りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

The Best Of DS455 / DS455

The Best Of DS455(初回盤)


曲目リスト


Disc 1

1. SUMMER PARADISE ~Risin' To Tha Sun~ feat.青山テルマ
2. 僕の中の少年+~遠い記憶IV~ -New Recording Version-
3. NIGHT CRUISE~星降る夜に~ -New Recording Version-
4. Ride In Peace feat. II-J,Iz
5. LOWRIDE 4 LIFE -New Recording Version-
6. Very Special Weekend
7. Ride Wit tha D.S.C.~Just Like Me~ -New Recording Version-
8. Summer Sweetz~CIGAR & LIQUOR~
9. Still Belong In Tha Street (Ah Yeeah)
10. Throw Ya Handz Up
11. To Myself
12. Night 4 Playaz feat. MAY -New Recording Version-
13. MY SWEET HONEY feat. Kalassy Nikoff
14. White Nite
15. L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~


Disc 2

1. Very Special Weekend -REMIX-
2. L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~ -REMIX-
3. Still Belong In Tha Street feat. BIG RON -Smooth Radio Mix-
4. LOWRIDE 4 LIFE (REMIX) -New Recording Version-
5. NIGHT CRUISE ~星降る夜に~ Remix feat. Iz -New Recording Version-


評価: ★★★★★★★★☆☆


遅ればせながらあけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。
とりあえず今年初めに結構聴いていた日本のアルバムを一つ。


神奈川県横浜のラップグループ、DS455のベストアルバム。
2008年4月23日発売。


90年代の日本語ラップシーンではほとんど無視されていたと言ってもいいのが西海岸サウンド
キングギドラスチャダラパー、BUHHDA BRANDなど様々なラッパーがメディアに出るようになり、日本語ラップシーンというものが作成されていったものの、その全てはLL Cool JRakimNASWu-Tang Clan、Run Dmcなどの東海岸系のHIP HOPから影響を受けたものでした。
N.W.Aや2PACなどといった伝説となるラッパーが西海岸のHIP HOPシーンに登場したものの、東海岸HIP HOPほどのプロップスを当時は得られなかったのです。(名盤であるNASの1stアルバムの解説を担当していた泉山氏も解説で「東海岸びいきをやめられないでいる」ということを述べていました。それほど当時は「西海岸はダサい」というようなイメージがついていたのです)
そのような環境の中で、西海岸サウンド日本語ラップシーンの中でシーンとして存在し始めたのが2000年から。DS455が1stアルバムをインディーズでリリースしたことによって、全国各地の西海岸HIP HOPに影響を受けたラッパーやDJ達がうようよと登場し始めたのです。
2002年からはDSがメジャーデビューを果たしたことにより、ますますその勢いは止まらず。
h.g.p、NORA、PHOBIA OF THUG、LGY、GHETTO INC.、NORTH COAST BAD BOYZなどといった西海岸系ラップグループが日本のシーンでも精力的に活動を開始しました。
結果的に日本の音楽界での一つのムーブメントとなったのです!
このムーブメントは2009年くらいまで続くことになります。


そして上を読んでもらえるとわかる通り、そのムーブメントの起爆剤となったのがこのDS455
そのシーンの中心にい続けたのも、このDS455です。
1989年から活動を続け、1stアルバムをリリースしたのは結成から11年後。
メジャーデビューを果たしたのは、結成から13年後。
結果として自分たちが起爆剤となって一つのシーンを確立しただけでなく、ムーブメントまで到来。
彼らの努力の賜物が一気に出た結果と言えます。


その環境に甘んじることなく、2006年にはレーベルを立ち上げ、DSとしても積極的にシングルやアルバムをリリースしていきます。
そんなDSが結成20周年を迎える直前の2008年(結成19年時)に、ベストアルバムである本作をリリースしました。
当時はすでにアルバムを5枚、シングルを9枚リリースしていたこともあり(White NiteはDS455+BIG RON名義)、ベストアルバムを出すには十分なタイミングだったと言えるでしょう。


さて、内容に。


DSの特徴といえば90年代の西海岸HIP HOPをトラックの面でもラップの面でもその再現にこだわるスタイル。
DJ PMXが手掛けるトラックは攻撃的なものも心地よく聴けるものもありますが、爽やかさがあるのが共通点です。
それはオリジナルアルバムを聴いていても感じることですが、シングルカットされた全曲、アルバムからの代表曲を集めたこのベスト盤を改めて聴いていると、それが特に顕著に感じられます。


100%サマーチューンなM-1SUMMER PARADISE ~Risin' To Tha Sun~ feat.青山テルマ」から、情緒的なリリックで魅せるM-2「僕の中の少年+~遠い記憶IV~ -New Recording Version-」の流れで、「これはいい」と思った人は、ぜひともそのまま最後まで聴き進めてほしいですね。
その後も基本的にそのようなサウンドが続くので。
M-3「NIGHT CRUISE~星降る夜に~ -New Recording Version-」はまさにこれぞDS!というクルージングチューンですし、M-4「Ride In Peace feat. II-J,Iz」もKayzabroとII-Jの硬派なラップにIzとMAY(こちらは客演にクレジットされていませんが)の伸びやかな歌声が華を添える、さすがにアルバム曲からセレクトされただけはある良曲。


それからM-5「LOWRIDE 4 LIFE -New Recording Version-」はちょっと空気が変わり、攻撃的なトラックの上でKayzabroがパーティラップを乗せるパーティーチューン。上記の4曲を聴いてきた人にとってはちょっと異色に映るかもしれませんね。M-6「Very Special Weekend」はちょっと派手目なトラックでのクラブチューンで、これまた客演にクレジットはされていませんがMAYとIzの歌声とKayzabroのラップがばっちりのハマりを見せてくれます。
M-7「Ride Wit tha D.S.C.~Just Like Me~ -New Recording Version-」はまったりした雰囲気のパーティーチューンで、華やかな雰囲気のM-6から一気に違う雰囲気に持って行ってくれます。


M-8「Summer Sweetz~CIGAR & LIQUOR~」はM-1SUMMER PARADISE ~Risin' To Tha Sun~ feat.青山テルマ」と同じくサマーチューンですが、雰囲気は全くの別物で、カラッとしたようなトラックにA☆ZACKのトークボックスが絡みつく様が一度聴いたら耳に残ること間違いなし。
MAY(これまた客演にクレジットはry)の一瞬の歌声とKayzabroのラップ、トラックのの相性も抜群なのは言うまでもなく。
M-9「Still Belong In Tha Street (Ah Yeeah)」、M-10「Throw Ya Handz Up」はこれまでのメロウな雰囲気から一転して攻撃的なトラックのパーティーチューン。
Kayzabroのラップも中々攻撃的で、ちょっと好みが分かれそうですね。


