りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

Hoy, Ayer And Forever / Akwid

Hoy, Ayer and Forever [Explicit]


曲目リスト


1. Se Habla Espanol
2. West Coast Corrido feat. Seven & Murieta
3. Siempre feat. Rain
4. Confesando Un Sentimiento feat. Seven
5. Ya Estuvo feat. Dyablo
6. Ver Los Mismo feat. Big Capone
7. Falso feat. Lil Bandit, Silencer, Seven
8. No Te Metas feat. Mr.Sancho, Silencer, OG Playboy, Royal T
9. Presumido feat. Mr.Sancho, Seven
10. Gran Ruido feat. OG Playboy
11. El Catrin
12. Tercera Persona
13. Anoche feat. Mr.Sancho, Silencer, OG Playboy, Royal T


評価: ★★★★★★★★☆☆


メキシコで結成されたラップグループ、Akwidのコンパイルアルバム。
2004年3月9日発売。


2003年にリリースした2ndアルバムがダブルプラチナムを獲得したAkwid。
スパニッシュラップのキングとしての名前も獲得するという快挙になりました。

本作はそんなAkwidの2004年にリリースした新曲と既発曲のremixで構成されたコンパイルアルバムです。


さて、内容に。


Akwidの特徴はFranciscoとSergioの息の合った掛け合いラップ。
ガラガラ声のラップとオーソドックスな安定感あるラップという組み合わせですが、(どっちがどっちなのかはわからないので、わかる方コメントお願いします)血のつながった兄弟というだけあってお互いの引き立て方を知っているのが音源からよく伝わります。
ちなみに本作はRemixも多いのですが、Akwidの作品は本作が初めてなので原曲と比較してのコメントはできないのはご容赦を。


M-1Se Habla Espanol」はピアノとガッツリした声が印象的で1分ちょっとのイントロ的な役割ですが初っ端から掴みはガッチリ。

M-2「West Coast Corrido」はパフパフした音使いの陽気なトラックですが、その上に乗っかるラップがザラザラした耳障りで相性は抜群。
陽気なホーンの使い方が中毒性が凄くて何回か聴き返したくなりますね。


M-3「Siempre feat. Rain」はそれまでの男臭い雰囲気から一転、Rainの歌で楽曲はスタート。
Akwidのラップも気合が入っていますがRainの芯の太い歌がHookで華を添え、アルバム全体でもいいアクセントになっています。

M-4「Confesando Un Sentimiento feat. Seven」はちょっと民族的なトラックの上でのラップ合戦。
ラップはゴリゴリしてるんですがトークボックスのHookがいい感じの箸休めになっていて曲の作りの上手さを実感します。

M-5「Ya Estuvo feat. Dyablo」は曲を聴いた感じだとDyabloの独り舞台っぽいです。ホーンが利いた陽気なトラックの上でDyabloが最後まで飽きの来ないラップを聴かせてくれます。


続くM-6「Ver Los Mismo feat. Big Capone」はAkwidの2人がゴキゲンなラップを乗せる横で冷静なラップを乗せるBig Caponeがいいアクセント。
M-7「Falso feat. Lil Bandit, Silencer, Seven」は計4組のマイクリレーで、トラックは他の曲に比べると落ち着いていますがその分ラップの方をガッチリ堪能できます。
全員キレキレの仕事ぶりなのは言うまでもなく。
M-8「No Te Metas feat. Mr.Sancho, Silencer, OG Playboy, Royal T」も同じくマイクリレーものですが、こちらはちょっとトラックの主張も強めでどちらもタイプが違っているのが流石。

そこから続くコラボもののM-9「Presumido feat. Mr.Sancho, Seven」、M-10「Gran Ruido feat. OG Playboy」もどちらも流石の相性の良さを披露。
邪魔な要素が一つもなく全員いい働きをしてます。


M-11「El Catrin」、M-12「Tercera Persona」は客演なしのAkwidの2人舞台楽曲。
前者はちょっとヘンテコなトラックでラップを乗せにくそうなのですがその上でしっかり健闘する2人の力量を感じられます。
後者はHookのスクラッチの入り方が特徴的で耳に残りますね。

最後を〆るM-13「Anoche feat. Mr.Sancho, Silencer, OG Playboy, Royal T」は疾走感があるトラックの上でのマイクリレーもの。
本作の中でも随一のスピード感の良さで、全員のラップも文句なしの仕事なので満足感を持って聴き終えることができますね。


Akwidの作品は本作が初めてだったのですが、スパニッシュラップのキングと言われるだけあって全体的に聴きごたえのある作品でした。
客演も一切無駄がなくAkwidのラップにマッチした方々ばかりで、トラックとの相性も文句なし。
名曲と呼べる曲こそないものの、最初から最後まできっちりした良曲が並んで飽きない内容です。
見かけたら是非どうぞ。


↓M-9「Presumido feat. Mr. Sancho, Seven」。
www.youtube.com

家族歌集 / ET-KING

家族歌集


曲目リスト


1. mother
2. きみとの日曜日
3. うまい!お弁当
4. はんぶんこ
5. さんぽ
6. せんたくのうた
7. おすしはまわる
8. おじいちゃんとおばあちゃんの結婚式
9. 帰り道
10. 星


