りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

efiL4zaggiN (+100 Miles And Runnin') / N.W.A

Niggaz4Life(+100 Miles and Runnin’)


曲目リスト


1. Prelude
2. Real Niggaz Don't Die
3. Niggaz 4 Life
4. Protest
5. Appetite for Destruction
6. Don't Drink That Wine
7. Always Into Somethin'
8. Message to B.A.
9. Real Niggaz
10. To Kill a Hooker
11. One Less Bitch
12. Findum, F---um & Flee
13. Automobile
14. She Swallowed It
15. I'd Rather F*** You
16. Approach to Danger
17. 1-900-2-Compton
18. Dayz of Wayback, The
19. 100 Miles and Runnin' (bonus track)
20. Just Don't Bite It (bonus track)
21. Sa Prize, Pt. 2 (bonus track)
22. Kamurshol (bonus track)


評価: ★★★★★★★★☆☆


アメリカのコンプトンで結成されたラップグループ、N.W.Aの2ndアルバム。
1991年5月28日発売。(本作は2015年12月9日発売)


1990年にリリースされたEP「100 Miles and Runnin'」が、50万枚のセールスをあっという間に達成したN.W.A。
ICE CUBEが1989年に抜けたのが非常に大きな穴だったと様々な評者から言われたN.W.Aですが、セールス的にはそんなことも大きなダメージにならないくらいに当時の人気は絶大だったわけですね。
1991年にそんなブーム冷めやらぬ中出された2ndアルバムが「efiL4zaggin」。


セールス的にもすさまじい話題作となり、ギャングスタラップでは史上初の全米チャート1位を獲得。
この2ndアルバムリリース後にこれまた主力メンバーであるDr.DREが脱退したため、実質解散になります。
その後も再結成するのではという噂はありましたが、1995年にEazy-EがHIVに罹患し逝去したため(享年31)、本来のメンバーでの再結成は不可能になりました。
結果的に2ndアルバムがN.W.Aとしては最後の音源になります。


そして本作は、2000年以降にリリースされた、その2ndアルバムとEPを一枚にコンパイルしたお得な作品です。


さて、内容に。


西海岸HIP HOPを代表するアルバムである本作。
とにかくこれぞギャングスタラップ創成期!という雰囲気のトラックとラップが詰め込んであります。まあその時期にリリースされたので当たり前ではありますが・・・。


M-1Prelude」は当時のN.W.Aのメンバーとその仲間たちがトラックの上で掛け合いを乗せるオープニングの役割としての楽曲。
2分ちょっとですが随所に入るスクラッチがMC陣の煽りを後押しする様が非常にカッコいいです。
そこからM-2「Real Niggaz Don't Die」に行く流れも素晴らしいですね。
3MCともしっかり存在感のあるラップを披露し、トラックもその過激も過激な内容のラップをしっかりと受け止めています。
Hookも聴いているだけで興奮してしまうこと間違いなしの臨場感がありますし、dialogueの狂ったような煽りもすさまじい。狂ってますね!

M-3「Niggaz 4 Life」は黒人の蔑称である言葉がテーマの、黒人が黒人として生きていくことの苛烈さを吐き出す内容。
3人とも対訳を見るとまるでその苛烈な状況が映像として流れてくるような映画性のあるリリックを用意しています。
特に最後の有名なEazy-Eのラインは、おどけた感じで歌っているだけに本当に強烈ですね。
是非対訳でこれは見てほしいです。


ニュースのスキットを挟んでのM-5「Appetite for Destruction」は危険な雰囲気のトラックの上に、3MCがマイクパスをしていくのが小気味良いです。

またコマーシャルのスキットを挟んでいくM-7「Always Into Somethin'」は怪しさがありつつもカッコよさは十分のトラックの上でRENとDREがラップを乗せていく様が本当に聴きごたえありです。
随所のスクラッチ音もかなり強烈でいいアクセント。

M-8「Message to B.A.」は脱退したICE CUBEに対する恨み節満載のDIS曲(というよりスキットですが)で、正直聴いているこっちも気分が悪くなりそうな内容。
そもそもこの直後にDREも脱退したことを考えると、本当に崩壊前夜という感じがしてしまいます。

M-9「Real Niggaz」はEPで先行発表された曲で、唯一EPにもアルバムにも収録された曲。
それだけに、3MCとDJ Yellaの4人がバンバンとカッコいい様を見せる1曲!
トラックもラップも文句なしにカッコいいです。


スキットを挟んだM-11「One Less Bitch」からはとにかくS〇XやBIT〇Hなどといった女性ものの楽曲が並びます。
リリックの内容はとにかく下品の極みで、対訳を見たら女性なんかは特に不快感示す人いるんじゃないかという感じです。
個人的には全体的に冷たい雰囲気が漂うM-11「One Less Bitch」、MC RENの1人舞台であるM-14「She Swallowed It」、バーとかでも流せそうな雰囲気のトラックなのにリリックの内容は下品というギャップが面白いM-15「I'd Rather F*** You」辺りが好きです。


そんな女、女ばかりの内容の後のM-16「Approach to Danger」から一気に重たい雰囲気になります。
トラックも本当に聴いているだけで危険を感じてしまいそうな不穏なトラックです。
というかEazy-Eの最後のリリックが・・・これも対訳チェック必須。

これまたスキットを挟みM-18「Dayz of Wayback, The」へ行きます。
M-3「Niggaz 4 Life」と同じく黒人の苛烈な生活を、淡々とRENとDREがラップしていく内容になっています。


これで本来ならアルバムは終わるわけですが、本作はここで終わらずEPの4曲が続くわけです。


M-19「100 Miles and Runnin'」はとにかくトラックの疾走感がすごいのですが、そこに乗っかる3人のラップも大暴れです。
聴いていて頭を振りたくなってしまうことは必至ですね。
途中でトラックが変化を見せるのもすごくカッコいいです!