M-11「To Myself」はまた落ち着いた雰囲気に戻り、自分たちの音楽でのヒストリーを交えながらのメッセージソングで、トピック的には割と珍しいのを持ってきましたね。HooksでのSAYのボーカルがいい味を出してます。
M-12「Night 4 Playaz feat. MAY -New Recording Version-」は今までの本作収録曲では客演にはクレジットされていなかったMAYがやっと客演としてクレジットされているパーティーチューン。
この曲ではMAYも中盤でラップを披露しており、この上なくいいアクセントになっています。
M-13「MY SWEET HONEY feat. Kalassy Nikoff」、M-14「White Nite」は恋愛ソングで、前者はKalassy Nikoff(AK-69のシンガー名義)、後者はBIG RONの伸びやかな歌声も相まって、甘さ100%の楽曲に。
Kayzabroのリリックはちょっとベタベタなところもあるものの、サラッとした声質のお陰でそれほど嫌味なく聴けます。

Disc 1の最後を締めるM-15「L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~」は、曲名の通り人生についてラップするメッセージソング。
華やかな清涼感100%のトラックに、Kayzabroのラップが見事堪えた一曲で、この曲を最後に持ってきたのは大正解と感じます。


Disc 2はDSのオリジナルアルバムには収録されていなかった既発曲のリミックス5曲が収録されています。
M-1Very Special Weekend -REMIX-」、M-2「L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~ -REMIX-」、M-4「LOWRIDE 4 LIFE (REMIX) -New Recording Version-」はどちらも原曲に比べるとあっさりとしたトラックのRemix。悪くはないですが原曲の方が雰囲気があって好きですね。
M-3「Still Belong In Tha Street feat. BIG RON -Smooth Radio Mix-」は原曲とは全く雰囲気が違っていて、HookはBIG RONの歌になっています。
ひたすらトラックもリリックも攻撃的な原曲とは異なり、トラックがBIG RONの歌も相まってメロウな雰囲気になっています。
かなり大胆な変え方ですが、これはこれでいいですね。ドライブ時には原曲よりこっちの方がピッタリかもしれません。
M-5「NIGHT CRUISE ~星降る夜に~ Remix feat. Iz -New Recording Version-」は、本作のリミックスでは一番雰囲気が原曲に近いかもしれません。
というか全く同じクルージングチューンですね。
ただこちらはIzが客演としてクレジットされていることもあり、原曲よりIzの存在がずっと目立っています。
実を言うと原曲よりこっちのほうが好きです。原曲よりKayzabro、Iz、DJ PMXそれぞれが活きているように感じるんです!


久しぶりにDSのベストアルバムを聴きましたが、やはりシングル曲やそれぞれのアルバムの代表曲を収録していることもあって、間違いない内容だと感じました。
ラップが下手だとかリリックに中身がないとか言われることもあるKayzabroですが、何だかんだでDJ PMXのトラックに一番合うのは彼のラップですね。
AmebreakでのインタビューでKayzabroが「俺がパブちゃん(DJ PMX)のビートでラップすれば、それはもうDSになる」と言っていましたが、本当にその通りです。

上にも書いたようにとても良いベストアルバムではあるのですが、Disc 2のRemixも含め、純粋な新曲はないので、今までのDSの音源をすべてチェックしている人や、シングルやアルバムを全て買い集めようと思っている人は無理に買う必要はないかもしれません。
ただ、本作は2ndアルバムの楽曲とDisc 2のM-4「LOWRIDE 4 LIFE (REMIX) -New Recording Version-」が「-New Recording Version-」として音質を飛躍的に向上させている上に、2ndアルバムにあった前後の楽曲のつなぎも無くなっているため、プレイリストなどに収録しやすいという利点があります。
Disc 2のRemixもすべて既発曲であるものの、それぞれのシングルを購入する手間を考えればお手軽に入手できるという利点もありますね。
どちらを選ぶかは自由ですが、どうしてもインストが欲しいという人でなければ本作を手に入れる方がお得かなと思います。
通常盤にはDisc 2が付いていないので、今から手に入れようと思う方はぜひDisc 2が付いた初回限定版を。


1つのシーンを作り上げたグループの間違いないベストアルバム、興味のある方は是非どうぞ。


↓Disc 1のM-4「Ride In Peace feat. II-J,Iz」。
www.youtube.com

↓Disc 2のM-1Very Special Weekend -REMIX-」。
www.youtube.com

The Hunger For More / Lloyd Banks

The Hunger For More


曲目リスト


1. Ain't No Click feat. Tony Yayo
2. Playboy feat. DJ Whoo Kid
3. Warrior
4. On Fire feat. 50 Cent
5. I Get High feat. 50 Cent, Snoop Dogg
6. I'm So Fly
7. Work Magic feat. Young Buck
8. If You So Gangsta
9. Warrior Part 2 feat. 50 Cent, Eminem, Nate Dogg
10. Karma feat. Avant
11. When The Chips Are Down feat. The Game
12. Til The End feat. Nate Dogg
13. Die One Day
14. South Side Story
15. Just Another Day
16. Take A Good Look


評価: ★★★★★★★★☆☆


皆さんお久しぶりです。仕事先で新たな場所で仕事することになり、奔走していました。
とりあえず今年の〆として本作を紹介させて頂きます。
今月に入って、結構聴いていた作品なので・・。


アメリカのNY出身のラッパー、Lloyd Banksの1stアルバム。
2004年6月29日発売。


HIP HOPミュージシャンは過酷な家庭で育った経歴を持つラッパーが多いですが(というかそもそもそれがHIP HOPという文化においては一種のステータスになっている)、このLloyd Banks(以後Banks)も例外ではありません。
Banksの両親が未婚の状態でBanksは産まれ、父親はほとんど刑務所にいるという家庭でした。
自身が所属するG-UNITのメンバーであるTony Yayo(以後Yayo)と同じストリートで育ったのです。

50 CENT(以後50)が友人であるYayoとラップグループのG-Unitを結成したのが1997年だったのですが、Banksは当時学生だったこともあってか共通点が少なく、そんなに一緒には活動していませんでした。
2000年に50が銃撃事件に巻き込まれ、地元に帰った際に、Banksが少しスタイルが変わった、ということをYayoから聞きつけ、Banksが自分たちのスタイルと合ったスタイルになったということを認識したのです。

それが結果的に彼のG-Unit加入に繋がったのは2001年9月10日の夜(偶然にも911の前夜)のこと。
とあるクラブの前で営業活動を終わった後にタムロをしていたメンバーに対し、何者かが発砲し、5人がケガをしたという事件が起こりました。
その内の1人がBanksだったのです。
その時に「過去に自分も撃たれた経験がある」50に対し、彼に付いていくことを心に決め、G-Unitへ加入することに。