評価: ★★★★★★★☆☆☆


皆さん、お久しぶりです。1か月ほどはてなを放置してしまいました。
実は先月の後半に同居していた家族に不幸がありまして。
今月に入ってからお通夜、告別式とダーッと駆け抜けるように進み・・・最近になってやっと気持ちが落ち着いてきました。
というわけでこちらのブログも段々と再開を。
再開1発目はやはり家族絡みの作品で。


大阪府大国町を拠点とするラップグループ、ET-KINGのコンセプトアルバム。
2012年5月23日発売。


デビューを果たした2006年からコンスタントにアルバム、シングルをリリースしてきたET-KING。
2010年からオリジナルアルバムに加えてコンセプトアルバムをリリースするという試みを開始し、そのコンセプトアルバムの第3弾となったのが本作です。
テーマはアルバム名の通り「家族」で、家族に関する楽曲を収録したアルバムです。
既発曲4曲に提供楽曲のセルフカバー1曲、カバー楽曲1曲、新曲4曲の計10曲で構成されています。


では、内容に。


ET-KINGの特徴は馴染みやすいトラックと分かりやすいリリックですが、本作でもそれは変わらず。
むしろ「家族」という明確なテーマを持って制作されたということもあって、リリックの分かりやすさは際立っている印象を受けます。


同年の4月に発売された15thシングルの表題曲のM-1mother」でアルバムは幕開け。
曲名からは母親に対する感謝ソングを連想しそうですが実際には母親視点で子どもに対するメッセージソング。
長友佑都選手のお母様の想いを表現した楽曲とのこと。
女性が1人もいないグループである彼らがこのようなトピックを扱うのは本当に意外でした。
ただ詞の内容を純粋に見ると母親を父親に置き換えても成立するので、女性が歌った方がしっくり来たかも。

続くM-2「きみとの日曜日」はイトキンが茉奈佳奈に提供した同名曲のセルフカバー。
イトキンが作詞作曲を手掛けたということもあってET-KINGが歌うと一気に彼らの曲になりますね。
曲名に合ったゴキゲンなトラックと彼らの嫌味のない歌がバシッとハマり、見事に狙って命中させた曲となっています。
むしろM-1mother」こそ提供曲にすればよかったのでは・・。


2ndアルバムでの既発曲M-3「うまい!お弁当」を挟み、M-4「はんぶんこ」は新曲。
福島県大熊町立幼稚園(震災後に歌いに行ったとのこと)の園児たちのために制作した曲とのことで、「はんぶんこ」をテーマにした教育的な内容。
下手すると説教くさくなりそうなテーマですが、教育テレビでも流せそうな楽しい雰囲気のトラックと全員の優しい歌唱で嫌味なくすんなり聴ける曲に。

M-5「さんぽ」はとなりのトトロでおなじみの同名曲のカバー。
彼らの雰囲気に合った選曲ですが様々な音を取り込んでアレンジしたトラックが面白いです。
その上での明るい歌唱との相性も良し。

M-6「せんたくのうた」は3rdアルバムでの既発曲。
陽気なトラックの上でのキャッチ―なHookと勢いは耳に残ること請け合い。


M-7「おすしはまわる」、M-8「おじいちゃんとおばあちゃんの結婚式」は新曲で、前者は曲名の通り回転寿司がテーマ。
ネタの視点からのリリックは中々聴いていて面白く、楽し気なトラックとも相まって最後まで純粋に楽しく聴けます。
後者も曲名の通りおじいちゃんとおばあちゃんに対するメッセージソングですが、ほのぼのしたリリックとハーモニカを中心とする優しいトラックが印象的。
個人的に本作で一番好きな曲だったりします。

M-9「帰り道」は3rdアルバムでの既発曲で、もう聴いているだけで天気がいい夕方の情景を連想してしまいます。
チャルメラの音が印象的なトラックです。


最後を〆るのは新曲であるM-10「」。ピアノのイントロから始まる壮大な雰囲気のトラックで、最初から最後まで全員での合唱。
優しいリリックと歌い方がトラックにしっかりハマっていて、最後を〆るのにはふさわしい楽曲といえます。


良くも悪くも活動休止前のET-KINGらしい作品です。
新しい切り口を見せたM-10「」やET-KINGらしい新曲のM-4「はんぶんこ」、M-7「おすしはまわる」など良曲も入っていて、ファンには嬉しい内容と言えますね。

ただこれはコンセプトアルバムゆえの弱点なのですがアルバムのトピックが全体的に「家族」に統一されているため、オリジナルアルバムに比べるとバラエティに欠ける上に全10曲とアルバムとしては小粒なのがちょっと物足りなさを感じるポイント。
その為これからET-KINGを聴こう!という方にはちょっと向いていないかもしれません。
これからET-KINGを聴いてみようという方はまず普通のアルバムかベストアルバムを。そして気に入ったら本作を手に入れることをおススメします。
M-2「きみとの日曜日」、M-5「さんぽ」、M-7「おすしはまわる」の3曲は本作でしか聴けないので、ファンならマストで持っておくべきです。


↓M-4「はんぶんこ」の振り付け映像。
www.youtube.com

Hits Now 1 / V.A.

