんなこともあり本作も凄まじい話題作となり、前作を超える110万枚以上のセールス、チャート3位という快挙を成し遂げました。
2019年現在、Fabolousのアルバムでは最も成功した作品となっています。
見ての通り二枚目なこともあり、アイドルラッパーなどという批判もあったそうですが、セールスで結果を出した以上は彼の勝ちですね。


では、内容に。


Fabolousの特徴はちょっとヘロヘロとしたラップ。
例えて言うなら50 CENTのラップからかなり肉を削ぎ落としてアクも薄めた(和訳を見ると過激な詞はあるものの)という感じです。
好みは間違いなく分かれますね。


トラックは2000年代のHIP HOPサウンドがベースながらも、従来のHIP HOP層にも一般層にも受け入れられそうな、バランスがいい物が多いです。
そのトラックとFabolousのラップの相性も抜群です。

特に前半はそのFabolousとトラックの相性の良さをガツンと見せつけられる楽曲群が多めです。
イントロを経てのM-2「Not Give a F**」からM-4「Call Me」の流れは客演こそいないものの、捨て曲など無しです。
M-2「Not Give a F**」はダークな雰囲気のトラックの上でのFabolousのラップの乗りこなしが癖になります。M-3「Damn」、M-4「Call Me」はお洒落で可愛い雰囲気のトラックとHook、それとFabolousのラップの相性も抜群で、ドライブのBGMには持ってこいなこと間違いなしですね。

シングルとして切られた2曲のM-5「Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo」、M-11「Into You feat. TAMIA」は、これはもうラッパーがFabolousでなかったら作れなかっただろうな、と思ってしまいます。それくらいFabolousとシンガー陣、そしてトラックとのハマり具合がすごいです。
確かにこれはヒットするのも必然だったと言っていいのでは!


中盤では比較的攻撃的な雰囲気の楽曲が多いですが、シングルとして切られたM-10「This Is My Party」を初めとして、ここでもFabolousのトラックへのアプローチが絶好調。
特にM-7「Why Wouldn't I feat. Paul Cain」~M-9「Sickalicious feat. Missy Elliott」までの流れはFabolousと客演メンバーとのマイク合戦が楽しめる、アルバムの中でもすごく聴きごたえのある展開です。一曲単位で見ても素晴らしいのは言うまでもなく。


M-12「Change You or Change Me」からは比較的ハードなトラックが多めです。
前半や中盤と比べるとタイトなラップが聴けます。
それでもHIP HOPが苦手な人でも聴けそうな雰囲気。
Hookも比較的強調されているのも聴きやすいポイントですね。
80年代や90年代のHIP HOPにこだわりが強い人は不快に感じるかもしれませんが、個人的にはノリやすくていいと感じましたね。
個人的にはM-16「My Life feat. Mary J. Blige」が後半のハイライト。
FabolousのラップとMary Jの歌いこなしがとても素敵で、シングルカットされた3曲にも何ら引けを取っていません。


M-17「Throw Back」からM-19「Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge」は本作のボーナストラック。
ボーナストラックなんて侮ってはいけません。
熱いマイクリレーが楽しめる1stアルバム収録曲のRemixのM-18「Keepin' It Gangsta (Remix) feat. Styles, Jadakiss, M.O.P.」、ボーカル使いがとてつもなく上手いM-19「Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge」なんて普通に名曲と言っていいレベルです。
M-20「Can't Let You Go (Main Remix Original Version)」は国内版限定のボーナストラックで、M-5「Can't Let You Go」のバージョン違い(Remixではありません)。
かなりハードな内容になっていて、これはこれで悪くはありませんが、個人的にはシングルで切られたバージョンの方がずっと好きですね。


最近では細々とした活動になり、「一発屋」「ミーハーに受けただけ」などという声もHIP HOPファンから挙がることもあるFabolous
しかし2ndアルバムである本作。久しぶりに聴いてみたら予想以上の内容の良さで、何度も聴き返してしまいました。
流石にFabolousの歴代アルバムでの最高セールス獲得は伊達ではありませんね。
HIP HOPをこれから聴いてみる人には最適なことは言うまでもありませんが、熱心なHIP HOPファンも久しぶりに聴き返してみては。
本当に傑作なので、興味のある方はどうぞ!


↓M-10「This Is My Party」のPV。
www.youtube.com

PROJECT TOKYO Mixed by DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH! / 妄走族

PROJECT TOKYO MIXED BY DJ NOBU A.K.A. BOMBRUSH!