後の3曲はそんなに力を入れては作られていないかなという感じです。
M-20「Just Don't Bite It」はRENとEazy-EによるS〇Xの楽曲。
M-21「Sa Prize, Pt. 2」はN.W.Aの一番の有名曲の「Fuck The Police」のセルフリメイクですし、M-22「Kamurshol」は2ndアルバム(要するにこのEPが収録されていない本来の2ndアルバム)の宣伝の為の、短めの楽曲です(トラックはM-1Prelude」と同じものが使われています)。


N.W.Aの1stアルバムから記事を書きたかったのですが、この2ndアルバム(+EP)を昨年末と今月はよく聴いていたので、記事にすることにしました。
全体を通して聴いてみるとさすがはアメリカの伝説的な西海岸HIP HOPグループの作品。
流石に計22曲という曲の多さとスキットの多さでちょっと雑多な印象は否めないですが、リリースから30年近く経った今でも色褪せていないです。

今では入手困難なEPの音源もまとめて聴けてしまうのですから、本当にこの企画を考えた方には感謝したいですね!
今から聴いてみたい方は本当にこのEP音源付きをおススメします!
N.W.Aの映画「Straight Outta Compton」が2015年に公開された影響により、音質が良い状態のCDがリリースされているので、是非チェックしてみてください!


↓M-5「Appetite for Destruction」のPV。
www.youtube.com


↓M-19「100 Miles and Runnin'」のPV。
www.youtube.com

FREE WAY / TERRY

FREE WAY


曲目リスト


1. BELIEVE feat. ERIKA
2. YOU’RE LIAR feat. ROKU, RIDE, M.O.T
3. Interlude with LB
4. Never Ever Give Up feat. LB
5. Party Cruisin'
6. FREE MAN feat. FRENZY
7. Crystal Snow feat. ERIKA
8. This Is My Feelings feat. FRENZY
9. I sing for you feat. ERIKA, CROVER


評価: ★★★★★★★☆☆☆


宮城県仙台出身のラッパー、TERRYの1stアルバム。
2011年5月25日発売。


TERRYは宮城県仙台を拠点に活動するラッパーで、2000年代にLGY(現LGYankees)のHIROが指揮をとっていた、仙台を拠点とするラッパー集団、西海岸CREWに加入してキャリアをスタート。
その中で生まれたグループであるEIGHT TRACKにも参加し、活動の場もコンピレーションへの参加や仲間のラッパーの客演などで広げていきました。
西海岸CREWが解散した後には、HIROが立ち上げた音楽レーベルであるNO DOUBT TRACKSにEIGHT TRACKのメンバーと共に所属し、HIRO主導のコンピレーション「NORTH EAST Ⅱ」に参加。
その直後に自身が所属するEIGHT TRACKの1stアルバムがNO DOUBT TRACKSからリリースされ、1万5千枚というセールスを記録。

2008年後半に他のEIGHT TRACKメンバーとNO DOUBT TRACKSを離れて独立し、自主製作でTERRYソロ名義では初の音源である1stシングルをリリースします。
手売りと通販という限られたリリースながら6000枚ほどのセールスを果たしました。

その後も客演やコンピ参加などを地道に続け、2010年で1stシングルでの人気曲であった「I sing for you feat. ERIKA, CROVER」(M-9)が着うたサイトのクラブチャートで月間1位を達成。
2010年末にはEIGHT TRACKが2ndアルバムをリリースしたこともあり、TERRYの名前もますます広がりを見せることに。

2011年、とうとうTERRY名義では初のアルバムとなる本作がリリースされました。


さて、内容に。


TERRYの特徴は力強いラップとリリック。
EIGHT TRACKの作品やコンピレーションアルバムでもそのどっしりとした貫禄のあるラップさばきは異彩を放っていました。
ただリリックの内容は湘南乃風のような不良臭さがあるため、好みは分かれるかもしれないですね。


M-1BELIEVE feat. ERIKA」は本作のリードトラックで、既に十八番となっていたERIKAとのコラボ曲。
ERIKAの歌唱とTERRYの相性の良さを見せてくれる佳曲です。
この曲を初めて聴いた時にはTERRYってこんな切ないトラックとも相性が合うラッパーなんだ、って驚いた記憶があります。

M-2「YOU’RE LIAR feat. ROKU, RIDE, M.O.T」は、ROKU & RIDEの2人と以前からSPIDER NETSで一緒にやっていたM.O.Tを客演に迎えたマイクリレーもの。
リリックの内容は前向きシットで好みは分かれそうですが、4人とも芯のあるラップと歌を聴かせてくれるので聴きごたえがあります。


M-3「Interlude with LB」は本作のリリース時の2ヵ月半前に起こった東日本大震災時のTERRYとLBの電話での会話を元にしたフリースタイルもの。
試みは面白いですが、個人的にはそんなに惹かれるものはなかったですね。
そこからのEIGHT TRACKメンバーを迎えた新曲のM-4「Never Ever Give Up feat. LB」、M-6「FREE MAN feat. FRENZY」は、強烈なギターをフューチャーしたロック調なサウンド
ある意味新鮮ではありましたが、TERRYのラップはともかくとしてLBのラップとFRENZYの歌があまり活きていない気がします。というかM-6「FREE MAN feat. FRENZY」のトラックはFRENZYの歌とはかなり相性が悪いタイプなのでは・・?
(あ、でもこの2曲に挟まれた本作唯一のTERRYの単独曲であるM-5「Party Cruisin'」はトラックの変化の仕方とTERRYのラップの乗せ方が中々面白くて良かったです)


その後のM-7「Crystal Snow feat. ERIKA」からM-9「I sing for you feat. ERIKA, CROVER」までは2008年にリリースしたEPの収録曲が続く流れです。
M-7「Crystal Snow feat. ERIKA」、M-8「This Is My Feelings feat. FRENZY」は客演の歌の使い方がとても活きていますし、TERRYのラップも中々の仕事ぶり。
最後に控えるのは上にも書いたようにTERRYの最大のヒット曲と言ってもいいM-9「I sing for you feat. ERIKA, CROVER」。
流石に宣伝文に「100万人が涙した」とあるだけあって切ない恋愛ソングです。
ただあまり客演の2人の必要性があまり感じられませんでした。TERRY1人だけでも十分聴かせる歌に出来たのでは。


