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Ideologie / ET-KING

Ideologie (初回限定盤)


曲目リスト


1. 三日後
2. とてもすきなこと
3. Headphone
4. be-bop
5. ナニコレ feat.千秋, 千賀太郎
6. ぜに あほ ほんでまるもうけ
7. 誰にも邪魔されないってこと
8. LOCO OSAKA
9. まんまんちゃん feat.coco
10. チギレ feat.デリカテッセン
11. september
12. 北新地
13. 今日を楽しく
14. 喝采
15. ひぐらしのなく頃に feat.千賀太郎


評価: ★★★★★★★★★☆


大阪のラップグループ、ET-KINGの6thアルバム。
2016年2月24日発売。


2014年にベストアルバムのリリースと15周年のツアーをもって活動を休止したET-KING。
その活動休止中にメンバーの一人である、TENNの急逝(享年35)という悲しい出来事を経験しながらも、メンバーはそれぞれの活動を続けていき、2015年にET-KINGとして活動を再開することを発表。
TENNの追悼イベントの開催や、自分たちのスタジオやレーベル「MATOI RECORDS」の設立、活動再開後初のシングル「喝采」(M-14のリリースなど、ET-KINGとしての復活の狼煙をあげました。


2016年2月に、この活動再開後初のアルバムとなる本作をリリース。

この2年後にTENNに続いて、リーダーであるいときんが亡くなるため、この6人としてのアルバムは本作と7thアルバムのみとなっています。


では、内容に。


TENNがいなくなり6人体制になったET-KING。
そんな彼らの再出発の第一弾アルバムのコンセプトは「アナログHIP HOP」。

そのようなコンセプトになった理由は大きく分けて2つ。


1つは、「色々なジャンルの集合体だね」と声が上がることが多く、自分たちでもそれを自覚していたET-KINGですが、ET-KINGから敢えて離れ、それぞれで音楽活動やイベントへの参加、お店の経営など、色々な経験を積んでいく内に、やはり自分たちの音楽の根底にあったのは「HIP HOP」だということを再認識することになります。
それに対して、再出発1発目はそれに忠実に作ってみようという思いが強くなったこと。

もう1つは、亡くなったTENNへの思いや、TENN自身の意思をしっかりと伝える一枚にしたかったこと。
それでTENNがHIP HOPが大好きな方であったため、その思いを残された自分たちで形にしようと考えたのです。


そのような彼らの思いをたっぷりとこめて作られた作品なだけあって、かなり聴きごたえのある作品になっています。


初っぱなのM-1三日後」~M-3「Headphone」の流れは、彼らの音楽に対する真摯な思いが伝わってくる流れになっています。

アルバムのスタートを切るM-1三日後」は、TENNがいときんたちと最初で最後に交わした約束を元に制作した楽曲とのこと。
一聴した時には地味に感じるかもしれない和風なトラックの上での、スクラッチ音と5MCのラップが聴けば聴くほど魅力的に映ってしまう楽曲に仕上がっています。
この曲が先頭にあるおかげで、何度も聴きたくなるアルバムになること請け合いです。

続くM-2「とてもすきなこと」もスクラッチから始まるイントロから聴きごたえを感じる一曲で、彼らのHIP HOPに対する愛が伝わる内容のリリックに耳を傾けてください。

M-3「Headphone」はしっかりとしたHIP HOPなトラックになっているものの、色々な音をおかずのように散りばめているのがかなり聴いていて楽しい感じになっています。
そこに乗っかるMC5人のラップも聴きごたえ抜群なのは言うまでもなく。


ちょっと堅い雰囲気の曲が3曲続いたところで、M-4「be-bop」。
この楽曲も詞の内容はまじめなものの、トラックがかなりノリノリで、聴いていて身体を動かしたくなること間違いなし。

そして一気に馬鹿馬鹿しさ全快の世界に持っていくのが100%パーティーチューンのM-5「ナニコレ feat.千秋, 千賀太郎」。

この曲ではなんと・・あのドラミちゃんの声でお馴染みの千秋がラップを披露しているのです。
全然ちゃんとラップできてますし、曲中でもかなりいいアクセントになっています。
バックではMONSTER大陸の千賀太郎氏のハーモニカもパーティーな雰囲気を援護射撃。
いい意味でかなりむちゃくちゃな1曲。


次の曲から2曲(M-6「ぜに あほ ほんでまるもうけ」、M-7「誰にも邪魔されないってこと」)はまた落ち着いた雰囲気に戻ります。
リリックの内容はどちらも真面目で落ち着いた雰囲気にはハマっています。
ちなみに後者はTENNがいた頃に制作されたため、TENNのラップもしっかりと収録されています。


そして控えるのが間違いなく本作のハイライトで、先行配信されたM-8「LOCO OSAKA」!
彼らの地元である大阪賛歌で、一度聴いたらやみつきになるトラックの上にのるメンバーのラップはかなり気合いが入っています。
この曲もTENNのラップが収録されており、TENNも活躍ぶりをみせています。
先行配信されただけはありますね。


続く2曲はどちらも客演を迎えたパーティーチューン。
M-9「まんまんちゃん feat. coco」は関西の人にはお馴染み(らしい?)の言葉をネタにしたチューンで、cocoのHookとET-KINGのラップが全体的に楽しい楽曲。
M-10「チギレ feat. デリカテッセン」は見ての通り日本語ラップファンなら知らない人がいないであろうデリカテッセンが参加!
ET-KINGとデリカテッセンの楽しすぎるラップの掛け合いは要チェックです。


M-11「september」はかなり風流な雰囲気のインストで、アルバム全体としてもかなりいい箸休めになっています。
そこからまたしても地元賛歌であるM-12「北新地」に行くのもいい流れです。


そこからM-13「今日を楽しく」~M-15「ひぐらしのなく頃に feat. 千賀太郎」までは人間賛歌、応援歌という流れで、彼らだからこそ書ける暖かいリリックが満載。


3曲とも無論聴きごたえのある良曲ですが、イチオシは本作の最後を締めるM-15「ひぐらしのなく頃に feat. 千賀太郎」。

M-5「ナニコレ feat.千秋, 千賀太郎」ではハーモニカでパーティーな雰囲気を後押ししていた千賀太郎氏ですが、この曲では同じハーモニカでも全く違う雰囲気を後押ししています。

そしてトラックに乗っかるET-KINGの暖かいリリック。
もうこれがすごい化学反応を起こしていて、かなりいい後味でアルバムを聴き終えられます。


この記事ではこの曲のPVを貼っておきますが、PVで1曲だけ聴くのと、このアルバムの最後の〆として聴くのでは本当に魅力が何倍も何十倍も段違いなので、是非本作でその魅力を体感してください。


とりあえず聴きとおして言えるのは、ET-KINGは活動休止前と比べると段違いに成長したことです。
(TENNも含めて!)MCたちの言葉選びもかなりグッと来る言葉の割合が多いですし、滑舌も良いため、そのグッと来る詞もすっと耳に入り込んできます。
ET-KINGはリスナーからは批判の的になることも多いグループですが、そんな批判をぶつけていたリスナーにも是非本作は聴いていただきたいです。間違いなく彼らを見直すはずです。


昨年リリースされた7thアルバムも傑作中の傑作と言える内容でしたが、前作にあたる本作もまさかこんなにいいアルバムだったとは。

是非とも一人でも多くの方に聴いていただきたい一枚です。
見かけたら是非ご一聴を!


↓M-15「ひぐらしのなく頃に feat. 千賀太郎」のPV。
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