曲目リスト


1. PROJECT TOKYO / 妄走族 feat. ZEUS, RAW-T, YOUNG FREEZ, SIMON JAP, 輪入道 & 十影
2. Ready to Fight / バラガキ, ZEUS & Zeebra
3. ONE / K5R
4. NOW -今の時間- / ZORRO feat. DEN
5. 熱くてテキトー / 妄走族
6. BACK IN THE DAY / 妄走族
7. STAY GOLD / MASARU feat. DEN
8. SOUND MISSION / ZORRO feat. K5R
9. 野良犬 INTRO / KENTA5RAS
10. RESURRECTION / DEN feat. ANI, 宇多丸
11. Gossip Girl / 十影 feat. LADY CAT, AYA a.k.a PANDA
12. フェラ Pe チーノ / KENTA5RAS feat. DEN
13. Run of the City / ZEUS & BRGK
14. GUERILLA / 妄走族
15. LOVELETTER [Chorus : 亜矢(房州達磨)] / 神
16. 世界はお前が大ッ嫌い / 般若
17. Tokyo / COGA feat. 神 & DEN
18. ヴァンガード 96' / 妄走族 feat. 十影
19. 最ッ低のMC / 般若
20. トビラ / 般若 & Anarchy
21. 積み木崩し / 妄走族 feat. RAW-T, SIMON JAP, G.O, CAZINO, スナフキン
22. 日本語ラップ is DEAD !? / JBM, D.O, VIKN, SIMON, DEN & MISSIE
23. PRIDE / 妄走族
24. ワルイ奴等HANDS UP / 妄走族
25. 叩き上げ / 輪入道
26. BEDTOWN / スナフキン
27. Take me higher / YOUNG FREEZ
28. 世にも奇妙なこの世界 / 和み & ROOZ
29. 大日本平和党 / 神 feat. 般若, ZAPPY SOUL
30. RECKLESS / CAZINO feat. MURDAH BABY
31. Yatta / YUKI a.k.a. JUTO
32. お金部隊 / RAW-T & G.O
33. TOKYO BOY / SIMON JAP feat. Zeebra


評価: ★★★★★★★☆☆☆


東京三軒茶屋で結成されたラップグループ、妄走族のMixアルバム。
2014年5月28日発売。


90年代後半から活動を開始し、2000年からコンスタントにアナログやアルバムをリリースしてきた妄走族
2004年からはグループ中心だった方向を転換し、2004年には般若。2005年には神、MASARU、KENTA5RAS(現K5R)、565(現G-MAN)。2006年にはDEN、ZORRO。2007年には剣桃太郎がソロの1stアルバムをリリース。
それぞれのソロ活動に力を入れるようになりました。


それぞれがソロ活動を本格化してからはより一層メンバー間で違う道を歩むことになります。
般若、DEN、神はソロ活動を続けながらも音楽レーベルを設立。
ZORROはアメリカのNYに修行の旅へ。
KENTA5RASは麻薬関係で逮捕され、監獄生活。
MASARU、剣桃太郎、565は地道にライブ出演や、他のラッパーたちの作品の客演参加、裏方活動などを重ねていきました。


ソロ活動後最も飛躍した般若を初めとして、シーンでも立ち位置を確保していた妄走族メンバーたちでしたが、妄走族としての音源リリースは、2004年の4thアルバムからされることはありませんでした。
それぞれのソロ作品やユニット作品に客演で参加するなど、メンバー同士の絆と見えるものは確認できるものの、上にも書いたように進んだ道がバラバラであったため、

「もう妄走族で集まることなんてないんだろうなあ」

というのリスナーの間で共通認識となり、「妄走族」という名前だけが漠然としてシーンに残っている。
そんな状態が長い間続きました。


ところが活動休止状態から9年経った2013年の冬、妄走族のグループとしての再始動が告知されました。
恐らくリスナーの9割以上は「もう再始動ないだろ」と思っていたであろうグループの再始動の告知。
シーンに多大なる衝撃を与えたことは言うまでもありません。


まずは9年ぶりでの妄走族名義の新曲「塗りつぶせ」をフリーダウンロードで配信。
その後は2014年1月に「走 -RUN-」、2月に「PRIDE」(M-23)、4月に「PROJECT TOKYO」(M-1)をネット上で配信していきます。
再始動前の妄走族が行っていたイベント「核MIX」も復活。


そして、5月にとうとうCD音源として本作をリリース。
妄走族メンバーたちのソロ音源、妄走族名義での新曲、メンバーたちがフックアップを測る若手MCたちの楽曲などをDJ NOBUがMIXしたMIXアルバムです。