全体を通してみると、TERRYの持ち味である力強いラップは十分に堪能できます。
何度もコラボしているERIKAの歌唱との相性の良さも見せつけられますし、(リリース当時では)久しぶりの共演だったM.O.Tの健在ぶりも当時嬉しかったです。

ただ上にも書いたようにEIGHT TRACKメンバーとのコラボ曲がちょっとイマイチだったのは惜しいですね。
あとTERRYは1人でも十分聴かせられる力量はあるので、もうちょっとソロ曲があってもよかったような気もします。


とはいえ良作。EIGHT TRACKやコンピレーションの作品でTERRYのラップが気になった人は是非。


M-1BELIEVE feat. ERIKA」のPV。
www.youtube.com

A Day Without Rain / Enya

A Day Without Rain


曲目リスト


1. A Day Without Rain
2. Wild Child
3. Only Time
4. Tempus Vernum
5. Deora Ar Mo Chroi (Tears On My Heart)
6. Flora's Secret
7. Fallen Embers
8. Silver Inches
9. Pilgrim
10. One By One
11. The First Of Autumn
12. Lazy Days


評価: ★★★★★★★★☆☆


アイルランドの歌手、Enyaの4thアルバム。
2000年11月17日発売。


1stアルバムの成功以降、リリースされるアルバムが百万枚単位のセールスを記録することになるEnya
中でもこの4thアルバムは全世界で1000万枚以上というセールスを記録しました。
日本でもこの頃になると人気は完全に定着したようですね。

今でも大人気なシンガーであるEnyaですが、1枚1枚に非常に時間をかけて制作されるため、キャリアに対して割とリリースアルバムはそんなに多くないんですよね。


さて、内容に。


Enyaの特徴はとにかく圧倒的な歌唱力と優しく爽やかな歌声。
聴いてみた印象としては、とにかく彼女の声を最大限に生かしている内容だと感じます。
サウンドが彼女の歌をかき消すということは一切なく、彼女の歌声を引き立たせる一心で作られたサウンドですね。


まずM-1A Day Without Rainからしていいですね。
ピアノによるインストですが、アルバムの最初としては素晴らしい幕開けです。


そこからはまさにEnyaの歌声が生かし切った内容が続きます。
M-2「Wild Child」、M-3「Only Time」はもうEnyaの楽曲史上最も有名な曲と言ってもいい2曲ですが、これはもうそうなってしまうのも心の底から頷けてしまいます。
パーッとした明るい雰囲気と、そこに乗るEnyaの歌声がこの上ない相性の良さです。

そこからのM-4「Tempus Vernum」はちょっと重たい雰囲気で、本作の中でも異色な楽曲です。
好みは分かれるかもしれませんが、個人的には好きですね。

M-5「Deora Ar Mo Chroi (Tears On My Heart)」は伴奏自体があまりなく、ほとんどEnyaの歌声で魅せている構成ですね。
Enyaのような抜群の歌唱力を持っているシンガーだからこそなせる業です。
M-2やM-3と同じような路線のM-6「Flora's Secret」を挟んだ後の、M-7「Fallen Embers」もそのような構成となっています。
どちらも聴きごたえは十分ありますよ。

M-8「Silver Inches」はインスト。嫌でも朝焼けの光景が頭に浮かぶこと間違いなしの楽曲です。本当に美しい音を作りますね。

M-9「Pilgrim」、M-10「One By One」とM-2、M-3と同路線の楽曲が続き、
M-11「The First Of Autumn」へ。
Enyaのコーラスが乗ってはいるものの、ほとんどインストに近いです。近づいては遠のいてくのを繰り返すような音のうねりがすごいですね。

最後にM-12「Lazy Days」で非常に爽やかにアルバムは幕を閉じます。
この曲がぶつっと終わる形式でなく、段々音が小さくなりフェードアウトしていく終わり方なのもいいと思いました。


なんとなく手に取った1枚でしたが、さすがに全世界で凄まじいセールスを獲得しただけはある内容ですね。
インストもとにかく音の繊細さがすごく、どこを取っても手抜きされていないのがよくわかります。
とにかく音が「美しい」。普段うるさい音楽を聴いている僕は余り体験したことのない感覚でした。

有名曲も何曲か入っているので、Enyaを知らない人でもすんなり入り込めるのでは。自分もそうだったので。
中古屋でも割とある1枚なので、興味のある方は是非どうぞ。


↓M-7「Fallen embers」。
www.youtube.com

The Best Of DS455 / DS455

The Best Of DS455(初回盤)


曲目リスト


Disc 1

1. SUMMER PARADISE ~Risin' To Tha Sun~ feat.青山テルマ
2. 僕の中の少年+~遠い記憶IV~ -New Recording Version-
3. NIGHT CRUISE~星降る夜に~ -New Recording Version-
4. Ride In Peace feat. II-J,Iz
5. LOWRIDE 4 LIFE -New Recording Version-
6. Very Special Weekend
7. Ride Wit tha D.S.C.~Just Like Me~ -New Recording Version-
8. Summer Sweetz~CIGAR & LIQUOR~
9. Still Belong In Tha Street (Ah Yeeah)
10. Throw Ya Handz Up
11. To Myself
12. Night 4 Playaz feat. MAY -New Recording Version-
13. MY SWEET HONEY feat. Kalassy Nikoff
14. White Nite
15. L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~


Disc 2

1. Very Special Weekend -REMIX-
2. L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~ -REMIX-
3. Still Belong In Tha Street feat. BIG RON -Smooth Radio Mix-
4. LOWRIDE 4 LIFE (REMIX) -New Recording Version-
5. NIGHT CRUISE ~星降る夜に~ Remix feat. Iz -New Recording Version-