HITS NOW(1)


曲目リスト


1. Everyday / Bon Jovi
2. Can't Get You Out Of My Head / Kylie Minogue
3. Soak Up The Sun / Sheryl Crow
4. Smile / Elvis Costello
5. Foolish / Ashanti
6. Don't Know Why / Norah Jones
7. There You'll Be / Faith Hill
8. Hands Clean / Alanis Morissette
9. Cartoon Heroes / Aqua
10. Everywhere / Michelle Branch
11. Don't Say Goodbye / Paulina Rubio
12. What About Us? / Brandy
13. Feel It Boy / Bennie Man feat. Janet
14. Summer Breezin' / Diana King
15. Home And Dry / Pet Shop Boys
16. The People / The Music
17. Here Is Gone / The Goo Goo Dolls
18. Let Forever Be / The Chemical Brothers
19. Dig In / Lenny Kravitz


評価: ★★★★★★★★☆☆


洋楽のヒット曲を集めたコンピレーションアルバム。
2002年11月27日発売。


洋楽コンピシリーズではお馴染みの「NOW」シリーズ。
本作は2002年にリリースされたその新シリーズで、東芝EMIユニバーサルミュージックワーナーミュージックの3社の共同企画。
その3社が厳選した2002年のヒット曲を19曲コンパイルした作品です。
1とナンバリングがされており、本作以降も続きもののシリーズにする予定だったのが伺えますね。
最も「Hits Now 2」なんて検索してもでてこないので本作1枚で終わってしまった模様。
やはりレーベル3社の共同企画を毎年やるのは無理があったのかもしれませんね。


では、内容に。


「NOW」シリーズの特徴といえばジャンルの壁を越えた幅広い選曲ですが、本作でもそれは変わらずです。


Bon JoviM-1Everyday」でアルバムは幕開け。
グイグイ迫ってくるようなイントロで掴みはガッチリ。
様々な展開を見せるバンドサウンドで3分足らずなのに聴き終わった後にはしっかり満足感があります。

Kylie MinogueによるM-2「Can't Get You Out Of My Head」は打って変わって打ち込みサウンド
シンプルなサウンドですがその上にのるKylieの甘い歌声との相性は文句なしでガッチリハマっています。

続くSheryl CrowによるM-3「Soak Up The Sun」はバンドサウンドですが上に乗るのは澄み切った女性ボーカル。
聞きやすい雰囲気でサラッと耳の中をかけていく感じです。

Elvis CostelloによるM-4「Smile」は大人な雰囲気で優しい肌触りのサウンド
リリックは簡単なものですがその上にのっかる野太いボーカルとの相性の良さを楽しめるだけでも眉唾物。


AshantiによるM-5「Foolish」は如何にもなR&B。Ashantiだから当たり前ですけど。
シンプルなワンループトラックですがAshantiの艶のある歌声をかなり引き立てていて作戦勝ちですね。
間違いない歌唱力を持っているAshantiなのでこういうシンプルなトラックの方が彼女の持ち味を生かせるんでしょうね。

次のNorah JonesのM-6「Don't Know Why」は歌がメインでその歌にサウンドを合わせているような感じに聴こえます。
これまた間違いない歌唱力の持ち主なのでこれだけでも十分聴かせてくれます。

Faith HillによるM-7「There You'll Be」は神聖な雰囲気のバラード。
Hookでのキャッチ―な歌は聴いていて一瞬で耳を奪われますね。
映画のクライマックスシーンのような壮大なオーラを感じます。


Alanis MorissetteによるM-8「Hands Clean」、Michelle BranchによるM-10「Everywhere」はパワフルなバンドサウンドで、その上の歌唱もパワフル。
その芯のある歌唱のお陰で全くサウンドに負けておらず、聴きごたえのある内容になっています。
その2曲に挟まれるAquaによるM-9「Cartoon Heroes」はノリノリチューンでとにかく歌もサウンドも楽しいのでいいアクセントになっています。


Paulina RubioによるM-11「Don't Say Goodbye」は緊迫感のあるサウンドで、その上のRubioの気合の入った歌唱が聴きごたえあり。

BrandyによるM-12「What About Us?」はかなり歌を乗せにくそうなせわしないサウンドなのですが、その上に歌を乗せるBrandyの力量は流石です。

Bennie ManとJanetによるM-13「Feel It Boy」はよくあるラッパーとシンガーの曲で、Bennie Manの陽気なラップにJanetの歌がいいアクセント。
Bennie Manも一部歌っている箇所があるのでそこがキャッチ―さを増幅させてます。

Diana KingによるM-14「Summer Breezin'」は曲名の通りサマーチューンで、落ち着いたトラックですがその上に乗るラップは首を振りたくなること必至です。
曲名を乗せるHookも清涼感があり、夏の車で聴きたくなりますね。


Pet Shop BoysによるM-15「Home And Dry」はエレクトロサウンドで、対訳を見ると目標を叶えるために旅に出た男性の家に残してきた女性に対する恋愛ソング。
夕方の風景を連想させるようなサウンドで、言葉が分からなくても伝わってくるものがあります。

The MusicによるM-16「The People」はガンガンなサウンドで如何にもなバンドサウンド
ちょっと舌足らずな歌との組み合わせが面白いですね。


The Goo Goo DollsによるM-17「Here Is Gone」、The Chemical BrothersによるM-18「Let Forever Be」、Lenny KravitzによるM-19「Dig In」は結構派手な音使いのバンドサウンド
その上に乗る芯のある歌唱との相性は抜群でどの曲も爽快感があります。


3レーベルが集めた楽曲というだけあって、流石にヒットポテンシャルがある曲ばかりが並んでいます。
ジャンルの壁を本当に超えて曲のタイプが豊富なので、誰でも必ず好きな曲ができること間違いなしです。