50がG-Unitとしてリリースするミックステープに参加するようになり、様々なHIP HOPミュージシャンから注目を浴びることになります。
2003年にリリースされたG-Unitの1stアルバムがセールス的にも話題作になったこともあり、リスナーからも要注目のラッパーの1人になりました。
50からも「生涯のダチ」と言われるほどの信頼を獲得。


2004年にとうとう、初のソロアルバムである本作をリリースしました。
当然ながら話題作となり、100万枚以上のセールスを記録し、様々な賞にノミネート。
G-Unitの1stアルバムの成功により、ただでさえ名前の広がっていたBanksの名前をさらに音楽業界に刻み込みました。


さて、内容に。


Banksの特徴はまるで聴いているこっちも舌がもつれてしまいそうなくらいのラップさばき。
G-Unitの1stアルバムでも50やBuckがホニャホニャ、モッサリとしていたラップをしていただけに彼のスタイルも強烈なスタイルとして映っていました。
そんな彼の1stアルバムである本作。
50周辺のミュージシャンたちにもある聴きやすい雰囲気もあるものの、50やG-Unitの1stアルバムに比べるとハードな雰囲気を放っています。


まず銃声のイントロから始まる、POPさの欠片もないハードなビートにラップが乗っかるM-1Ain't No Click feat. Tony Yayo」から存分にヤバさがわかるというもの。
所々でYayoからの煽りを受けながら淡々とラップを乗せていくBanksがカッコいいのは勿論ですが、最後のバースで一気に暴れまわるYayoの鬼気がすごいです!
他の作品(50やG-Unitの1stアルバムやミックステープ)では余り存在感が無かった(ように個人的に感じた)Yayoですが、この曲ではすごくカッコいいと感じました。

その後もBanksのラップの味が楽しめるナンバーが続きますが、個人的にはM-3「Warrior」、先行シングルカットされたM-4「On Fire feat. 50 Cent」がお気に入りです。前者はちょっと歌心もあるタイトル名を言うHook、後者はHookでもひたすらラップを込めまくる様がとても聴きごたえあり。
後者はヒットしたのも頷けますね!(その次に控える50とSnoopが参加したM-5「I Get High feat. 50 Cent, Snoop Dogg」はそれぞれのバースはいいものの、50が担当するHookがイマイチでちょっとつまずいた感が否めないものの)


そしてこれまた先行シングルカットされたM-6「I'm So Fly」。
これはもうBanksだからこそできた曲と言っても過言ではないですね。
リリックの内容はひたすらビッグマウスなものの、包むようなシリアスなトラックとBanksのラップの相性が何とも言えない良さです。
この後に続くM-7「Work Magic feat. Young Buck」という飛び切りハードな曲に行く流れも聴いていて楽しい(まあ和訳を見るととても楽しいなんて言ってはいけない内容ですが・・)です。


M-6「I'm So Fly」と似たような路線のM-8「If You So Gangsta」を挟んだ後に控えるのがM-9「Warrior Part 2 feat. 50 Cent, Eminem, Nate Dogg」。
M-3「Warrior」の続編となるわけですが、本作の中盤のハイライトと言っていい楽曲ですね!
50にEminemとBanksのマイクリレー、HookをNate Doggが担当するという構成ですが、全員持ち味を生かしたパフォーマンスを披露。
シンプルながらもハードなトラックも半端なくカッコいいですし、この曲だけでも本作を聴く価値はあります。

M-10「Karma feat. Avant」はそれまでのハードな展開とは違いHookにAvantの歌を採用したちょっと異色な曲ですが、Banksとのラップはしっかりハマっています。
ドライブのBGMにはもってこいでしょうね!
最も続く楽曲が本当に重たい内容なので、使うとしたらこの曲のみにした方がいいかもと思いますが・・。(M-11「When The Chips Are Down feat. The Game」は思ったよりGameが目立っていませんでした。M-12「Til The End feat. Nate Dogg」は暗すぎるトラックとNate Doggのバックコーラスの調和がナイス)
後半はひたすらハードなトラックの上でBanksがラップするという内容。どの曲もトラックとBanksのラップの相性が抜群で、客演なしでもしっかりと聴き通せる内容になっています。


M-15「Just Another Day」、M-16「Take A Good Look」の2曲は国内版限定のボーナストラックです。
前者は臨場感のあるトラック、後者はシンプルなトラックの上でBanksが硬派なラップを乗せる楽曲。
どちらもBanksのラップが冴えた内容で、是非ともチェックしてほしい楽曲です。
ボーナストラックまでしっかりと楽しめる内容になってますよ。


全体を通してみると、流石に50と共にEminemらが惚れ込んだのもあり、Banksの才能をこれでもかと言うくらい感じられる内容になっています。
G-Unitが2003年から2005年まで一種のブーム状態になったのも頷けますね。
シングルの「On Fire feat. 50 Cent」(M-4)、「I'm So Fly」(M-6)だけかと思ったら大間違い。
シングルカットしてもいいと感じる曲が他にもたくさんあります!
もう15年近く前の作品ですが、今聴いても色あせてないですよ。


しかしながら、最近のBanksはもう音楽活動に対する意欲が減ってしまったらしく、今年のネットニュースで「またアルバムを出してくれよ」というファンに対し、SNSで「現実を見てくれ。もう俺のことを注目している奴なんて一人もいないよ」と発言したことが取り上げられていました。
これだけのいい作品を出せるラッパーなのに・・ちょっともったいない気もします。
最も、ダラダラ続けるよりはいいのかな、なんて気もしますが。


とりあえず、今聴いても全く色あせていない作品、興味があればぜひチェックしてください!