評価: ★★★★★★★★☆☆


遅ればせながらあけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。
とりあえず今年初めに結構聴いていた日本のアルバムを一つ。


神奈川県横浜のラップグループ、DS455のベストアルバム。
2008年4月23日発売。


90年代の日本語ラップシーンではほとんど無視されていたと言ってもいいのが西海岸サウンド
キングギドラスチャダラパー、BUHHDA BRANDなど様々なラッパーがメディアに出るようになり、日本語ラップシーンというものが作成されていったものの、その全てはLL Cool JRakimNASWu-Tang Clan、Run Dmcなどの東海岸系のHIP HOPから影響を受けたものでした。
N.W.Aや2PACなどといった伝説となるラッパーが西海岸のHIP HOPシーンに登場したものの、東海岸HIP HOPほどのプロップスを当時は得られなかったのです。(名盤であるNASの1stアルバムの解説を担当していた泉山氏も解説で「東海岸びいきをやめられないでいる」ということを述べていました。それほど当時は「西海岸はダサい」というようなイメージがついていたのです)
そのような環境の中で、西海岸サウンド日本語ラップシーンの中でシーンとして存在し始めたのが2000年から。DS455が1stアルバムをインディーズでリリースしたことによって、全国各地の西海岸HIP HOPに影響を受けたラッパーやDJ達がうようよと登場し始めたのです。
2002年からはDSがメジャーデビューを果たしたことにより、ますますその勢いは止まらず。
h.g.p、NORA、PHOBIA OF THUG、LGY、GHETTO INC.、NORTH COAST BAD BOYZなどといった西海岸系ラップグループが日本のシーンでも精力的に活動を開始しました。
結果的に日本の音楽界での一つのムーブメントとなったのです!
このムーブメントは2009年くらいまで続くことになります。


そして上を読んでもらえるとわかる通り、そのムーブメントの起爆剤となったのがこのDS455
そのシーンの中心にい続けたのも、このDS455です。
1989年から活動を続け、1stアルバムをリリースしたのは結成から11年後。
メジャーデビューを果たしたのは、結成から13年後。
結果として自分たちが起爆剤となって一つのシーンを確立しただけでなく、ムーブメントまで到来。
彼らの努力の賜物が一気に出た結果と言えます。


その環境に甘んじることなく、2006年にはレーベルを立ち上げ、DSとしても積極的にシングルやアルバムをリリースしていきます。
そんなDSが結成20周年を迎える直前の2008年(結成19年時)に、ベストアルバムである本作をリリースしました。
当時はすでにアルバムを5枚、シングルを9枚リリースしていたこともあり(White NiteはDS455+BIG RON名義)、ベストアルバムを出すには十分なタイミングだったと言えるでしょう。


さて、内容に。


DSの特徴といえば90年代の西海岸HIP HOPをトラックの面でもラップの面でもその再現にこだわるスタイル。
DJ PMXが手掛けるトラックは攻撃的なものも心地よく聴けるものもありますが、爽やかさがあるのが共通点です。
それはオリジナルアルバムを聴いていても感じることですが、シングルカットされた全曲、アルバムからの代表曲を集めたこのベスト盤を改めて聴いていると、それが特に顕著に感じられます。


100%サマーチューンなM-1SUMMER PARADISE ~Risin' To Tha Sun~ feat.青山テルマ」から、情緒的なリリックで魅せるM-2「僕の中の少年+~遠い記憶IV~ -New Recording Version-」の流れで、「これはいい」と思った人は、ぜひともそのまま最後まで聴き進めてほしいですね。
その後も基本的にそのようなサウンドが続くので。
M-3「NIGHT CRUISE~星降る夜に~ -New Recording Version-」はまさにこれぞDS!というクルージングチューンですし、M-4「Ride In Peace feat. II-J,Iz」もKayzabroとII-Jの硬派なラップにIzとMAY(こちらは客演にクレジットされていませんが)の伸びやかな歌声が華を添える、さすがにアルバム曲からセレクトされただけはある良曲。


それからM-5「LOWRIDE 4 LIFE -New Recording Version-」はちょっと空気が変わり、攻撃的なトラックの上でKayzabroがパーティラップを乗せるパーティーチューン。上記の4曲を聴いてきた人にとってはちょっと異色に映るかもしれませんね。M-6「Very Special Weekend」はちょっと派手目なトラックでのクラブチューンで、これまた客演にクレジットはされていませんがMAYとIzの歌声とKayzabroのラップがばっちりのハマりを見せてくれます。
M-7「Ride Wit tha D.S.C.~Just Like Me~ -New Recording Version-」はまったりした雰囲気のパーティーチューンで、華やかな雰囲気のM-6から一気に違う雰囲気に持って行ってくれます。


M-8「Summer Sweetz~CIGAR & LIQUOR~」はM-1SUMMER PARADISE ~Risin' To Tha Sun~ feat.青山テルマ」と同じくサマーチューンですが、雰囲気は全くの別物で、カラッとしたようなトラックにA☆ZACKのトークボックスが絡みつく様が一度聴いたら耳に残ること間違いなし。
MAY(これまた客演にクレジットはry)の一瞬の歌声とKayzabroのラップ、トラックのの相性も抜群なのは言うまでもなく。
M-9「Still Belong In Tha Street (Ah Yeeah)」、M-10「Throw Ya Handz Up」はこれまでのメロウな雰囲気から一転して攻撃的なトラックのパーティーチューン。
Kayzabroのラップも中々攻撃的で、ちょっと好みが分かれそうですね。