曲順の構成等は好みが分かれそうですが、2002年の洋楽ヒット曲を確認するのには最適な1枚と言えるでしょう。
興味ある方は是非どうぞ。


↓M-15「Home And Dry」のPV。
www.youtube.com

Project 妄 / 妄走族

Project妄


曲目リスト


1. Intro
2. Project 妄
3. 妄走族 DA バカヤロウ
4. 王者 -DEFENDING CHAMPION-
5. P.M.D
6. すずらん -酔いどれ行進曲-
7. STOP THE WARS
8. YEN
9. クソMC 2003 Wack MC
10. まむし -Choice the Game- feat. D.O
11. 与太者 feat. MISTA SMITH
12. マンチスター東京 feat. Bigga Raiji
13. Skit cutting by DJ TURBO
14. Underground Over the Sky feat. Joeyslick
15. クソMC 2003 Sucker MC
16. Skit
17. 族中法度'改
18. ブリブリテーマソング Part Ⅱ feat. MISTA SMITH


評価: ★★★★★★★☆☆☆


東京三軒茶屋で結成されたラップグループ、妄走族の3rdアルバム。
2003年3月26日発売。


2001年の夏に2ndアルバムをリリース後にアルバムからのLPを2枚リリースした妄走族
2002年に入ってからは妄走族としてのリリースはなくなり、代わりにDENとZORROのユニットであるGAS CRACKERZが1stアルバムをリリース。
他にはコンピレーションアルバムに楽曲を提供したくらいで、主に主戦場は現場だった模様。
ちなみにコンピレーションアルバムに参加した時点で既に565(現G-MAN)はメンバーに加わっていたようです。

そして2003年に突如3rdアルバムである本作をリリースしました。
それまでインディーズからのリリースでしたが本作はユニバーサルミュージックからのリリースとなり、彼らもとうとうメジャーに進出。
メンバーは以前の7MCに加えてMCとして565、DJとしてDJ TURBO、DJ JACK HELERが加入し、10人組となった妄走族の初のアルバムであり、妄走族全体としても初のメジャー流通アルバムでもあります。
本作で妄走族を初めて聴いたというリスナーは多いのではないでしょうか。


では、内容に。


1stアルバムでインパクトのある言葉選びと勢いというスタイルを突きつけ、2ndアルバムでエッジを広げてそのスタイルの完成形を見せつけた印象の妄走族
3rdアルバムである本作では、だいぶ色が変わっています。


イントロは声ネタスクラッチという点では前作までと同じなのですが、スクラッチをかけているトラックが打ち込み系のトラックになっています。
そんなイントロから間髪いれず始まるM-2「Project 妄」はこれまた打ち込み全開のトラックで、全体的にサンプリング色が強いトラックが多かった前作とは明らかに雰囲気が異なっています。
もうこの始まり方からして「本作以前とは違う」となるはずです。
曲自体は全員参加の勢いのあるマイクリレーでみんないい仕事ぶりでぶっ飛ばされること必至。

M-3「妄走族 DA バカヤロウ」はこれまた全員参加のマイクリレーですが、こちらはおどろおどろしい雰囲気のトラック。
K DUBの名パンチラインに対して勝手にアンサーを返す剣や淡々とした声ながらも力強い言葉さばきで存在感を見せるZORROなど随所で聴きどころを提供しており楽しく聴けます。
DENのRIPとKICKに対するDISに関しては「RIPやKICKはとりあえずDISっとけ」という当時の風潮に安易に乗っかった感が否めず。


M-4「王者 -DEFENDING CHAMPION-」は「Project 妄」に負けない勢いのあるトラックで、狼→神→般若→剣の順番でのマイクリレー。
4人ともいいですが男臭いラップでガッツリと初陣を切る狼とインパクトのある言葉選びが光る剣が特にキレキレ。

M-5「P.M.D」はちょっとバウンシーな雰囲気でこれまた前作まではなかったタイプの楽曲。
この辺りから狼がちょこちょこ歌うようになりましたね。実際狼は歌の方も魅力があるタイプだと思うのでこの変化はアリだと思います。


M-6「すずらん -酔いどれ行進曲-」は神と狼のタッグによる陽気なアルコール賛歌。
本作の中でもかなり軽い雰囲気のトラックですけど、その上にのる神と狼の嫌味のないラップで純粋に楽しい気分になれますね。
「ほどほどにしてくださいよ」って感想は出ちゃいますが。

続くM-7「STOP THE WARS」はそんな楽しい雰囲気から一転、「戦争反対」という重いトピックを扱っていることもあってかなり重たい雰囲気のトラック。
マイクを握るのはDENと般若。
どちらもトラックの雰囲気にはよく合っていますが、DENのラップが誰にでも書けそうなリリックでもうちょっと独特な言葉選びが欲しかったところ。
般若の方は独特な言葉選びで重たいテーマにも関わらず楽しく聴けるのでますますDENの言葉選びの弱さが目立ってます。

M-8「YEN」は剣、般若、ZORROの3人による1stアルバムの「」のリメイク曲。
リリックの方は原曲と同じ個所もあるものの大体は変えており、切れ味鋭い重たいトラックの上で3人ともキレキレな言葉選びを披露。
トラックとラップの相性も文句なしで満足感高めな楽曲。