↓M-10「Karma feat. Avant」のPV。
www.youtube.com

PLATINUM TONGUE / DABO

PLATINUM TONGUE


曲目リスト


1. PLATINUMINTRO
2. MIC CHECK
3. マチガイナイ!
4. O-RE-BA-NA
5. BUNNY TALKS
6. PLATINUM TONGUE feat. SUIKEN
7. HI-LIFE (RELAXXX)
8. PINKY ~だから、その手を離して~ feat. Tyler
9. 拍手喝采
10. レクサスグッチ
11. 徒然草 feat. HUNGER, MACCHO
12. 愛しのサブリナ
13. R.E.C.ROOM (BAD TRIP)
14. DAIMONION FUNK (I GOT CHA)
15. JOLLY’S PIANO
16. この指止まれ feat. CQ
17. SNEAKER PIMP (TWO PIMPS IN A CYPHER MIX) feat. TWIGY
18. ZERO (MUKASEE MUKASEE MIX)


評価: ★★★★★★★★★☆


千葉県出身のラッパー、DABOの1stアルバム。
2001年6月13日発売。


90年代から活動を始め、日本語ラップの代表的グループであったNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの一員でもあったDABO。
何枚かシングルをリリースした後、NITROの1stをリリースした翌年に、フルアルバムの本作をリリースしました。
NITROの1stアルバムリリース後、メンバーはそれぞれソロ活動にも精力を入れるようになりましたが、SUIKENが1stアルバムをリリースしたちょっと後にリリースした形になりましたね。


本作からはリリース前にはM-9「拍手喝采」、M-18「ZERO」の2曲が先行シングルとしてリリース(後者はちょっとバージョンが違いますが)され、リリース後にはM-8「PINKY ~だから、その手を離して~ feat. Tyler」、M-10「レクサスグッチ」がシングルカットされています。

NITROの中でもずば抜けたラップスキルで一際有名だったDABO。そんな彼の1stアルバム。話題にならないはずがありません。
リリースされるや否や、様々な雑誌で高評価の嵐。
「日本版ILLMATIC(アメリカのHIP HOPの伝説的なクラシックであるNASの1st)だ!」なんていう声も上がるほど。
DABOのアルバムと言えばこれ!というリスナーも未だに多いはずです。


では、内容に。


4thシングルの感想を書いたときにも感じましたが、とにかくDABOのラップのスムーズさと聴き心地の良さは反則的。
今でも出てきたらびっくりさせられるであろうラップなのに、これが21世紀に入ったあたりに聴かされたというのは驚きでしかありません。


特に序盤はあまり目立たないクールでダークなトラックが中心で、客演もいないのにしっかりと聴きごたえのある流れになっています。
イントロを経てのM-2「MIC CHECK」なんて、4thシングルで聴いたときにはまあまあいい曲だな、としか思わなかったのに、この流れで聴くとめちゃめちゃカッコいい楽曲に聴こえます。
続くM-3「マチガイナイ!」、M-4「O-RE-BA-NA」もリリックこそオラオラ系俺様リリックですが、DABOのラップとトラックの相性がこの上なく抜群で、ついつい聴いてて首を振りたくなってしまいます。


スキットのM-5「BUNNY TALKS」を経てからのアルバム表題曲のM-6「PLATINUM TONGUE feat. SUIKEN」に行く流れ。
この煽りが非常に効果的で、くだらない喋りから一気に爆発力のある表題曲に行く展開がたまらないですね。
迫力あるトラックの上でのDABOとSUIKENのラップ合戦がかなりカッコいいです。
DABOとSUIKENが2人とも全盛期と言ってもいい頃だったこともあり、一曲として見てもしっかりと聴きごたえのある楽曲になっています。
そこからM-7「HI-LIFE (RELAXXX)」に行く流れもナイスです。
曲名からも予想できる通り、リラックスできるような雰囲気のトラックの上でのDABOのラップの転がしっぷりがとても気持ちいいです。


そして・・ここからはシングルカットされた曲が3曲連続で続くという気が抜けない展開!
3曲とも全くタイプの楽曲ですが、どの曲もDABOのラップの様々な魅力を詰め込んだ内容になっていますよ。
この3曲に関してあえて何も言いません。是非ご自身で聴いて堪能してください。

その次のM-11「徒然草 feat. HUNGER, MACCHO」はアルバム曲にも関わらず、シングル3曲にも全く引けを取らないマイクリレーです。
DABOとHUNGER、MACCHOそれぞれが見事な100点満点の仕事ぶりで、一度聴けば頭に楽しい雰囲気が残ることは間違いなし!

その後の客演なしの3曲も、DABOのスムーズなラップとクールなトラックが楽しめる流れ。本当にこの頃のDABOのフロウは天下一品。そう感じざるを得ないですね。


それからスキットのM-15「JOLLY’S PIANO」を経てからの客演付きの2曲。
客演はCQTWIGYですが、2人ともDABOに負けず劣らずの素晴らしい仕事ぶりを披露。
曲自体も良曲なのは言うまでもなくです。

先行シングルとして切られた「ZERO」のREMIXもDABOらしいですが、最後の〆としてはちょっと弱いかも。


久しぶりに聴いた本作ですが、率直に言って余りの内容の良さにびっくりです。
DABOのリリック自体は俺様俺様が中心で、そこまで中身があるとは言えないですが、そんなことすらマイナス要素になっていないくらい、ラップの聞き心地が異次元。
当時高評価の嵐だったのも、そりゃそうだろうと思ってしまいます。
最も・・DABOは本作以降もコンスタントにアルバムをリリースしていきましたが、リリースするたびにアルバムの評価は下がっていき、ビッグマウスと作品の内容が釣り合わなくなったことによってリスナーから冷めた目で見られていくという未来を知っている身からすると、ちょっと複雑な気分にもなりますが。
とにかくこのDABOの1stアルバムに関しては、絶対に1度は聴いてほしいですね。
今聴いても全く色あせてませんよ!


↓M-10「レクサスグッチ」のPV。
www.youtube.com

Street Dreams / Fabolous

Street Dreams


曲目リスト


1. Intro
2. Not Give a F**
3. Damn
4. Call Me
5. Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo
6. Bad Bitch
7. Why Wouldn't I feat. Paul Cain
8. Up on Things feat. Snoop Dogg
9. Sickalicious feat. Missy Elliott
10. This Is My Party
11. Into You feat. TAMIA
12. Change You or Change Me
13. Respect
14. Forgive Me Father
15. Never Duplicated
16. My Life feat. Mary J. Blige
17. Throw Back
18. Keepin' It Gangsta (Remix) feat. Styles, Jadakiss, M.O.P.
19. Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge
20. Can't Let You Go (Main Remix Original Version)


評価: ★★★★★★★★★☆


アメリカのNY出身のラッパー、Fabolousの2ndアルバム。
2003年3月4日発売。


2001年にリリースした1stアルバムが100万枚以上のセールスでチャート4位に食い込み、ゴールドディスクを獲得するという、新人としては異例の大健闘を果たしたFabolous
2002年からはNELLYAmerie、Big Tymersなどとのパッケージツアーを行い、アメリカ全土を回りつつも、2ndアルバムである本作の制作に取り掛かりました。


本作からはリリース後に3枚のシングルをリリースしましたが、その内の「Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo」(M-5)、「Into You feat. TAMIA」(M-11)はチャートでも上位を獲得し、2003年のHIP HOPシーンの代表曲とも言える存在に。
そんなこともあり本作も凄まじい話題作となり、前作を超える110万枚以上のセールス、チャート3位という快挙を成し遂げました。
2019年現在、Fabolousのアルバムでは最も成功した作品となっています。
見ての通り二枚目なこともあり、アイドルラッパーなどという批判もあったそうですが、セールスで結果を出した以上は彼の勝ちですね。