M-11「To Myself」はまた落ち着いた雰囲気に戻り、自分たちの音楽でのヒストリーを交えながらのメッセージソングで、トピック的には割と珍しいのを持ってきましたね。HooksでのSAYのボーカルがいい味を出してます。
M-12「Night 4 Playaz feat. MAY -New Recording Version-」は今までの本作収録曲では客演にはクレジットされていなかったMAYがやっと客演としてクレジットされているパーティーチューン。
この曲ではMAYも中盤でラップを披露しており、この上なくいいアクセントになっています。
M-13「MY SWEET HONEY feat. Kalassy Nikoff」、M-14「White Nite」は恋愛ソングで、前者はKalassy Nikoff(AK-69のシンガー名義)、後者はBIG RONの伸びやかな歌声も相まって、甘さ100%の楽曲に。
Kayzabroのリリックはちょっとベタベタなところもあるものの、サラッとした声質のお陰でそれほど嫌味なく聴けます。

Disc 1の最後を締めるM-15「L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~」は、曲名の通り人生についてラップするメッセージソング。
華やかな清涼感100%のトラックに、Kayzabroのラップが見事堪えた一曲で、この曲を最後に持ってきたのは大正解と感じます。


Disc 2はDSのオリジナルアルバムには収録されていなかった既発曲のリミックス5曲が収録されています。
M-1Very Special Weekend -REMIX-」、M-2「L.I.F.E. ~Livin' In tha Far Eastside~ -REMIX-」、M-4「LOWRIDE 4 LIFE (REMIX) -New Recording Version-」はどちらも原曲に比べるとあっさりとしたトラックのRemix。悪くはないですが原曲の方が雰囲気があって好きですね。
M-3「Still Belong In Tha Street feat. BIG RON -Smooth Radio Mix-」は原曲とは全く雰囲気が違っていて、HookはBIG RONの歌になっています。
ひたすらトラックもリリックも攻撃的な原曲とは異なり、トラックがBIG RONの歌も相まってメロウな雰囲気になっています。
かなり大胆な変え方ですが、これはこれでいいですね。ドライブ時には原曲よりこっちの方がピッタリかもしれません。
M-5「NIGHT CRUISE ~星降る夜に~ Remix feat. Iz -New Recording Version-」は、本作のリミックスでは一番雰囲気が原曲に近いかもしれません。
というか全く同じクルージングチューンですね。
ただこちらはIzが客演としてクレジットされていることもあり、原曲よりIzの存在がずっと目立っています。
実を言うと原曲よりこっちのほうが好きです。原曲よりKayzabro、Iz、DJ PMXそれぞれが活きているように感じるんです!


久しぶりにDSのベストアルバムを聴きましたが、やはりシングル曲やそれぞれのアルバムの代表曲を収録していることもあって、間違いない内容だと感じました。
ラップが下手だとかリリックに中身がないとか言われることもあるKayzabroですが、何だかんだでDJ PMXのトラックに一番合うのは彼のラップですね。
AmebreakでのインタビューでKayzabroが「俺がパブちゃん(DJ PMX)のビートでラップすれば、それはもうDSになる」と言っていましたが、本当にその通りです。

上にも書いたようにとても良いベストアルバムではあるのですが、Disc 2のRemixも含め、純粋な新曲はないので、今までのDSの音源をすべてチェックしている人や、シングルやアルバムを全て買い集めようと思っている人は無理に買う必要はないかもしれません。
ただ、本作は2ndアルバムの楽曲とDisc 2のM-4「LOWRIDE 4 LIFE (REMIX) -New Recording Version-」が「-New Recording Version-」として音質を飛躍的に向上させている上に、2ndアルバムにあった前後の楽曲のつなぎも無くなっているため、プレイリストなどに収録しやすいという利点があります。
Disc 2のRemixもすべて既発曲であるものの、それぞれのシングルを購入する手間を考えればお手軽に入手できるという利点もありますね。
どちらを選ぶかは自由ですが、どうしてもインストが欲しいという人でなければ本作を手に入れる方がお得かなと思います。
通常盤にはDisc 2が付いていないので、今から手に入れようと思う方はぜひDisc 2が付いた初回限定版を。


1つのシーンを作り上げたグループの間違いないベストアルバム、興味のある方は是非どうぞ。


↓Disc 1のM-4「Ride In Peace feat. II-J,Iz」。
www.youtube.com

↓Disc 2のM-1Very Special Weekend -REMIX-」。
www.youtube.com

The Hunger For More / Lloyd Banks

The Hunger For More


曲目リスト


1. Ain't No Click feat. Tony Yayo
2. Playboy feat. DJ Whoo Kid
3. Warrior
4. On Fire feat. 50 Cent
5. I Get High feat. 50 Cent, Snoop Dogg
6. I'm So Fly
7. Work Magic feat. Young Buck
8. If You So Gangsta
9. Warrior Part 2 feat. 50 Cent, Eminem, Nate Dogg
10. Karma feat. Avant
11. When The Chips Are Down feat. The Game
12. Til The End feat. Nate Dogg
13. Die One Day
14. South Side Story
15. Just Another Day
16. Take A Good Look


評価: ★★★★★★★★☆☆


皆さんお久しぶりです。仕事先で新たな場所で仕事することになり、奔走していました。
とりあえず今年の〆として本作を紹介させて頂きます。
今月に入って、結構聴いていた作品なので・・。


アメリカのNY出身のラッパー、Lloyd Banksの1stアルバム。
2004年6月29日発売。


HIP HOPミュージシャンは過酷な家庭で育った経歴を持つラッパーが多いですが(というかそもそもそれがHIP HOPという文化においては一種のステータスになっている)、このLloyd Banks(以後Banks)も例外ではありません。
Banksの両親が未婚の状態でBanksは産まれ、父親はほとんど刑務所にいるという家庭でした。
自身が所属するG-UNITのメンバーであるTony Yayo(以後Yayo)と同じストリートで育ったのです。

50 CENT(以後50)が友人であるYayoとラップグループのG-Unitを結成したのが1997年だったのですが、Banksは当時学生だったこともあってか共通点が少なく、そんなに一緒には活動していませんでした。
2000年に50が銃撃事件に巻き込まれ、地元に帰った際に、Banksが少しスタイルが変わった、ということをYayoから聞きつけ、Banksが自分たちのスタイルと合ったスタイルになったということを認識したのです。