復活の挨拶代わりとも言える1枚ですね。


では、内容に。


曲目リストを見ると分かりますが、妄走族の音源だけでなく、妄走族の影響を受けた若手の楽曲も多く収録されています。
妄走族名義の過去の楽曲はわずか3曲のみ。
なので、過去の妄走族が好きで、その雰囲気を楽しもうというのは捨てた方がいいです。確実に裏切られます。
妄走族メンバーがラップで参加していない楽曲も多いため(というかメンバーがラップしている曲はM-29「日本平和党」で最後)、正直妄走族の作品!という感じは余りしません。
妄走族主導のコンピレーションMIXアルバム、と言った方が内容的には正確ですね。
なので妄走族としては本当に挨拶代わり、と思った方がいいです。


ただMIXアルバムとしての出来が良くないか!と言われたら決してそんなことはありませんよ!
かなり嬉しいポイントもゴロゴロとあります。


まず、本作で収録されている妄走族の過去音源は3曲なのですが、この3曲は3曲とも妄走族の2ndシングル「GUERILLA」に収録された楽曲です。
M-14「GUERILLA」は4thアルバムに収録されていましたが、他の2曲は長らくそのシングルでしか聴けなかったので、これは有り難い収録です。
M-6「BACK IN THE DAY」、M-24「ワルイ奴等HANDS UP」がその2曲なのですが、DJ NOBUのMIXが上手いこともあり、どちらも中々のカッコ良さです。
最もどちらもフルでは収録されていないので、フルが聴きたい場合はシングルの入手ですね。

メンバーのソロ曲やコラボ曲も聴きごたえがあるものが多いです。特にいいものを挙げると、
まずM-10「RESURRECTION」。こちらはDEN、ANI(スチャダラパー)、宇多丸(RHYMESTER)という異色な3人のマイクリレー。3人とも個性が強く発揮されていてすごく聴きごたえもありますし、Hookもカッコいい。
MASARUによる前向きなリリックが光るM-7「STAY GOLD」、KENTAの歌がすごく心地よいM-12「フェラ Pe チーノ」も好きですね。

般若のソロ曲であるM-16「世界はお前が大ッ嫌い」、M-19「最ッ低のMC」は流石の般若のリリシスト振りが光ってます。1バースとHookのみの収録なのに、それだけでも格の違いを見せつける力量は流石ですね。Anarchyとのコラボ曲のM-20「トビラ」でもAnarchyと共にリリシスト振りを発揮してます。


妄走族の楽曲は入手困難なコンピ収録曲であるM-5「熱くてテキトー」、新曲のM-23「PRIDE」は名曲と言っていい域。前者は般若と神とDEN、後者は般若と神とZORRO、K5Rによるマイクリレー(K5RはHookのみですが)。とにかく全員が熱い。熱すぎます。
活動休止前にあった彼らの特色である勢いと、活動再開後のリリックの奥深さが同居した凄まじい楽曲になっています。
同じく十影を客演に迎えた新曲であるM-18「ヴァンガード 96'」はそんな好きな曲というわけではないですが、この曲のMASARUのラップはキレキレでカッコいいです。メンバーの中でもソロ活動で真摯にHIP HOPに向き合っていた成果が存分に発揮されています!


妄走族が参加してない楽曲では、十影によるM-11「Gossip Girl」が耳を惹きましたね。
この曲の十影のラップは純粋に聴いてて面白いです。


と、とてもいい楽曲が多く、楽しめるMIXアルバムであるのは間違いないのです。
ただ苦言を言うとすれば、妄走族メンバーが参加していない楽曲でいいと思える楽曲はそんなにありませんでした。
新曲のM-1PROJECT TOKYO」、M-21「積み木崩し」もそうなんですが、正直全体的に詰め込みすぎで訳が分からなくなっています。
「若手のフックアップをしたい!」というのはベテランラッパーの志としては立派ですし、絶賛する姿勢ではありますが、それなら「妄走族メンバーがお勧めするラッパーたちのコンピレーション!」みたいな形で別にコンピレーションアルバム作った方が良かったんじゃないですかね。


それでも十分に楽しめる一枚ではあるので、興味のある方はあくまで妄走族の挨拶代わりという認識でチェックをどうぞ!