M-9「クソMC 2003 Wack MC」は剣のソロで、曲名の通りDIS曲なんですが標的はKICK THE CAN CREW
上に書いたDENのRIP、KICKに対するDISと同じ理由もありますが、1stアルバムの「クソMC」よりも言葉選びの鋭さが鈍ってるような。
シーンに対する反逆児的な立ち位置だった彼らですけどやっぱりメジャーで進出するとなると当時の風潮も考慮しないといけないんでしょうか。
2分もない楽曲なのでスキットみたいな立ち位置で聴くのがいいかも。


しかし次に控える雷からD.Oが参加したM-10「まむし -Choice the Game- feat. D.O」は本作の楽曲の中でも屈指の出来と言えます。
裏社会で生きている人間の仕事内容を本人たちの立場から描写するスト―リテーリングもので、最初から最後まで緊迫感溢れる展開を聴かせてくれます。
不穏なトラックと565のHook、最後に鳴り響くサイレンの音と一切曲中に無駄がありません。

M-11「与太者 feat. MISTA SMITH」は剣と神、565とMISTA SMITHの4人による極道モノの楽曲。
後に2人で極道モノのコンピアルバムを作るだけにこういうテーマだと剣と神の言葉選びの上手さが光りますね。
おどけた感じなのに吐く言葉の内容がえげつないMISTA SMITHもバースが短いのに他の3人に劣らない存在感を発揮。

M-12「マンチスター東京 feat. Bigga Raiji」は思い切り打ち込み系のトラックでHookはBigga Raijiの歌、全体的にダラダラした雰囲気というこれまた前作まではなかったタイプの楽曲。
Hookを交えながら般若→神→剣の3人でマイクを回すわけですが、上に書いた雰囲気のお陰でかなり新鮮に聴けます。

DJ TURBOのスクラッチによるスキットを挟んだM-14「Underground Over the Sky feat. Joeyslick」はHIP HOPの4大要素(ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティ)をテーマにしており、DJ JoeyslickがスクラッチラジオDJ的な役割で参加。
剣がグラフィティ、神がブレイクダンス、般若がDJについてラップするという構成で、剣の言葉選びの面白さが中々聴かせます。
ただHookが英語なんですけど思い切りカタカナ英語になっていて聴き苦しさがあるのでこれはもうちょっと何とかならなかったのかなあと。


M-15「クソMC 2003 Sucker MC」は般若のソロで、特定のMCやDJがどうこうではなくシーンに対する喝入れ楽曲です。
上のDENと剣の取ってつけたようなRIP、KICKDISとは違ってこちらは説得力がある内容なので素直に受け止められます。
言葉選びはこの上なく下品なんですけど妄走族時代の般若特有の変幻自在なフロウを存分に楽しめますね。

スキットを経てのM-17「族中法度'改」は「族中法度」のパート2という感じで全員参加のマイクリレー。
トラックは「族中法度」のトラックをベースにしてリメイクしたものになっており、ZORROのラップが一番光ってますかね。
ZORROの淡々としつつも鋭いラップは重たいトラックにこのうえなく合います。

最後を〆るM-18「ブリブリテーマソング Part Ⅱ feat. MISTA SMITH」は前作の「ブリブリテーマソング」と同じメンツでのマイクリレー。
前作は陽気な雰囲気のトラックでしたがこちらはダウナーな雰囲気のトラックとなっており、MISTA SMITHと565のラップもきちんとしたラップになっているため前作より楽曲らしさは出ています。
こちらは最後を〆る565のラップが一番いい味がでています。アルバムの最後を565の陽気なラップで〆るというのも乙なものです。


マイクリレーがメインというのは前作までと同じですが、トラックは打ち込みがメインとなり様々な分野に挑戦、前作までとは色が変わった内容になっています。
前作が前作までのスタイルの完成形という感じだったので、その次の作品である本作で色が変わるというのは必然だったのかもしれません。

様々なタイプの楽曲が入っており、これはちょっと・・という楽曲もあるためアルバム全体のまとまりという面では妄のアルバムの中では今一つ。
しかし「まむし -Choice the Game- feat. D.O」、「マンチスター東京 feat. Bigga Raiji」など本作でしか聴けない名曲もあるのも事実なので十分に良作。
それらの曲を聴くだけでも本作を手に入れる価値はあります。


↓M-2「Project妄」のPV。
www.youtube.com

Ghetto Heisman / WC

Ghetto Heisman [Explicit]


曲目リスト


1. Highlight Reel-Intro
2. Bellin' feat. Kokane
3. The Streets feat. Nate Dogg, Snoop Dogg
4. Fake N***As (Skit)
5. So Hard feat. Scarface
6. Flirt feat. Case
7. 187um Burgers - (skit)
8. Walk feat. Westside Connection
9. Tears of a Killa feat. Butch Cassidy
10. Da Get Together feat. Butch Cassidy
11. Throw Ya Hood Up feat. Toofpick
12. Wanna Ride feat. Ice Cube, MC Ren
13. Bang Loose feat. Dr. Stank, Lady T, Dauville
14. Get Out
15. Let's Make a Deal feat. Gangsta, Lina
16. Somethin' 2 Live 4


評価: ★★★★★★★★☆☆


アメリカのテキサス州出身のラッパー、WCの2ndアルバム。
2002年11月12日発売。


自身が所属するWestside Connectionのアルバムのヒット後にリリースした1stアルバムが見事にヒットしたWC。
それから4年後に2ndアルバムである本作をリリースしました。
ビルボードのPOPチャートで46位、R&B/HIP HOPチャートでは最高7位を記録。