それが結果的に彼のG-Unit加入に繋がったのは2001年9月10日の夜(偶然にも911の前夜)のこと。
とあるクラブの前で営業活動を終わった後にタムロをしていたメンバーに対し、何者かが発砲し、5人がケガをしたという事件が起こりました。
その内の1人がBanksだったのです。
その時に「過去に自分も撃たれた経験がある」50に対し、彼に付いていくことを心に決め、G-Unitへ加入することに。

50がG-Unitとしてリリースするミックステープに参加するようになり、様々なHIP HOPミュージシャンから注目を浴びることになります。
2003年にリリースされたG-Unitの1stアルバムがセールス的にも話題作になったこともあり、リスナーからも要注目のラッパーの1人になりました。
50からも「生涯のダチ」と言われるほどの信頼を獲得。


2004年にとうとう、初のソロアルバムである本作をリリースしました。
当然ながら話題作となり、100万枚以上のセールスを記録し、様々な賞にノミネート。
G-Unitの1stアルバムの成功により、ただでさえ名前の広がっていたBanksの名前をさらに音楽業界に刻み込みました。


さて、内容に。


Banksの特徴はまるで聴いているこっちも舌がもつれてしまいそうなくらいのラップさばき。
G-Unitの1stアルバムでも50やBuckがホニャホニャ、モッサリとしていたラップをしていただけに彼のスタイルも強烈なスタイルとして映っていました。
そんな彼の1stアルバムである本作。
50周辺のミュージシャンたちにもある聴きやすい雰囲気もあるものの、50やG-Unitの1stアルバムに比べるとハードな雰囲気を放っています。


まず銃声のイントロから始まる、POPさの欠片もないハードなビートにラップが乗っかるM-1Ain't No Click feat. Tony Yayo」から存分にヤバさがわかるというもの。
所々でYayoからの煽りを受けながら淡々とラップを乗せていくBanksがカッコいいのは勿論ですが、最後のバースで一気に暴れまわるYayoの鬼気がすごいです!
他の作品(50やG-Unitの1stアルバムやミックステープ)では余り存在感が無かった(ように個人的に感じた)Yayoですが、この曲ではすごくカッコいいと感じました。

その後もBanksのラップの味が楽しめるナンバーが続きますが、個人的にはM-3「Warrior」、先行シングルカットされたM-4「On Fire feat. 50 Cent」がお気に入りです。前者はちょっと歌心もあるタイトル名を言うHook、後者はHookでもひたすらラップを込めまくる様がとても聴きごたえあり。
後者はヒットしたのも頷けますね!(その次に控える50とSnoopが参加したM-5「I Get High feat. 50 Cent, Snoop Dogg」はそれぞれのバースはいいものの、50が担当するHookがイマイチでちょっとつまずいた感が否めないものの)


そしてこれまた先行シングルカットされたM-6「I'm So Fly」。
これはもうBanksだからこそできた曲と言っても過言ではないですね。
リリックの内容はひたすらビッグマウスなものの、包むようなシリアスなトラックとBanksのラップの相性が何とも言えない良さです。
この後に続くM-7「Work Magic feat. Young Buck」という飛び切りハードな曲に行く流れも聴いていて楽しい(まあ和訳を見るととても楽しいなんて言ってはいけない内容ですが・・)です。


M-6「I'm So Fly」と似たような路線のM-8「If You So Gangsta」を挟んだ後に控えるのがM-9「Warrior Part 2 feat. 50 Cent, Eminem, Nate Dogg」。
M-3「Warrior」の続編となるわけですが、本作の中盤のハイライトと言っていい楽曲ですね!
50にEminemとBanksのマイクリレー、HookをNate Doggが担当するという構成ですが、全員持ち味を生かしたパフォーマンスを披露。
シンプルながらもハードなトラックも半端なくカッコいいですし、この曲だけでも本作を聴く価値はあります。

M-10「Karma feat. Avant」はそれまでのハードな展開とは違いHookにAvantの歌を採用したちょっと異色な曲ですが、Banksとのラップはしっかりハマっています。
ドライブのBGMにはもってこいでしょうね!
最も続く楽曲が本当に重たい内容なので、使うとしたらこの曲のみにした方がいいかもと思いますが・・。(M-11「When The Chips Are Down feat. The Game」は思ったよりGameが目立っていませんでした。M-12「Til The End feat. Nate Dogg」は暗すぎるトラックとNate Doggのバックコーラスの調和がナイス)
後半はひたすらハードなトラックの上でBanksがラップするという内容。どの曲もトラックとBanksのラップの相性が抜群で、客演なしでもしっかりと聴き通せる内容になっています。


M-15「Just Another Day」、M-16「Take A Good Look」の2曲は国内版限定のボーナストラックです。
前者は臨場感のあるトラック、後者はシンプルなトラックの上でBanksが硬派なラップを乗せる楽曲。
どちらもBanksのラップが冴えた内容で、是非ともチェックしてほしい楽曲です。
ボーナストラックまでしっかりと楽しめる内容になってますよ。


全体を通してみると、流石に50と共にEminemらが惚れ込んだのもあり、Banksの才能をこれでもかと言うくらい感じられる内容になっています。
G-Unitが2003年から2005年まで一種のブーム状態になったのも頷けますね。
シングルの「On Fire feat. 50 Cent」(M-4)、「I'm So Fly」(M-6)だけかと思ったら大間違い。
シングルカットしてもいいと感じる曲が他にもたくさんあります!
もう15年近く前の作品ですが、今聴いても色あせてないですよ。


しかしながら、最近のBanksはもう音楽活動に対する意欲が減ってしまったらしく、今年のネットニュースで「またアルバムを出してくれよ」というファンに対し、SNSで「現実を見てくれ。もう俺のことを注目している奴なんて一人もいないよ」と発言したことが取り上げられていました。
これだけのいい作品を出せるラッパーなのに・・ちょっともったいない気もします。
最も、ダラダラ続けるよりはいいのかな、なんて気もしますが。


とりあえず、今聴いても全く色あせていない作品、興味があればぜひチェックしてください!