↓M-18「ヴァンガード 96'」のPV。
www.youtube.com

GRATEFUL / DJ KHALED

グレイトフル


曲目リスト


Disc 1


1. (Intro) I'm so Grateful - feat. Sizzla
2. Shining feat. Beyoncé & JAY Z
3. Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller
4. I'm the One feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne
5. On Everything feat. Travis Scott, Rick Ross & Big Sean
6. It's Secured feat. Nas & Travis Scott
7. Interlude (Hallelujah) feat. Betty Wright
8. Nobody feat. Alicia Keys & Nicki Minaj
9. I Love You so Much feat. Chance the Rapper
10. Don't Quit / DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jeremih


Disc 2


1. I Can't Even Lie feat. Future & Nicki Minaj
2. Down for Life feat. PARTYNEXTDOOR, Future, Travis Scott, Rick Ross & Kodak Black
3. Major Bag Alert feat. Migos
4. Good Man feat. Pusha T & Jadakiss
5. Billy Ocean feat. Fat Joe & Raekwon
6. Pull a Caper feat. Kodak Black, Gucci Mane & Rick Ross
7. That Range Rover Came With Steps feat. Future & Yo Gotti
8. Iced Out My Arms feat. Future, Migos, 21 Savage & T.I.
9. Whatever feat. Future, Young Thug, Rick Ross & 2 Chainz
10. Interlude feat. Belly
11. Unchanging Love feat. Mavado
12. Asahd Talk (Thank You Asahd) / Asahd Khaled
13. Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (Medasin Dance Remix)
14. Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (NOTD Dance Remix)


評価: ★★★★★★★☆☆☆


アメリカのフロリダ州マイアミ出身のDJ、DJ KHALEDの10thアルバム。
2017年6月23日発売。


90年代から活動し、2006年にデビューを果たした後に、コンスタントにアルバムをリリースしていったDJ KHALED。

通算9枚目のアルバムである前作が、グローバルで販売されたこともあり、USチャート1位を獲得し、ゴールドディスク認定。
様々な国で名前を大きく広げることになります。
その後も話題に事欠かず。
グラミー賞ノミネートや、ジョーダンとのコラボスニーカーの販売などなど。


ですが、何といっても一番の出来事は彼の第一子、Asahdの誕生です。(ジャケの左)
インスタを初めとするメディアで、KHALEDは常にAsahdに対する感謝や愛情を発信していました。
そんな彼が自分のアルバムを作る上で息子が無関係であるはずでなく・・・。
なんと本作のエグゼクティブプロデューサーにクレジットされているのはAsahd。
まだ当時は生後1年経っていなかったAsahdがメガホンを握った(勿論形式上だとは思いますが)アルバムとなったのです。

参加した制作陣はなんと40組以上!
客演を見ても分かる通り、非常に豪華な人選です。


ともあれ、アルバムを出した以上は内容勝負。
では内容に。


タイトルの「GRATEFUL」は直訳すると「感謝」です。
内容は確かにKHALEDからAsahdに対する感謝のメッセージが所々に確認できます。
ただ、それは国内版のRemixを除く22曲のうち数曲(しかもinterludeなど)に留まり、基本的にはDJにはよくあるHIP HOPのお祭りアルバムとなっています。


Disc1はクラブ向けの楽曲が中心となった内容。
KHALEDとSizzlaによる感謝の気持ちを告げるイントロを経て、シングルで切られた3曲が立て続けに続きます。
3曲とも人気曲ですが、個人的にはM-3「Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller」が一番です。
ラップと歌両方でナイスパフォーマンスを披露するRihannaと、スムーズにラップを乗せていくBryson Tillerの相性がバッチリですね。詞の内容はちょっと刺激的とはいえ。のんびりした雰囲気のトラックの豪華メンバーによるマイクリレー、M-4「I'm the One feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne」もDisc 1の中では耳を惹きますね。


シングル曲3曲が続いた後は、いよいよアルバム曲の開始。
ただ、どうもラッパーとトラックの相性が微妙な感じがする曲が続きます。
豪華なメンバーではあるんですけど、曲としては光るものがあまり。

和訳を見るとM-5「On Everything feat. Travis Scott, Rick Ross & Big Sean」のRick Rossがトランプ大統領をDISしていたり、M-6「It's Secured feat. Nas & Travis Scott」ではNasが相変わらずのリリシストぶりを発揮していたりと、和訳では楽しめるところがちょこちょこありますけどね。