では、内容に。


WCのラップは良くも悪くもオーソドックスなタイプで癖がありません。
コアなHIP HOPファンは物足りなさを感じるかもしれませんが、西海岸系のラッパーの中でも幅広い層に受け入れられやすいのでは。
また本作は結構な客演を迎えているので、その客演の多さからすればこの癖のなさはむしろプラスかもしれませんね。


イントロを経てのM-2「Bellin' feat. Kokane」は大げさな入りだしから一気に硬派に転ずるというトラックの構成が面白く、その上での小気味良いWCのラップも相性抜群。
KokaneのHookと随所で入るコールもいいアクセントになっています。
その次のM-3「The Streets feat. Nate Dogg, Snoop Dogg」の流れで耳をロックされること必至です。
ネタ感満載のトラックとHookでのNate Doggの優しい歌声、WCの硬派なラップとSnoopの滑らかなラップと何一つとして無駄がありません。

スキットを挟んだM-5「So Hard feat. Scarface」はScarfaceが参加。
トラックはシンプルなワンループトラックですがその分HookではWCが歌いScarfaceがそれに応答するという面白い構成。
どちらのラップもいい仕事ぶりで飽きさせないのが流石です。


Caseが参加したM-6「Flirt feat. Case」はCaseで伸びやかな歌声とWCの硬派なラップとの相性の良さを見せつけた後はSkitを挟んでM-8「Walk feat. Westside Connection」でWestside Connectionのボッセカット。
大げさなHookを交えながら三者三葉なラップを乗っけるのが聴きごたえ抜群です。
その後はButch Cassidyを客演に迎えたラッパーとシンガーの曲2連発。
M-9「Tears of a Killa feat. Butch Cassidy」はちょっと哀愁が漂う雰囲気で、夏の夕方の風景を連想しますね。
それに対してM-10「Da Get Together feat. Butch Cassidy」はせわしないトラックの上でのWCのスムーズなラップが印象的。
どちらも双方の相性の良さは言うまでもなく。


M-11「Throw Ya Hood Up feat. Toofpick」はHookをToofpickが担当しており、インパクトの強いコールの横で滑らかなラップを乗せているのが聴いていて楽しめます。
WCの硬派なラップとも棲み分けが出来てますね。

M-12「Wanna Ride feat. Ice Cube, MC Ren」、M-13「Bang Loose feat. Dr. Stank, Lady T, Dauville」はマイクリレーもので、臨場感のあるトラックの上で全員十二分にイケイケなラップを披露。
聴いているだけで首を振りたくなること必至です。

M-14「Get Out」はクレジットこそされていませんがBlack Chill & DJ Crazy Toonesが参加しています。
最も参加していると言ってもHookのコーラスでの参加なのでラップの方はWCの独り舞台。
バースでのWCの硬派なラップとテンションの高いコーラスが十分な聴きごたえ。


M-15「Let's Make a Deal feat. Gangsta, Lina」はHookはLinaの歌でWCとGangstaがラップ担当。
Linaがしっとりとした歌声を乗せているのに対してWCとGangstaは比較的ゴキゲンなラップを乗せており聴いていて楽しいです。

最後を〆るM-16「Somethin' 2 Live 4」はWCの一人舞台で終始ハードな雰囲気。
無論WCのラップとハードな雰囲気のトラックの相性は抜群で、ガッチリとアルバムを〆てくれます。


ほとんどの楽曲に客演がありますが、どの客演もいい仕事ぶりな上にWCのラップとの相性も抜群です。
トラックも全曲WCと客演陣のラップや歌の魅力を引き出しており、全曲聴きごたえのある内容となっております。
歌をフィーチャーしたキャッチ―な楽曲もあれば、ハードな楽曲もありとバラエティも豊かで最後まで飽きないアルバムです。


見かけたら是非どうぞ。


↓M-15「Let's Make a Deal feat. Gangsta, Lina」。
www.youtube.com

SUPERHARD / ラッパ我リヤ

スーパー・ハード


曲目リスト


1. イントロ
2. yeahと言え
3. ニセモノセイバツ
4. 金
5. 邦楽界
6. ヤバスギルスキル・パート3 feat. Ark
7. 人間太鼓箱
8. 中トロ
9. 時間
10. 交通警報
11. R.G.力学
12. LOVE SONG feat. Dejja
13. もし俺が
14. 言葉遊び feat. 三善善三
15. 走馬党 feat. 走馬党
16. アウトロ


評価: ★★★★★★★☆☆☆


日本語ラップ界を代表するクルーの一つである走馬党の中心グループ、ラッパ我リヤの1stアルバム。
1998年9月25日発売。


ラッパ我リヤはまず1993年に結成され、当時のメンバーはQ、MMC三好(現三善善三)、DJ TANAKENの3人。
三好の提案によりグループ名を「ラッパガリヤ」として活動開始。
音源リリースはないまま3人での活動は休止し、「ラッパガリヤ」はQのソロ名義→Qと山田マンのユニットという形に変遷しました。
1995年ごろにはイベントにてともに参加したDJ TOSHIが加入し、同年にコンピレーションアルバムへ参加して名前を全国規模に。
1996年に1stシングルをリリースし、1997年には走馬党も結成して同名のレーベルも立ち上げ。立ち上げ後すぐにグループ名を「ラッパ我リヤ」に改名して12インチシングルをリリース。
翌年の1998年に1stアルバムである本作をリリース。
2003年には1曲ボーナストラックを追加&マスタリングした再発盤もリリースされています。