↓M-10「Karma feat. Avant」のPV。
www.youtube.com

PLATINUM TONGUE / DABO

PLATINUM TONGUE


曲目リスト


1. PLATINUMINTRO
2. MIC CHECK
3. マチガイナイ!
4. O-RE-BA-NA
5. BUNNY TALKS
6. PLATINUM TONGUE feat. SUIKEN
7. HI-LIFE (RELAXXX)
8. PINKY ~だから、その手を離して~ feat. Tyler
9. 拍手喝采
10. レクサスグッチ
11. 徒然草 feat. HUNGER, MACCHO
12. 愛しのサブリナ
13. R.E.C.ROOM (BAD TRIP)
14. DAIMONION FUNK (I GOT CHA)
15. JOLLY’S PIANO
16. この指止まれ feat. CQ
17. SNEAKER PIMP (TWO PIMPS IN A CYPHER MIX) feat. TWIGY
18. ZERO (MUKASEE MUKASEE MIX)


評価: ★★★★★★★★★☆


千葉県出身のラッパー、DABOの1stアルバム。
2001年6月13日発売。


90年代から活動を始め、日本語ラップの代表的グループであったNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの一員でもあったDABO。
何枚かシングルをリリースした後、NITROの1stをリリースした翌年に、フルアルバムの本作をリリースしました。
NITROの1stアルバムリリース後、メンバーはそれぞれソロ活動にも精力を入れるようになりましたが、SUIKENが1stアルバムをリリースしたちょっと後にリリースした形になりましたね。


本作からはリリース前にはM-9「拍手喝采」、M-18「ZERO」の2曲が先行シングルとしてリリース(後者はちょっとバージョンが違いますが)され、リリース後にはM-8「PINKY ~だから、その手を離して~ feat. Tyler」、M-10「レクサスグッチ」がシングルカットされています。

NITROの中でもずば抜けたラップスキルで一際有名だったDABO。そんな彼の1stアルバム。話題にならないはずがありません。
リリースされるや否や、様々な雑誌で高評価の嵐。
「日本版ILLMATIC(アメリカのHIP HOPの伝説的なクラシックであるNASの1st)だ!」なんていう声も上がるほど。
DABOのアルバムと言えばこれ!というリスナーも未だに多いはずです。


では、内容に。


4thシングルの感想を書いたときにも感じましたが、とにかくDABOのラップのスムーズさと聴き心地の良さは反則的。
今でも出てきたらびっくりさせられるであろうラップなのに、これが21世紀に入ったあたりに聴かされたというのは驚きでしかありません。


特に序盤はあまり目立たないクールでダークなトラックが中心で、客演もいないのにしっかりと聴きごたえのある流れになっています。
イントロを経てのM-2「MIC CHECK」なんて、4thシングルで聴いたときにはまあまあいい曲だな、としか思わなかったのに、この流れで聴くとめちゃめちゃカッコいい楽曲に聴こえます。
続くM-3「マチガイナイ!」、M-4「O-RE-BA-NA」もリリックこそオラオラ系俺様リリックですが、DABOのラップとトラックの相性がこの上なく抜群で、ついつい聴いてて首を振りたくなってしまいます。


スキットのM-5「BUNNY TALKS」を経てからのアルバム表題曲のM-6「PLATINUM TONGUE feat. SUIKEN」に行く流れ。
この煽りが非常に効果的で、くだらない喋りから一気に爆発力のある表題曲に行く展開がたまらないですね。
迫力あるトラックの上でのDABOとSUIKENのラップ合戦がかなりカッコいいです。
DABOとSUIKENが2人とも全盛期と言ってもいい頃だったこともあり、一曲として見てもしっかりと聴きごたえのある楽曲になっています。
そこからM-7「HI-LIFE (RELAXXX)」に行く流れもナイスです。
曲名からも予想できる通り、リラックスできるような雰囲気のトラックの上でのDABOのラップの転がしっぷりがとても気持ちいいです。


そして・・ここからはシングルカットされた曲が3曲連続で続くという気が抜けない展開!
3曲とも全くタイプの楽曲ですが、どの曲もDABOのラップの様々な魅力を詰め込んだ内容になっていますよ。
この3曲に関してあえて何も言いません。是非ご自身で聴いて堪能してください。

その次のM-11「徒然草 feat. HUNGER, MACCHO」はアルバム曲にも関わらず、シングル3曲にも全く引けを取らないマイクリレーです。
DABOとHUNGER、MACCHOそれぞれが見事な100点満点の仕事ぶりで、一度聴けば頭に楽しい雰囲気が残ることは間違いなし!

その後の客演なしの3曲も、DABOのスムーズなラップとクールなトラックが楽しめる流れ。本当にこの頃のDABOのフロウは天下一品。そう感じざるを得ないですね。


それからスキットのM-15「JOLLY’S PIANO」を経てからの客演付きの2曲。
客演はCQTWIGYですが、2人ともDABOに負けず劣らずの素晴らしい仕事ぶりを披露。
曲自体も良曲なのは言うまでもなくです。

先行シングルとして切られた「ZERO」のREMIXもDABOらしいですが、最後の〆としてはちょっと弱いかも。


久しぶりに聴いた本作ですが、率直に言って余りの内容の良さにびっくりです。
DABOのリリック自体は俺様俺様が中心で、そこまで中身があるとは言えないですが、そんなことすらマイナス要素になっていないくらい、ラップの聞き心地が異次元。
当時高評価の嵐だったのも、そりゃそうだろうと思ってしまいます。
最も・・DABOは本作以降もコンスタントにアルバムをリリースしていきましたが、リリースするたびにアルバムの評価は下がっていき、ビッグマウスと作品の内容が釣り合わなくなったことによってリスナーから冷めた目で見られていくという未来を知っている身からすると、ちょっと複雑な気分にもなりますが。
とにかくこのDABOの1stアルバムに関しては、絶対に1度は聴いてほしいですね。
今聴いても全く色あせてませんよ!