では、内容に。


Fabolousの特徴はちょっとヘロヘロとしたラップ。
例えて言うなら50 CENTのラップからかなり肉を削ぎ落としてアクも薄めた(和訳を見ると過激な詞はあるものの)という感じです。
好みは間違いなく分かれますね。


トラックは2000年代のHIP HOPサウンドがベースながらも、従来のHIP HOP層にも一般層にも受け入れられそうな、バランスがいい物が多いです。
そのトラックとFabolousのラップの相性も抜群です。

特に前半はそのFabolousとトラックの相性の良さをガツンと見せつけられる楽曲群が多めです。
イントロを経てのM-2「Not Give a F**」からM-4「Call Me」の流れは客演こそいないものの、捨て曲など無しです。
M-2「Not Give a F**」はダークな雰囲気のトラックの上でのFabolousのラップの乗りこなしが癖になります。M-3「Damn」、M-4「Call Me」はお洒落で可愛い雰囲気のトラックとHook、それとFabolousのラップの相性も抜群で、ドライブのBGMには持ってこいなこと間違いなしですね。

シングルとして切られた2曲のM-5「Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo」、M-11「Into You feat. TAMIA」は、これはもうラッパーがFabolousでなかったら作れなかっただろうな、と思ってしまいます。それくらいFabolousとシンガー陣、そしてトラックとのハマり具合がすごいです。
確かにこれはヒットするのも必然だったと言っていいのでは!


中盤では比較的攻撃的な雰囲気の楽曲が多いですが、シングルとして切られたM-10「This Is My Party」を初めとして、ここでもFabolousのトラックへのアプローチが絶好調。
特にM-7「Why Wouldn't I feat. Paul Cain」~M-9「Sickalicious feat. Missy Elliott」までの流れはFabolousと客演メンバーとのマイク合戦が楽しめる、アルバムの中でもすごく聴きごたえのある展開です。一曲単位で見ても素晴らしいのは言うまでもなく。


M-12「Change You or Change Me」からは比較的ハードなトラックが多めです。
前半や中盤と比べるとタイトなラップが聴けます。
それでもHIP HOPが苦手な人でも聴けそうな雰囲気。
Hookも比較的強調されているのも聴きやすいポイントですね。
80年代や90年代のHIP HOPにこだわりが強い人は不快に感じるかもしれませんが、個人的にはノリやすくていいと感じましたね。
個人的にはM-16「My Life feat. Mary J. Blige」が後半のハイライト。
FabolousのラップとMary Jの歌いこなしがとても素敵で、シングルカットされた3曲にも何ら引けを取っていません。


M-17「Throw Back」からM-19「Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge」は本作のボーナストラック。
ボーナストラックなんて侮ってはいけません。
熱いマイクリレーが楽しめる1stアルバム収録曲のRemixのM-18「Keepin' It Gangsta (Remix) feat. Styles, Jadakiss, M.O.P.」、ボーカル使いがとてつもなく上手いM-19「Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge」なんて普通に名曲と言っていいレベルです。
M-20「Can't Let You Go (Main Remix Original Version)」は国内版限定のボーナストラックで、M-5「Can't Let You Go」のバージョン違い(Remixではありません)。
かなりハードな内容になっていて、これはこれで悪くはありませんが、個人的にはシングルで切られたバージョンの方がずっと好きですね。


最近では細々とした活動になり、「一発屋」「ミーハーに受けただけ」などという声もHIP HOPファンから挙がることもあるFabolous
しかし2ndアルバムである本作。久しぶりに聴いてみたら予想以上の内容の良さで、何度も聴き返してしまいました。
流石にFabolousの歴代アルバムでの最高セールス獲得は伊達ではありませんね。
HIP HOPをこれから聴いてみる人には最適なことは言うまでもありませんが、熱心なHIP HOPファンも久しぶりに聴き返してみては。
本当に傑作なので、興味のある方はどうぞ!


↓M-10「This Is My Party」のPV。
www.youtube.com

PROJECT TOKYO Mixed by DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH! / 妄走族

PROJECT TOKYO MIXED BY DJ NOBU A.K.A. BOMBRUSH!


曲目リスト


1. PROJECT TOKYO / 妄走族 feat. ZEUS, RAW-T, YOUNG FREEZ, SIMON JAP, 輪入道 & 十影
2. Ready to Fight / バラガキ, ZEUS & Zeebra
3. ONE / K5R
4. NOW -今の時間- / ZORRO feat. DEN
5. 熱くてテキトー / 妄走族
6. BACK IN THE DAY / 妄走族
7. STAY GOLD / MASARU feat. DEN
8. SOUND MISSION / ZORRO feat. K5R
9. 野良犬 INTRO / KENTA5RAS
10. RESURRECTION / DEN feat. ANI, 宇多丸
11. Gossip Girl / 十影 feat. LADY CAT, AYA a.k.a PANDA
12. フェラ Pe チーノ / KENTA5RAS feat. DEN
13. Run of the City / ZEUS & BRGK
14. GUERILLA / 妄走族
15. LOVELETTER [Chorus : 亜矢(房州達磨)] / 神
16. 世界はお前が大ッ嫌い / 般若
17. Tokyo / COGA feat. 神 & DEN
18. ヴァンガード 96' / 妄走族 feat. 十影
19. 最ッ低のMC / 般若
20. トビラ / 般若 & Anarchy
21. 積み木崩し / 妄走族 feat. RAW-T, SIMON JAP, G.O, CAZINO, スナフキン
22. 日本語ラップ is DEAD !? / JBM, D.O, VIKN, SIMON, DEN & MISSIE
23. PRIDE / 妄走族
24. ワルイ奴等HANDS UP / 妄走族
25. 叩き上げ / 輪入道
26. BEDTOWN / スナフキン
27. Take me higher / YOUNG FREEZ
28. 世にも奇妙なこの世界 / 和み & ROOZ
29. 大日本平和党 / 神 feat. 般若, ZAPPY SOUL
30. RECKLESS / CAZINO feat. MURDAH BABY
31. Yatta / YUKI a.k.a. JUTO
32. お金部隊 / RAW-T & G.O
33. TOKYO BOY / SIMON JAP feat. Zeebra


評価: ★★★★★★★☆☆☆


東京三軒茶屋で結成されたラップグループ、妄走族のMixアルバム。
2014年5月28日発売。


90年代後半から活動を開始し、2000年からコンスタントにアナログやアルバムをリリースしてきた妄走族
2004年からはグループ中心だった方向を転換し、2004年には般若。2005年には神、MASARU、KENTA5RAS(現K5R)、565(現G-MAN)。2006年にはDEN、ZORRO。2007年には剣桃太郎がソロの1stアルバムをリリース。
それぞれのソロ活動に力を入れるようになりました。