では、内容に。


ラッパガリヤのMCであるQと山田マンはどちらも華があるタイプのMCではありませんが、押韻にこだわりつつも面白いリリックを展開していくラップさばきはその華のなさを補った強烈な個性です。


イントロを経てのM-2「yeahと言え」は名前から想像できる通り序盤の曲らしいライブチューン。
2人のラップの言葉選びの面白さは堪能できますが山田マンが手掛けたトラックがちょっと元気がなくあと一押しほしいところ。
最後のTOSHIのスクラッチはカッコいいんですけどね。

M-3「ニセモノセイバツ」はこれまた名前から想像できる通りワックMCワナビーもの。
DJ CEROLYが手掛けた緊迫した雰囲気のトラック自体はカッコいいものの2人のラップとの相性が微妙で、どちらもいい仕事ぶりなだけに非常にもったいなく感じます。
次のM-4「」は同じくダークなトラック(こちらは山田マンプロデュース)なのですが、こちらはテーマが「金」だけに雰囲気によく合っていて2人のラップとの?み合いもそれなり。

M-5「邦楽界」は当時の音楽シーンを一刀両断する内容の楽曲で、FUMAKILLAによる重たいトラックで淡々とシーンを切っていくのが他にない感じです。


Arkが参加したM-6「ヤバスギルスキル・パート3 feat. Ark」はコンピ参加時代から続く「ヤバスギルスキル」の第3弾。
MUMMY-Dが手掛けたトラックが聴いているだけでも首を振りたくなるようなトラックで、その上に乗る3人のラップも全員キレキレ。

M-7「人間太鼓箱」はQがビートボックスをしてその上で山田マンがラップをするという内容で繋ぎのような役割。最もこの後の「中トロ」はスキットなんですけどね。
このスキットはQも山田マンも素直に音楽に対する思いを語っていて何気に好きです。
スキットを経てのM-9「時間」は曲名の通り時間について綴った楽曲で、DJ CEROLYの不穏なトラックとよく合っています。


M-10「交通警報」は交通事情についての2人からのメッセージソング。
色んな音を入れ込んだ本作随一の聴きごたえのあるトラックでHookの言葉を巻き込んだスクラッチもかなりカッコいいです。
その上にのる2人のラップも文句なしの仕事ぶり。
M-11「R.G. 力学」はビッグマウスものですが、DJ CEROLYによるトラックが微妙でうーんという感じです。

シンガーのDejjaが参加したM-12「LOVE SONG」はQのソロでDejjaが参加という格好。
キレイなトラックですがしっかりとしたワンループになっていてPOPに寄らなくても恋愛ソングは作れるというのを証明した曲と言えるでしょう。
Dejjaの艶のある歌声は勿論ですがQのざっくりしたラップも聴きごたえがあって狙い通りバッチリいい曲になっています。

しょうもないスキットを経てのM-14「言葉遊び」はかつてのメンバーである三善善三が参加。
3人全員とも面白いパンチライン連発で聞き逃し厳禁です。HookでのTOSHIのスクラッチもいいアクセント。

M-15「走馬党 feat. 走馬党」は曲名の通り当時の走馬党ボッセカット。
正直トラックとHookがちょっと単調なんですけど、そんなことを気にさせないくらいに走馬党メンバーがぐいぐい攻めてくるラップをバースで決めてきます。
個人的には好きなんですが全体的にちょっとガサツな雰囲気があるので苦手な人は苦手かも。

ライブの様子をそのまま録音したアウトロでアルバムは幕を閉じます。


上にも書いたようにQと山田マンはアカペラでも聴けそうなラップ捌きです。
如何にも正統派なスタイルという感じで、日本語ラップを聴くなら避けて通れないグループと言えるでしょうね。
1stアルバムである本作はそれが色濃く出ていますが、何曲かトラックに元気がなかったりラップとトラックの相性が微妙な曲があるのでクラシックとまではいかないですね。
最もいい曲はいいのも事実なので、是非チェックしていただきたいです。
僕が紹介したのは1998年にリリースされた通常版ですが、正直音質がしょぼく音が小さいのでこれからチェックしようという方は2003年にリリースした再発盤を手に入れることをおススメします。


↓M-14「言葉遊び feat. 三善善三」。
www.youtube.com

Crash The Party / Smilez & Southster

Crash the Party


曲目リスト


1. Intro (Skit)
2. Let's Roll
3. Who Wants This?
4. Ridiculous
5. Bull Sh*tin' (Skit)
6. It's On
7. Luv-A-Bo (Skit)
8. Let's Get Naked
9. R&B South (Skit)
10. Tell Me
11. What Can You Do?
12. Gully
13. On The List (Skit)
14. Crash The Party
15. Alright
16. It's Time
17. Now That You're Gone


評価: ★★★★★★★★☆☆


アメリカのオーランドで結成されたラップグループ、Smilez & Southstarの1stアルバム。
2002年7月9日発売。


Smilez & Southstarは2000年にSmilezとSouthsterが結成したユニット。
それぞれの経歴を少し説明します。


まずSouthsterは15歳の時にオーランドにやってきて、すぐにHIP HOPのとりこになり自分自身もラップをするように。
高校卒業と同時にマーケティング、プロモーション関連の企業に就職しそこでビジネスとしてのHIP HOPも学びました。
そのような裏方活動と並行しながらMCとしても活動し、地元のDJが制作したミックステープに参加しながらその名前をオーランドで着々と浸透。