↓M-10「レクサスグッチ」のPV。
www.youtube.com

Street Dreams / Fabolous

Street Dreams


曲目リスト


1. Intro
2. Not Give a F**
3. Damn
4. Call Me
5. Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo
6. Bad Bitch
7. Why Wouldn't I feat. Paul Cain
8. Up on Things feat. Snoop Dogg
9. Sickalicious feat. Missy Elliott
10. This Is My Party
11. Into You feat. TAMIA
12. Change You or Change Me
13. Respect
14. Forgive Me Father
15. Never Duplicated
16. My Life feat. Mary J. Blige
17. Throw Back
18. Keepin' It Gangsta (Remix) feat. Styles, Jadakiss, M.O.P.
19. Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge
20. Can't Let You Go (Main Remix Original Version)


評価: ★★★★★★★★★☆


アメリカのNY出身のラッパー、Fabolousの2ndアルバム。
2003年3月4日発売。


2001年にリリースした1stアルバムが100万枚以上のセールスでチャート4位に食い込み、ゴールドディスクを獲得するという、新人としては異例の大健闘を果たしたFabolous
2002年からはNELLYAmerie、Big Tymersなどとのパッケージツアーを行い、アメリカ全土を回りつつも、2ndアルバムである本作の制作に取り掛かりました。


本作からはリリース後に3枚のシングルをリリースしましたが、その内の「Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo」(M-5)、「Into You feat. TAMIA」(M-11)はチャートでも上位を獲得し、2003年のHIP HOPシーンの代表曲とも言える存在に。
そんなこともあり本作も凄まじい話題作となり、前作を超える110万枚以上のセールス、チャート3位という快挙を成し遂げました。
2019年現在、Fabolousのアルバムでは最も成功した作品となっています。
見ての通り二枚目なこともあり、アイドルラッパーなどという批判もあったそうですが、セールスで結果を出した以上は彼の勝ちですね。


では、内容に。


Fabolousの特徴はちょっとヘロヘロとしたラップ。
例えて言うなら50 CENTのラップからかなり肉を削ぎ落としてアクも薄めた(和訳を見ると過激な詞はあるものの)という感じです。
好みは間違いなく分かれますね。


トラックは2000年代のHIP HOPサウンドがベースながらも、従来のHIP HOP層にも一般層にも受け入れられそうな、バランスがいい物が多いです。
そのトラックとFabolousのラップの相性も抜群です。

特に前半はそのFabolousとトラックの相性の良さをガツンと見せつけられる楽曲群が多めです。
イントロを経てのM-2「Not Give a F**」からM-4「Call Me」の流れは客演こそいないものの、捨て曲など無しです。
M-2「Not Give a F**」はダークな雰囲気のトラックの上でのFabolousのラップの乗りこなしが癖になります。M-3「Damn」、M-4「Call Me」はお洒落で可愛い雰囲気のトラックとHook、それとFabolousのラップの相性も抜群で、ドライブのBGMには持ってこいなこと間違いなしですね。

シングルとして切られた2曲のM-5「Can't Let You Go feat. Mike Shorey, Lil' Mo」、M-11「Into You feat. TAMIA」は、これはもうラッパーがFabolousでなかったら作れなかっただろうな、と思ってしまいます。それくらいFabolousとシンガー陣、そしてトラックとのハマり具合がすごいです。
確かにこれはヒットするのも必然だったと言っていいのでは!


中盤では比較的攻撃的な雰囲気の楽曲が多いですが、シングルとして切られたM-10「This Is My Party」を初めとして、ここでもFabolousのトラックへのアプローチが絶好調。
特にM-7「Why Wouldn't I feat. Paul Cain」~M-9「Sickalicious feat. Missy Elliott」までの流れはFabolousと客演メンバーとのマイク合戦が楽しめる、アルバムの中でもすごく聴きごたえのある展開です。一曲単位で見ても素晴らしいのは言うまでもなく。


M-12「Change You or Change Me」からは比較的ハードなトラックが多めです。
前半や中盤と比べるとタイトなラップが聴けます。
それでもHIP HOPが苦手な人でも聴けそうな雰囲気。
Hookも比較的強調されているのも聴きやすいポイントですね。
80年代や90年代のHIP HOPにこだわりが強い人は不快に感じるかもしれませんが、個人的にはノリやすくていいと感じましたね。
個人的にはM-16「My Life feat. Mary J. Blige」が後半のハイライト。
FabolousのラップとMary Jの歌いこなしがとても素敵で、シングルカットされた3曲にも何ら引けを取っていません。


M-17「Throw Back」からM-19「Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge」は本作のボーナストラック。
ボーナストラックなんて侮ってはいけません。
熱いマイクリレーが楽しめる1stアルバム収録曲のRemixのM-18「Keepin' It Gangsta (Remix) feat. Styles, Jadakiss, M.O.P.」、ボーカル使いがとてつもなく上手いM-19「Trade It All, Pt.2 feat. P.Diddy, Jagged Edge」なんて普通に名曲と言っていいレベルです。
M-20「Can't Let You Go (Main Remix Original Version)」は国内版限定のボーナストラックで、M-5「Can't Let You Go」のバージョン違い(Remixではありません)。
かなりハードな内容になっていて、これはこれで悪くはありませんが、個人的にはシングルで切られたバージョンの方がずっと好きですね。


最近では細々とした活動になり、「一発屋」「ミーハーに受けただけ」などという声もHIP HOPファンから挙がることもあるFabolous
しかし2ndアルバムである本作。久しぶりに聴いてみたら予想以上の内容の良さで、何度も聴き返してしまいました。
流石にFabolousの歴代アルバムでの最高セールス獲得は伊達ではありませんね。
HIP HOPをこれから聴いてみる人には最適なことは言うまでもありませんが、熱心なHIP HOPファンも久しぶりに聴き返してみては。
本当に傑作なので、興味のある方はどうぞ!


↓M-10「This Is My Party」のPV。
www.youtube.com