それぞれがソロ活動を本格化してからはより一層メンバー間で違う道を歩むことになります。
般若、DEN、神はソロ活動を続けながらも音楽レーベルを設立。
ZORROはアメリカのNYに修行の旅へ。
KENTA5RASは麻薬関係で逮捕され、監獄生活。
MASARU、剣桃太郎、565は地道にライブ出演や、他のラッパーたちの作品の客演参加、裏方活動などを重ねていきました。


ソロ活動後最も飛躍した般若を初めとして、シーンでも立ち位置を確保していた妄走族メンバーたちでしたが、妄走族としての音源リリースは、2004年の4thアルバムからされることはありませんでした。
それぞれのソロ作品やユニット作品に客演で参加するなど、メンバー同士の絆と見えるものは確認できるものの、上にも書いたように進んだ道がバラバラであったため、

「もう妄走族で集まることなんてないんだろうなあ」

というのリスナーの間で共通認識となり、「妄走族」という名前だけが漠然としてシーンに残っている。
そんな状態が長い間続きました。


ところが活動休止状態から9年経った2013年の冬、妄走族のグループとしての再始動が告知されました。
恐らくリスナーの9割以上は「もう再始動ないだろ」と思っていたであろうグループの再始動の告知。
シーンに多大なる衝撃を与えたことは言うまでもありません。


まずは9年ぶりでの妄走族名義の新曲「塗りつぶせ」をフリーダウンロードで配信。
その後は2014年1月に「走 -RUN-」、2月に「PRIDE」(M-23)、4月に「PROJECT TOKYO」(M-1)をネット上で配信していきます。
再始動前の妄走族が行っていたイベント「核MIX」も復活。


そして、5月にとうとうCD音源として本作をリリース。
妄走族メンバーたちのソロ音源、妄走族名義での新曲、メンバーたちがフックアップを測る若手MCたちの楽曲などをDJ NOBUがMIXしたMIXアルバムです。

復活の挨拶代わりとも言える1枚ですね。


では、内容に。


曲目リストを見ると分かりますが、妄走族の音源だけでなく、妄走族の影響を受けた若手の楽曲も多く収録されています。
妄走族名義の過去の楽曲はわずか3曲のみ。
なので、過去の妄走族が好きで、その雰囲気を楽しもうというのは捨てた方がいいです。確実に裏切られます。
妄走族メンバーがラップで参加していない楽曲も多いため(というかメンバーがラップしている曲はM-29「日本平和党」で最後)、正直妄走族の作品!という感じは余りしません。
妄走族主導のコンピレーションMIXアルバム、と言った方が内容的には正確ですね。
なので妄走族としては本当に挨拶代わり、と思った方がいいです。


ただMIXアルバムとしての出来が良くないか!と言われたら決してそんなことはありませんよ!
かなり嬉しいポイントもゴロゴロとあります。


まず、本作で収録されている妄走族の過去音源は3曲なのですが、この3曲は3曲とも妄走族の2ndシングル「GUERILLA」に収録された楽曲です。
M-14「GUERILLA」は4thアルバムに収録されていましたが、他の2曲は長らくそのシングルでしか聴けなかったので、これは有り難い収録です。
M-6「BACK IN THE DAY」、M-24「ワルイ奴等HANDS UP」がその2曲なのですが、DJ NOBUのMIXが上手いこともあり、どちらも中々のカッコ良さです。
最もどちらもフルでは収録されていないので、フルが聴きたい場合はシングルの入手ですね。

メンバーのソロ曲やコラボ曲も聴きごたえがあるものが多いです。特にいいものを挙げると、
まずM-10「RESURRECTION」。こちらはDEN、ANI(スチャダラパー)、宇多丸(RHYMESTER)という異色な3人のマイクリレー。3人とも個性が強く発揮されていてすごく聴きごたえもありますし、Hookもカッコいい。
MASARUによる前向きなリリックが光るM-7「STAY GOLD」、KENTAの歌がすごく心地よいM-12「フェラ Pe チーノ」も好きですね。

般若のソロ曲であるM-16「世界はお前が大ッ嫌い」、M-19「最ッ低のMC」は流石の般若のリリシスト振りが光ってます。1バースとHookのみの収録なのに、それだけでも格の違いを見せつける力量は流石ですね。Anarchyとのコラボ曲のM-20「トビラ」でもAnarchyと共にリリシスト振りを発揮してます。


妄走族の楽曲は入手困難なコンピ収録曲であるM-5「熱くてテキトー」、新曲のM-23「PRIDE」は名曲と言っていい域。前者は般若と神とDEN、後者は般若と神とZORRO、K5Rによるマイクリレー(K5RはHookのみですが)。とにかく全員が熱い。熱すぎます。
活動休止前にあった彼らの特色である勢いと、活動再開後のリリックの奥深さが同居した凄まじい楽曲になっています。
同じく十影を客演に迎えた新曲であるM-18「ヴァンガード 96'」はそんな好きな曲というわけではないですが、この曲のMASARUのラップはキレキレでカッコいいです。メンバーの中でもソロ活動で真摯にHIP HOPに向き合っていた成果が存分に発揮されています!


妄走族が参加してない楽曲では、十影によるM-11「Gossip Girl」が耳を惹きましたね。
この曲の十影のラップは純粋に聴いてて面白いです。


と、とてもいい楽曲が多く、楽しめるMIXアルバムであるのは間違いないのです。
ただ苦言を言うとすれば、妄走族メンバーが参加していない楽曲でいいと思える楽曲はそんなにありませんでした。
新曲のM-1PROJECT TOKYO」、M-21「積み木崩し」もそうなんですが、正直全体的に詰め込みすぎで訳が分からなくなっています。
「若手のフックアップをしたい!」というのはベテランラッパーの志としては立派ですし、絶賛する姿勢ではありますが、それなら「妄走族メンバーがお勧めするラッパーたちのコンピレーション!」みたいな形で別にコンピレーションアルバム作った方が良かったんじゃないですかね。


それでも十分に楽しめる一枚ではあるので、興味のある方はあくまで妄走族の挨拶代わりという認識でチェックをどうぞ!