Disc 1の最後を締めくくるM-10「Don't Quit」がDisc 1のアルバム曲では飛び抜けて一番の出来です。
リリックの内容はスケベなので、好みは分かれるかもしれませんが、Calvin Harrisがプロデュースを努めたトラックはDisc 1では一番HIP HOPらしいトラックで、単純に聴いていて楽しいですし、その上に乗っかるTravis Scottの歌、Jeremihのラップも絶好調で聴きごたえがあります。
この曲をDisc 1の最後にしたのは正解でしたね。


Disc 2は比較的ハードな内容になっています。

初っぱなからM-1I Can't Even Lie feat. Future & Nicki Minaj」、M-2「Down for Life feat. PARTYNEXTDOOR, Future, Travis Scott, Rick Ross & Kodak Black」と豪華なメンバーが続きます。前者は最初にしてはちょっと雰囲気が暗い印象を受けます。
後者はマイクリレーものですが、シンガー陣によるHookがなかなか強烈で、ラッパー陣がちょっと霞むくらいです。


序盤で光るのはその次のM-3「Major Bag Alert feat. Migos」。
Migosのメンバーのいい仕事ぶりが、特にHookで発揮されています。
ダークながら耳を惹くトラックもかなり好みです。(続くM-4「Good Man feat. Pusha T & Jadakiss」がイマイチでつまづきましたが)


さて中盤へ。

M-5「Billy Ocean feat. Fat Joe & Raekwon」は、シンプルなトラックの上でベテラン2人が硬派なラップを乗せる、本作では数少ない「ラップを全面的に魅せている」曲です。
というかHookが歌じゃないのってこの曲くらいでは?とにかくこの曲はトラックもラップも両方グッドワーク。
90年代のHIP HOPが好きな方にも自信を持ってオススメします。

M-6「Pull a Caper feat. Kodak Black, Gucci Mane & Rick Ross」も、ラップもHookの歌も耳を惹く佳曲。


そこから後半に入っていいと思えたのは、Mavadoの一人舞台であるM-11「Unchanging Love feat. Mavado」。
感謝の気持ちをしっかりと爽やかに歌い上げるMavadoの歌がバッチリですね。
本作の中でも異色ではありますが、最後辺りで底力を見せてくれましたね!

最後に忘れてはいけないのは、国内版のボーナストラックであるM-13「Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (Medasin Dance Remix)」、M-14「Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (NOTD Dance Remix)」。

後者は良くも悪くもな出来ですが、前者は正直言って原曲より好きです。
原曲に比べて明るい雰囲気なRemixになっていて、ドライブなどには持ってこいな1曲になっています。
このRemixが聴けるだけでも国内版を買う価値あり!


全体を通して見ると、客演は非常に豪華であるものの、曲としては良し悪しが出ています。
いくらなんでも詰め込みすぎて訳が分からなくなっている印象もありますね。
良くも悪くもコンピレーションアルバムを聴いている感じです。


ただこれだけバラエティに富んでいるので、何曲かは必ずお気に入りの楽曲ができるかと。
その曲を使ってリスナーがそれぞれ1枚のCDに焼けば名盤に化ける可能性を秘めた作品でもあります。

その何曲かのお気に入りの楽曲を作るだけという目的でも聴く価値はあると思います。
そこまで強くお勧めはしませんが、興味のある方はチェックをどうぞ。


↓Disc 1のM-5「On Everything feat. Travis Scott, Rick Ross & Big Sean」のPV。
www.youtube.com

↓Disc 2のM-6「Pull a Caper feat. Kodak Black, Gucci Mane & Rick Ross」のPV。
www.youtube.com

BAYSIDE RIDAZ / DS455

BAYSIDE RIDAZ


曲目リスト


1. THA GATE OF LOCOHAMA ~INTRO~
2. D.P.G. RECORDS feat. Daz Dillinger For THA DOGG POUND
3. BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO
4. 僕の中の少年 ~遠い記憶IV~
5. Tha Message from WCC & G PRIDE
6. えぐる挽歌 feat. GANXSTA DX
7. D`s Nutz FM
8. ~INTERLUDE~ 夕(ゆう) Part 1.
9. SMOKE IN THA MARMALADE feat. CORN HEAD
10. Smoked Conversation ~OUTRO~


評価: ★★★★★★★★☆☆


神奈川県横浜のラップグループ、DS455の1stアルバム。
2000年7月27日発売。


DS455は1989年にMCのKayzabroとSHALLAで結成されたラップグループ。
元々はKayzabroが地元の友人たちと組んだグループが原型とのこと。
その後にMACCHO、DJ PMXが加入し、有名になってからのDSに近くなっていきます。
(MACCHOはすぐ脱退してしまいましたが)


