りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

俺に言わせりゃ / RHYMESTER

俺に言わせりゃ


曲目リスト



1. イントロ

2. 笑うな

3. ちょっとしたヒガミ

4. LIVE FROM 俺んち

5. AB・A・O・B

6. なんもやる気しねえ

7. 星に願いを

8. あわよくばパワー

9. ルーパー氏のテーマ feat. ジミー

10. ユニフォーマーズ宣言

11. ワンアンドオンリー

12. 愛のなんでなんだ

13. FUNKY GRAMMAR feat. EAST END, MELLOW YELLOW

14. ヴァイオレンス・ファンタジー

15. アウトロ

16. あわよくばパワー Real Love Mix



評価: ★★★★★★★★☆☆



早稲田大学で結成されたラップグループ、RHYMESTERの1stアルバム。

1993年4月25日発売。



RHYMESTERは1989年にメンバーの出身大学である早稲田大学のサークルでMC SHIRO(現宇多丸)とMummy-Dの2人が結成したグループです。

現在のメンバーはその2人とDJ JINの3人ですが、このアルバムをリリースした頃は、メンバーが比較的流動的だったらしく、DJ ICEにDJ CHOCOLATE、Dr.Looperもメンバーに名前を連ねていました。

ダンサーも従えた「RHYMESTER ALL STARS」としてライブを行っていた時期もあり、結構な歴史があります。もうすぐ結成30年を迎える彼らの歴史は伊達ではありません。



そんな経歴を経て、1993年にこの1stアルバム「俺に言わせりゃ」でデビューを果たします。

しかし、その頃はまだ日本語ラップのシーンというものがあってないようなものだったそうで、ミュージシャン本人たちがチケットを売っていたり、ライブでもお客より関係者が多いのは当たり前。

アメリカのLL COOL JM.C. HAMMERなどのHIP HOPが日本に入ってきて、日本でもいとうせいこうなどがラップを披露するようになってHIP HOPというジャンルが定着してはいったものの、まだまだ日本ではキワモノ扱い状態でした。

そのため、RHYMESTERキングギドラMICROPHONE PAGERスチャダラパーなどこの頃から活動していたラップミュージシャンたちは、手探りで自分たちの生きる道を開拓していました。

その手探っていた頃の時代の産物の内の1枚がこの1枚です。

残念ながら当時の他のラッパーたちの作品に比べて評価は芳しくなく、評論家からも酷評を浴びせられてしまいました。

しかしながらRIP SLYMEやKICKにとってはバイブル的な作品で、何度かこのアルバムの曲をライブでやらせてほしいと本人たちに言っていたそうですが、本人たちから一切許可が出なかったため、できなかったそうです。

というのもRHYMESTER本人たちにとっては、酷評した評論家たちと同じ気持ちで、このアルバムは黒歴史以外の何物でもなく、闇に葬ってほしい作品だそうです。

なのでライブでもこのアルバムの収録曲は一切やらず、ほとんどなかったことにされています。

でも、このブログではしっかり紹介させて頂きます笑



さて、内容に。



様々な生存策をとっていた当時の日本語ラップミュージシャンたちの中で、RHYMESTERがとったスタイルは、主に日常や思っていることをコミカルに描くスタイル。

ギドラのような政治的な部分ではなく、本当に日常の会話や出来事で感じている部分をそのまま赤裸にトラックに乗せています。

トピックはやる気が出ない状況とか、占いについてなど様々ですが、比較的男女関係が占めている割合が高いですかね。



MC SHIROとMummy-Dのラップはこの頃はまだトラックへの声の乗せ方、ライミングの仕方などが確立されておらず、自分たちのスタイルを模索していたのがこれ以上なく伝わってきます。

流石にこれ以降の作品の彼らのラップと比べると印象に残らないラップですが、それでもこれはこれで味があって個人的には好きです。



リリックの内容も上に書いたとおりのことがテーマながら「上手い!」と言えるようなリリックが随所にあり、結構楽しみながら聴けますよ。



一番面白いのは男女関係などをテーマにした曲ですね。

M-3「ちょっとしたヒガミ」なんかは、男女関係や上手くいっている人たちに対する嫉妬心をストーリーも用いて上手く描写されていて、誰でも一度は共感できる一曲になってますし、身体目当ての男の心を描いたM-7「星に願いを」、M-8「あわよくばパワー」は内容は最低としか言いようがないですけど、まさにこの頃の彼らにしか作れないパンチラインが連発されます。この頃からのRHYMESTERファンの中で名曲にあげられるのも納得の出来です。(しつこいようですが内容は本当に最低です笑)

ちなみに最後のこの曲のRemixは爽やかな雰囲気と最低なリリックの対比がたまらない1曲に仕上がっており、原曲に劣らない最低曲だけど名曲(?)です。

M-12「愛のなんでなんだ」も恋愛の意味不明さ、矛盾を投げかけたリリックで、中々現実味がある所をついており、うんうんと頷きながら聴けます。トラックもその内容を引き立てていて文句の付けどころなし。



それ以外のトピックでは、M-5「AB・A・O・B」。

何と血液型占いとそれを持ちかけてくる人間を強烈に批判している1曲。

今ではもう完全に科学的に全くの出鱈目だと証明されている血液型占いですが、もうこの頃からテーマに選んでいる彼らは勲章ものでしょう。

血液型占いで悪者にされやすいO型やB型の方なら、聴いていてスカッとしてしまうはず。



M-6「なんもやる気しねえ」もやる気がしない気持ちを非常に上手く描写していて、誰でも共感できてしまう内容。

早稲田大学出身の彼らなのに、ダメ人間のリリックを描かせると天下一品のリリックになるのですから分からないですね。



というように、普通の水準で、この頃の彼らのラップが嫌いでなければ結構面白い曲も多いんですよ、この作品。

確かに完成度という面ではイマイチ高くない点は否めませんけど、このアルバムの音源はこのアルバムでしか聴けませんし、レンタルでもいいので是非一度は聴いてもらいたい作品です。

果たしてこの感想を本人たちが見たらどう思うでしょうね笑



↓M-3「ちょっとしたヒガミ」。

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