↓M-18「ヴァンガード 96'」のPV。
www.youtube.com

GRATEFUL / DJ KHALED

グレイトフル


曲目リスト


Disc 1


1. (Intro) I'm so Grateful - feat. Sizzla
2. Shining feat. Beyoncé & JAY Z
3. Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller
4. I'm the One feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne
5. On Everything feat. Travis Scott, Rick Ross & Big Sean
6. It's Secured feat. Nas & Travis Scott
7. Interlude (Hallelujah) feat. Betty Wright
8. Nobody feat. Alicia Keys & Nicki Minaj
9. I Love You so Much feat. Chance the Rapper
10. Don't Quit / DJ Khaled & Calvin Harris feat. Travis Scott & Jeremih


Disc 2


1. I Can't Even Lie feat. Future & Nicki Minaj
2. Down for Life feat. PARTYNEXTDOOR, Future, Travis Scott, Rick Ross & Kodak Black
3. Major Bag Alert feat. Migos
4. Good Man feat. Pusha T & Jadakiss
5. Billy Ocean feat. Fat Joe & Raekwon
6. Pull a Caper feat. Kodak Black, Gucci Mane & Rick Ross
7. That Range Rover Came With Steps feat. Future & Yo Gotti
8. Iced Out My Arms feat. Future, Migos, 21 Savage & T.I.
9. Whatever feat. Future, Young Thug, Rick Ross & 2 Chainz
10. Interlude feat. Belly
11. Unchanging Love feat. Mavado
12. Asahd Talk (Thank You Asahd) / Asahd Khaled
13. Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (Medasin Dance Remix)
14. Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (NOTD Dance Remix)


評価: ★★★★★★★☆☆☆


アメリカのフロリダ州マイアミ出身のDJ、DJ KHALEDの10thアルバム。
2017年6月23日発売。


90年代から活動し、2006年にデビューを果たした後に、コンスタントにアルバムをリリースしていったDJ KHALED。

通算9枚目のアルバムである前作が、グローバルで販売されたこともあり、USチャート1位を獲得し、ゴールドディスク認定。
様々な国で名前を大きく広げることになります。
その後も話題に事欠かず。
グラミー賞ノミネートや、ジョーダンとのコラボスニーカーの販売などなど。


ですが、何といっても一番の出来事は彼の第一子、Asahdの誕生です。(ジャケの左)
インスタを初めとするメディアで、KHALEDは常にAsahdに対する感謝や愛情を発信していました。
そんな彼が自分のアルバムを作る上で息子が無関係であるはずでなく・・・。
なんと本作のエグゼクティブプロデューサーにクレジットされているのはAsahd。
まだ当時は生後1年経っていなかったAsahdがメガホンを握った(勿論形式上だとは思いますが)アルバムとなったのです。

参加した制作陣はなんと40組以上!
客演を見ても分かる通り、非常に豪華な人選です。


ともあれ、アルバムを出した以上は内容勝負。
では内容に。


タイトルの「GRATEFUL」は直訳すると「感謝」です。
内容は確かにKHALEDからAsahdに対する感謝のメッセージが所々に確認できます。
ただ、それは国内版のRemixを除く22曲のうち数曲(しかもinterludeなど)に留まり、基本的にはDJにはよくあるHIP HOPのお祭りアルバムとなっています。


Disc1はクラブ向けの楽曲が中心となった内容。
KHALEDとSizzlaによる感謝の気持ちを告げるイントロを経て、シングルで切られた3曲が立て続けに続きます。
3曲とも人気曲ですが、個人的にはM-3「Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller」が一番です。
ラップと歌両方でナイスパフォーマンスを披露するRihannaと、スムーズにラップを乗せていくBryson Tillerの相性がバッチリですね。詞の内容はちょっと刺激的とはいえ。のんびりした雰囲気のトラックの豪華メンバーによるマイクリレー、M-4「I'm the One feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne」もDisc 1の中では耳を惹きますね。


シングル曲3曲が続いた後は、いよいよアルバム曲の開始。
ただ、どうもラッパーとトラックの相性が微妙な感じがする曲が続きます。
豪華なメンバーではあるんですけど、曲としては光るものがあまり。

和訳を見るとM-5「On Everything feat. Travis Scott, Rick Ross & Big Sean」のRick Rossがトランプ大統領をDISしていたり、M-6「It's Secured feat. Nas & Travis Scott」ではNasが相変わらずのリリシストぶりを発揮していたりと、和訳では楽しめるところがちょこちょこありますけどね。


Disc 1の最後を締めくくるM-10「Don't Quit」がDisc 1のアルバム曲では飛び抜けて一番の出来です。
リリックの内容はスケベなので、好みは分かれるかもしれませんが、Calvin Harrisがプロデュースを努めたトラックはDisc 1では一番HIP HOPらしいトラックで、単純に聴いていて楽しいですし、その上に乗っかるTravis Scottの歌、Jeremihのラップも絶好調で聴きごたえがあります。
この曲をDisc 1の最後にしたのは正解でしたね。


Disc 2は比較的ハードな内容になっています。

初っぱなからM-1I Can't Even Lie feat. Future & Nicki Minaj」、M-2「Down for Life feat. PARTYNEXTDOOR, Future, Travis Scott, Rick Ross & Kodak Black」と豪華なメンバーが続きます。前者は最初にしてはちょっと雰囲気が暗い印象を受けます。
後者はマイクリレーものですが、シンガー陣によるHookがなかなか強烈で、ラッパー陣がちょっと霞むくらいです。


序盤で光るのはその次のM-3「Major Bag Alert feat. Migos」。
Migosのメンバーのいい仕事ぶりが、特にHookで発揮されています。
ダークながら耳を惹くトラックもかなり好みです。(続くM-4「Good Man feat. Pusha T & Jadakiss」がイマイチでつまづきましたが)


さて中盤へ。

M-5「Billy Ocean feat. Fat Joe & Raekwon」は、シンプルなトラックの上でベテラン2人が硬派なラップを乗せる、本作では数少ない「ラップを全面的に魅せている」曲です。
というかHookが歌じゃないのってこの曲くらいでは?とにかくこの曲はトラックもラップも両方グッドワーク。
90年代のHIP HOPが好きな方にも自信を持ってオススメします。

M-6「Pull a Caper feat. Kodak Black, Gucci Mane & Rick Ross」も、ラップもHookの歌も耳を惹く佳曲。


そこから後半に入っていいと思えたのは、Mavadoの一人舞台であるM-11「Unchanging Love feat. Mavado」。
感謝の気持ちをしっかりと爽やかに歌い上げるMavadoの歌がバッチリですね。
本作の中でも異色ではありますが、最後辺りで底力を見せてくれましたね!

最後に忘れてはいけないのは、国内版のボーナストラックであるM-13「Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (Medasin Dance Remix)」、M-14「Wild Thoughts feat. Rihanna & Bryson Tiller (NOTD Dance Remix)」。

後者は良くも悪くもな出来ですが、前者は正直言って原曲より好きです。
原曲に比べて明るい雰囲気なRemixになっていて、ドライブなどには持ってこいな1曲になっています。
このRemixが聴けるだけでも国内版を買う価値あり!