それに対してSmilezは幼い時から芸能界を目指しており、17歳の時に母親と共にオーランドへ。
それから大物ラッパーのオープニングアクトを務めるなどの経験を積み、こちらも名前を広げていくことに。

そんな2人が一緒になるきっかけになったのはとあるミックステープの制作。
そのミックステープの楽曲で2人が共演することになり、お互いの相性の良さに気づいた2人はプロデューサーのDakariの協力を経てこのユニットを結成。

2年後にリリースされたのが1stアルバムである本作です。
本作からのシングルカットのM-10「Tell Me」はヒット曲となり、アメリカのみならず世界でも名前を広げました。
ところが本作以降は本作のシングルカット以外に特に音源リリース等はなく、2006年に活動はやめてしまったようですね。
結果的に本作が唯一の彼らのアルバムとなっています。


では、内容に。


このような2人組のMCユニットというのは声質やラップの乗せ方などが明確な違いがあって棲み分けがはっきりしている場合が多いですが、Smilez & Southstarは珍しいことにそのような傾向に当てはまっていません。
SmilezとSouthsterはどちらも声やラップの乗せ方が似ていて、詞の方を確認しないとどちらがどこを担当しているのか分からないんですよね。
ただお互いの相性の良さがきっかけで結成したというだけあってお互いのラップの相性は文句なしですし、どちらも癖がないので聴きやすいと思います。


イントロを経てのせわしないトラックの上でのラップ合戦を展開するM-2「Let's Roll」からもうその2人の相性の良さは分かるというものです。
Hookではちょっとキャッチ―な雰囲気を出し、バースでは硬派なラップ、ブリッジでは煽るようなラップを乗せるという構成の良さも相まって初っ端から耳を掴まれること請け合い。

M-3「Who Wants This?」はクレジットこそないもののDakariが参加しており、セクシーな雰囲気のHookとお互いのラップの化学反応が凄いですね。
最後を〆るDakariのReggaeノリなラップもいいアクセントになっていて最後まで飽きさせません。

ここまでは比較的キャッチ―な雰囲気の楽曲が続いていましたが、M-4「Ridiculous」は緊迫感のあるトラックでちょっと雰囲気が違います。
リリックの内容はよくあるビッグマウスものですが、トラックに緊迫感があるため90年代のギャングスタラップを彷彿とさせる雰囲気。

スキットを経てのM-6「It's On」はこれまた緊迫感のあるトラックの上に乗る2人のラップの絡みが絶妙で首を振りたくなります。


その次はまたスキットで、今まで続いたハードな雰囲気から一転、おっとりした雰囲気になりますがM-8「Let's Get Naked」でまた雰囲気は元に戻ります。
クレジットはありませんがこの曲ではKATIEが参加しており、中盤でいいアクセントとなる歌を聴かせてくれます。
出番はちょろっとだけなんですけど、2人のラップばかりが続いていたので一番印象が強いです。

スキットを経てのM-10「Tell Me」は上にも書いた通りシングルカットされた本作で一番の有名曲。
HookではBillie Lawrenceが参加しており、ちょっと歌を乗せにくそうなトラックにも関わらずしっかりと爽やかな歌を乗せているのに力量を感じますね。
トラックもインパクトがありますし2人のラップとの相性も文句なしで、ヒット曲になったのも頷けます。


M-11「What Can You Do?」はHIP HOPでは定番であるヘイタ―DIS曲。
Hookでのコーラスが煽っている感じがしていい味が出てます。

M-12「Gully」はリアル、ギャングスタという意味でどっちの意味でも通る言葉だとか。
その曲名から連想できるようにビッグマウスもの。
シリアスな雰囲気のトラックの上で隙間なくラップを撃ってくる2人はその言葉に偽りない貫禄を感じますね。


クラブに車で突っ込んでいく様を再現したスキットを経ての表題曲M-14「Crash The Party」は所々でガラスを割る音が入ることもあって中々危険な雰囲気。
どちらもギャーギャー騒いだりしないでいつも通りラップを乗せていくのが却って不気味な雰囲気で、目論見を成功させた一曲と言えます。

M-15「Alright」は畳みかけるようなトラックと2人の相性の良さは勿論ですが、Hookに人の声を含めて様々な音を入れ込んでいるので癖になりますね。

M-16「It's Time」はHookのシンガーが誰なのかクレジットされていないのですが、よくあるラッパーとシンガーの曲です。


最後を〆るM-17「Now That You're Gone」はまたしてもBillie Lawrenceが参加し、Hookで歌を披露。
本作中でも異色な悲し気な雰囲気の曲で、リリックの内容も亡くなった家族に対するメッセージソング。
ラップも語り掛けるような優しい雰囲気で中々綺麗にまとめ上げたんじゃないでしょうか。

と思いきや、この曲が終わってから数十秒ほどでボーナストラックが始まります。
パーティーチューンのため綺麗にまとめ上げる気は無かったようですね。


上にも書いたように2人のラップの相性は文句なしで、客演もみんないい仕事をしてます。
正直ヒット曲の「Tell Me」に並べるほどの楽曲はありませんが、他の曲もしっかり2人のラップに合わせた良曲が並び、最後まで聴けるアルバムです。
見かけたら是非どうぞ。


↓M-10「Tell Me」のPV。
www.youtube.com