しかしながら、しばらくの間はそれぞれのメンバーが裏方仕事に徹しており、グループとしての音楽活動はほとんどなく、みんなで集まってHIP HOP話に華を咲かせたり、お酒をのみながらラップをしたり、サークルに近かったようです。

最初こそ、そこら辺にいるラッパーの集団とそんな違いはなかったDSですが、N.W.Aを筆頭とする西海岸HIP HOPが日本にも入ってきてから少しずつ他のラッパー集団とは違う道を進んでいきます。
1992年にDr. Dreの1stアルバムがリリースされ、その魅力にどっぷりとハマってしまったメンバー達は、西海岸サウンド日本語ラップを!という試みを開始。

しかし、残念ながら当時のリスナーの心をつかんだのは専ら東海岸サウンド
レコーディングをすることすら難しい状況で、長らく活動の場に恵まれませんでした。
表舞台には出てこないものの、アメリカのラッパーやレーベルと交流を持つなど、細々と、しかしながら着実に名前を広げていきます。


そして結成から苦節11年、とうとう1stアルバムである本作をリリース。
彼らの11年間の成果がここにあります。


では、内容に。


DS455の特徴はこれでもかというくらいの、「アメリカの西海岸HIP HOP」の再現。
DJ PMXのトラックは、まさしくアメリカの西海岸HIP HOPのそれであり、独特な爽やかさと聴きやすさを持っているため、アメリカのHIP HOPを聴かない方でも抵抗なく入り込めるのでは。


M-1THA GATE OF LOCOHAMA ~INTRO~」は不穏な雰囲気のイントロ、M-2「D.P.G. RECORDS feat. Daz Dillinger For THA DOGG POUND」はアメリカからDaz Dillinger(!)のコールのスキット。
スキットやインストが2曲続くと、くどくなったりしがちですが、これが割りとすんなりと耳に入ってくる構成。
そしてその後のM-3「BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO」がやっとのラップ入りの楽曲になります。
2曲連続で焦らした後に控える楽曲だけあって、すごくかっこいいです。
DSのオリジナルメンバーが勢揃いしたマイクリレーで、SHALLA、Kayzabro、MACCHOの3人ともキレキレのラップ合戦を見せてくれます。


そしてそんな熱いマイクリレーの後にM-4「僕の中の少年 ~遠い記憶IV~」へ続きます。
攻撃的なM-3「BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO」とは裏腹に、情緒漂うトラックの上でSHALLAとKayzabroの両者が素敵なリリックを乗せる、言葉の面でも音楽の面でも極上な一曲。
序盤の二曲でこれだけの二面性を出してくるのはすごいですね。


仲間たちからのコールのスキットを挟み、M-6「えぐる挽歌 feat. GANXSTA DX」。
これは思い切りなギャングスタチューンで、個人的にはこの曲がアルバムベスト。
爽やかながらも危機感のあるトラックの上で危険なラップを乗せる3人が熱すぎます。
特にGANXSTA DXのアメリカのギャングスタラッパーのリリックをそのまま輸入したかのような、ギャングギャングな言葉さばきは聴いているだけで臨場感があります。


後半に入ると、MAYによるスキットのM-8「~INTERLUDE~ 夕(ゆう) Part 1.」。
このスキットが何気に好きな一曲です。
PMXのトラックとMAYの歌声が見事にマッチしていて、スキットにしてはもったいないくらいの良曲になっています。
(前後の2曲は、悪くはないですがちょっとKayzabroが目立っていないように感じます。SHALLAとCORN HEADが目立ってますね。)


そしてそして、クレジットこそされていないものの、M-10のアウトロの後にはボーナストラックとして「BAYSIDE RIDAZ」のRemixが収録されています。
原曲の爽やかな雰囲気とは違って、かなり攻撃的な雰囲気のトラックになっています。Hookも別物。
原曲に全く負けていないRemixで、聴きごたえは十分すぎるくらいあります。
最後にいいのぶちこんでくれたなあ!と思える流れです。


全体を通して本当にサラッと聴ける爽やかさと、聴きごたえを見事に両立した快作アルバムになっています。

結成から11年経ってやっと出された1枚だけに、納得のいく内容ですね!


そしてこのアルバムリリースを機に、日本語ラップシーンに新しい風が吹き込んでいく・・・胸が熱くなる展開を作った1枚でもあります。
アメリカの猿真似?そんなことは聴いてから判断をお願いしますよ。

興味のある方はご一聴を!