全体を通して見ると、客演は非常に豪華であるものの、曲としては良し悪しが出ています。
いくらなんでも詰め込みすぎて訳が分からなくなっている印象もありますね。
良くも悪くもコンピレーションアルバムを聴いている感じです。


ただこれだけバラエティに富んでいるので、何曲かは必ずお気に入りの楽曲ができるかと。
その曲を使ってリスナーがそれぞれ1枚のCDに焼けば名盤に化ける可能性を秘めた作品でもあります。

その何曲かのお気に入りの楽曲を作るだけという目的でも聴く価値はあると思います。
そこまで強くお勧めはしませんが、興味のある方はチェックをどうぞ。


↓Disc 1のM-5「On Everything feat. Travis Scott, Rick Ross & Big Sean」のPV。
www.youtube.com

↓Disc 2のM-6「Pull a Caper feat. Kodak Black, Gucci Mane & Rick Ross」のPV。
www.youtube.com

BAYSIDE RIDAZ / DS455

BAYSIDE RIDAZ


曲目リスト


1. THA GATE OF LOCOHAMA ~INTRO~
2. D.P.G. RECORDS feat. Daz Dillinger For THA DOGG POUND
3. BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO
4. 僕の中の少年 ~遠い記憶IV~
5. Tha Message from WCC & G PRIDE
6. えぐる挽歌 feat. GANXSTA DX
7. D`s Nutz FM
8. ~INTERLUDE~ 夕(ゆう) Part 1.
9. SMOKE IN THA MARMALADE feat. CORN HEAD
10. Smoked Conversation ~OUTRO~


評価: ★★★★★★★★☆☆


神奈川県横浜のラップグループ、DS455の1stアルバム。
2000年7月27日発売。


DS455は1989年にMCのKayzabroとSHALLAで結成されたラップグループ。
元々はKayzabroが地元の友人たちと組んだグループが原型とのこと。
その後にMACCHO、DJ PMXが加入し、有名になってからのDSに近くなっていきます。
(MACCHOはすぐ脱退してしまいましたが)


しかしながら、しばらくの間はそれぞれのメンバーが裏方仕事に徹しており、グループとしての音楽活動はほとんどなく、みんなで集まってHIP HOP話に華を咲かせたり、お酒をのみながらラップをしたり、サークルに近かったようです。

最初こそ、そこら辺にいるラッパーの集団とそんな違いはなかったDSですが、N.W.Aを筆頭とする西海岸HIP HOPが日本にも入ってきてから少しずつ他のラッパー集団とは違う道を進んでいきます。
1992年にDr. Dreの1stアルバムがリリースされ、その魅力にどっぷりとハマってしまったメンバー達は、西海岸サウンド日本語ラップを!という試みを開始。

しかし、残念ながら当時のリスナーの心をつかんだのは専ら東海岸サウンド
レコーディングをすることすら難しい状況で、長らく活動の場に恵まれませんでした。
表舞台には出てこないものの、アメリカのラッパーやレーベルと交流を持つなど、細々と、しかしながら着実に名前を広げていきます。


そして結成から苦節11年、とうとう1stアルバムである本作をリリース。
彼らの11年間の成果がここにあります。


では、内容に。


DS455の特徴はこれでもかというくらいの、「アメリカの西海岸HIP HOP」の再現。
DJ PMXのトラックは、まさしくアメリカの西海岸HIP HOPのそれであり、独特な爽やかさと聴きやすさを持っているため、アメリカのHIP HOPを聴かない方でも抵抗なく入り込めるのでは。


M-1THA GATE OF LOCOHAMA ~INTRO~」は不穏な雰囲気のイントロ、M-2「D.P.G. RECORDS feat. Daz Dillinger For THA DOGG POUND」はアメリカからDaz Dillinger(!)のコールのスキット。
スキットやインストが2曲続くと、くどくなったりしがちですが、これが割りとすんなりと耳に入ってくる構成。
そしてその後のM-3「BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO」がやっとのラップ入りの楽曲になります。
2曲連続で焦らした後に控える楽曲だけあって、すごくかっこいいです。
DSのオリジナルメンバーが勢揃いしたマイクリレーで、SHALLA、Kayzabro、MACCHOの3人ともキレキレのラップ合戦を見せてくれます。


そしてそんな熱いマイクリレーの後にM-4「僕の中の少年 ~遠い記憶IV~」へ続きます。
攻撃的なM-3「BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO」とは裏腹に、情緒漂うトラックの上でSHALLAとKayzabroの両者が素敵なリリックを乗せる、言葉の面でも音楽の面でも極上な一曲。
序盤の二曲でこれだけの二面性を出してくるのはすごいですね。


仲間たちからのコールのスキットを挟み、M-6「えぐる挽歌 feat. GANXSTA DX」。
これは思い切りなギャングスタチューンで、個人的にはこの曲がアルバムベスト。
爽やかながらも危機感のあるトラックの上で危険なラップを乗せる3人が熱すぎます。
特にGANXSTA DXのアメリカのギャングスタラッパーのリリックをそのまま輸入したかのような、ギャングギャングな言葉さばきは聴いているだけで臨場感があります。


後半に入ると、MAYによるスキットのM-8「~INTERLUDE~ 夕(ゆう) Part 1.」。
このスキットが何気に好きな一曲です。
PMXのトラックとMAYの歌声が見事にマッチしていて、スキットにしてはもったいないくらいの良曲になっています。
(前後の2曲は、悪くはないですがちょっとKayzabroが目立っていないように感じます。SHALLAとCORN HEADが目立ってますね。)


そしてそして、クレジットこそされていないものの、M-10のアウトロの後にはボーナストラックとして「BAYSIDE RIDAZ」のRemixが収録されています。
原曲の爽やかな雰囲気とは違って、かなり攻撃的な雰囲気のトラックになっています。Hookも別物。
原曲に全く負けていないRemixで、聴きごたえは十分すぎるくらいあります。
最後にいいのぶちこんでくれたなあ!と思える流れです。


全体を通して本当にサラッと聴ける爽やかさと、聴きごたえを見事に両立した快作アルバムになっています。

結成から11年経ってやっと出された1枚だけに、納得のいく内容ですね!


そしてこのアルバムリリースを機に、日本語ラップシーンに新しい風が吹き込んでいく・・・胸が熱くなる展開を作った1枚でもあります。
アメリカの猿真似?そんなことは聴いてから判断をお願いしますよ。

興味のある方はご一聴を!


↓M-3「BAYSIDE RIDAZ feat. MACCHO」。
www.youtube.com