↓M-3「BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO」。
www.youtube.com

THE DUTCHESS / FERGIE

The Dutchess


曲目リスト


1. Fergalicious feat. Will i am
2. Clumsy
3. All That I Got (The Make Up Song) feat. Will i am
4. London Bridge
5. Pedestal
6. Voodoo Doll
7. Glamorous feat. LUDACRIS
8. Here I Come feat. Will i am
9. Velvet
10. Big Girls Don't Cry
11. Mary Jane Shoes
12. Losing My Ground
13. Finally
14. Get Your Hands Up feat. The Black Eyed Peas


評価: ★★★★★★☆☆☆☆


アメリカのカルフォルニア州出身のシンガー、FERGIEの1stアルバム。
2006年9月13日発売。


FERGIEは子どもの頃からダンスの勉強をして、アメリカの子ども番組に9歳から14歳まで出演していました。
両親からの援助を得るために高校では常にオールAの成績を取ったり、チアリーダーの経験もあったりと芸能界以外でも多忙な日々を過ごしていたようです。
1995年に友人たちとガールグループのWild Orchidを結成し、音源のリリースをしていきます。


しかし、それまでの多忙な日々がたたり、FERGIEはストレス解消のために覚醒剤に手を出してしまい、中毒患者になってしまいます。
その後は治療によって克服するものの、Wild Orchidからは正式に脱退。
覚醒剤に子役時代に稼いだお金を使い果たして無一文になってしまったFERGIEは、ダンサーやバックシンガーのバイトを繰り返すうちに、自身が大ファンであったBlack Eyed Peasと仕事が重なります。
そこから彼女は彼らの友人となり、2003年に紅一点としてThe Black Eyed Peasに加入。(この頃からTheがついた)

その後のThe Black Eyed Peasが快調にヒットを出したこともあり、 FERGIEの名前も世界的に知れわたることに。
2006年、とうとう本作で念願のソロデビューを果たしました。
全米で390万枚のセールスを記録し、2006年を代表するシンガーの1人になりましたね。


では、内容に。


2006年当時にはHIP HOPで中心的なサウンドとなっていた、POPにかなり近いクラブサウンドがメインとなっています。
良くも悪くもラジオ向けの楽曲が多いですね。
とっつきやすいFERGIEの歌声との相性も悪くないですが、80年代や90年代の硬派なHIP HOPサウンドを好む方はちょっと不快に思うリスナーもいそうです。
好みがかなり分かれるWill i amのプロデュースですし。


M-1Fergalicious feat. Will i am」、M-2「Clumsy」と最初からヒットシングルが2曲続く展開。
2ndシングルとして切られた前者はシングルとして聴く分には悪くないかもしれませんが、アルバムの最初を飾るにしてはちょっと弱いですかね。
せっかく疾走感があるトラックなのですから、FERGIEにも早口ラップをやらせればネクストレベルに行けた気も。
5thシングルとして切られた後者はHookの軽快さと歯切れの良いFERGIEの歌唱がナイスで、こちらの方が個人的にはお気に入り。


そこからバラードを挟んだ後に1stシングルのM-4「London Bridge」に行きます。
序盤ではやはりこの曲が個人的ベスト。
ラップでも歌の面でも見事な両立っぷりですし、単純に聴いていて首を縦に振りたくなってしまいます。
続くM-5「Pedestal」はハンドクラップ系のトラックで、FERGIEとの相性は微妙ですが、bridgeでの煽るような歌唱は聴いていて気持ちいいですね。


さて、中盤へ。
80、90年代に近いトラックが耳を惹くM-6「Voodoo Doll」を経て、3rdシングル曲のM-7「Glamorous feat. LUDACRIS」。FERGIEはアルバム屈指のいい仕事ぶりですが、LUDACRISはちょっと印象が薄め。この曲を聴き終わった後にLUDACRISがいたことを覚えているリスナーは果たしてどれくらいいるのでしょう。

個人的に「おっ」と感じるのはM-9「Velvet」からM-11「Mary Jane Shoes」までの流れ。3曲ともFERGIEの歌声が生かされている上に、非常に聴きやすい楽曲に仕上がっています。
M-11「Mary Jane Shoes」の一気に雰囲気が変わる展開はちょっとびっくりしてしまいますね。
シリアスな雰囲気のM-12「Losing My Ground」はHookがちょっとしつこい印象で余り好きになれませんが、M-13「Finally」はシンプルなトラックでFERGIEが歌い上げる、FERGIEの歌声が好きな方ならとても楽しみにしていい楽曲だと思います。
FERGIEの歌声を純粋に楽しめますよ。

最後を締める、The Black Eyed PeasのボッセカットのM-14「Get Your Hands Up」はかなりPOP寄りなクラブチューン。
ちなみにこの曲の後にボートラがあり、クールなトラックのお洒落な雰囲気が耳を惹きます。


全体を通して見ると、良曲もちょこちょこあり、FERGIEの魅力も味わえる作品ではありますが、通してアルバムとして纏まりがイマイチだったり、客演が余りいい働きをしていないなど、粗も目立ちます。
一昨年に11年ぶりにアルバムをリリースしたようなので、そちらではもうちょっと整理されていることを期待したいですね。


そんなに強くお勧めはしませんが、2006年くらいの流行りのサウンドが好きな方は一聴の価値ありですよ。


↓M-10「Big Girls Don't Cry」のPV。
www.youtube.com

ミチシルベ 〜a road home〜 / ORANGE RANGE

ミチシルベ ?a road home?


曲目リスト


1. ミチシルベ ~a road home~
2. ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC
3. 山内公園
4. ミチシルベ ~a road home~(ryukyudisco remix)


評価: ★★★★★★★★☆☆


沖縄出身のバンド、ORANGE RANGEの5thシングル。
2004年2月25日発売。


2003年の「上海ハニー」のヒットを皮切りに、一気に日本で知らない人はいないグループに登り詰めたORANGE RANGE

1stアルバムリリースから2ヵ月というインターバルで本作をリリースしました。


本当のORANGE RANGEの快挙はここからです。
何と本作から9作連続でシングルをチャート1位に送り込んでしまいます。
本作のM-1ミチシルベ ~a road home~」はドラマ「FIRE BOYS 〜め組の大吾〜」の主題歌として起用され、M-2「ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC」はメロDAMのCMソングとして起用。

話題性も十分だったわけですね。


さて、内容に。


M-1ミチシルベ ~a road home~」は、彼らのインディーズ時代の楽曲「ミチシルベ」のセルフリメイク曲です。
原曲と比べるとサウンド面がかなり力強くなっていて、3人の歌もちょっと余裕が出てきているように感じます。
原曲のまだまだ発展途上な雰囲気から、一気にパワーアップした雰囲気になっていますね。
どっちが好きかは好みが分かれると思いますが、個人的には聴きごたえがグイーンと増したこちらの方が好きです。
詞も3MCの声にこれ以上なく合っていて、安っぽい応援歌でなくしっかりと響く応援歌に仕上がっています。
当時の人気曲だったのも頷けますね。


M-2「ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC」は、ドリフターズの有名曲である「ドリフのズンドコ節」を参考にして作られた、ノリ100%のパーティーチューン。
確かにHookが思い切りズンドコ節です。
ですが曲としてはサウンドの勢いも申し分ないですし、詞のくだらなさも突き抜けていて、単純に聴いていてすごく楽しめる一曲になっています。
ドリフのズンドコ節」からこんな楽曲を思い付くとは、つくづくNAOTOの音楽センスは恐ろしすぎます。
これで当時20やそこらだったんですからね・・。


M-3「山内公園」は、小中学校の時にRANGEのメンバーがよく遊んでいた公園をテーマにした思い出ソング。
RANGEの裏ベストに収録されるまでは、隠れた名曲としての立ち位置でした。
個人的にも、この頃のRANGEの楽曲の中でもかなり好きな一曲です。
爽やかなサウンドと、3人の前向きな詞が十分な聴きごたえを提供してくれる、この頃の彼らだからこそ出来た一曲だと感じます。


M-4「ミチシルベ ~a road home~(ryukyudisco remix)」はいつもながらのテクノ風のRemix。
これはまあ、テクノ好きなら楽しめるのでは。


全体を通して、チャート1位を獲得したのも納得の良曲揃いで、アンチRANGEが多かったAmazonレビューでも、比較的評価が良いのも頷けます。
M-1ミチシルベ ~a road home~」、M-2「ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC」は2ndアルバムに収録されていますし、M-3「山内公園」は裏ベストに収録されているので、まとめて聴きたい方はそちらをオススメします。
ただ裏ベストに収録されているのは歌い直しがされているので、当時の「山内公園」は本作でしか聴けません。


かなり安く中古で販売されていますので、興味のある方は是非。


M-1ミチシルベ ~a road home~」のライブ映像。
www.youtube.com