曲目リスト
1. INTRODUCTION
2. FRIDAY feat. SYK, 大地, mai
3. MIAMI BEACH,FL 33139
4. GET READY TONIGHT feat. TWO-J, KOZ
5. LAS VEGAS,NV 89119
6. LET'S SIPPIN' ON feat. RICHEE, K-YO, GAYA-K
7. HOW WE PLAY THE GAME feat. Kayzabro, S.S.G
8. CHOP & SCREWED
9. DAMNAZZ feat. S.T.M
10. LOS ANGELES,CA 90059
11. THAT'S GANGSTA feat. T.O.P.
12. ATLANTA,GA 30303
13. MY RIDE (MY LIFE) feat. U-PAC, TWO-J
14. NASHVILLE,TN 37212
15. PLAYA NEEDS NO LOVE feat. CRAY-G, DAZZLE 4 LIFE
16. EPILOGUE
評価: ★★★★★★★★☆☆
日本のR&B、HIP HOP系の音楽を手掛けるプロデューサー、PIMP Gの1stアルバム。
2013年1月30日発売。
本作の名義はPIMP Gとなっていますが、SUBZERO、ICEDOWN、だめだめちゃんなど様々な名前を持っているPIMP G。
おそらく一番リスナーにとってピンとくるのはSUBZEROの名前でしょう。
OZROSAURUSやTOKONA-X、般若などといった日本のラッパーたちの作品は勿論のこと、AIや中島美嘉、久保田利伸、青山テルマなど数多くのシンガーたちの楽曲を手掛けてきました。
そんな彼の経歴は90年代の音楽シーンから始まります。
24歳の時に渡米してボストンの音楽院に入学し、在学中に地元の名士に資金提供を受けてビートの作成を開始。
やがてカルフォルニアでDr.Dre率いるレーベルのAftermathにスカウトを受けます。
そこからはDreの徒弟として働き、毎日のようにビートづくりにのめり込み。
激務ながらも充実した毎日を過ごしていた彼でしたが、2001年に発生した9.11による移民取り締まり強化を受けて日本に帰国。
そこからはプロデューサーとしての数多くの楽曲提供活動をメインに行っていきました。
上にも書いた楽曲の仕事はその活動だったわけです。
2013年の1月、DS455率いるHOOD SOUNDからPIMP G名義で1stアルバムである本作をリリースしました。
幅広く活動していたプロデューサーの1stアルバムであるのにも関わらず、ぶっちゃけ2013年当時はそんなに話題になっていなかった記憶があります。
上にも書いてある通り日本の西海岸系ラッパー・シンガーが主に所属していたレーベルのHOOD SOUNDからリリースされた本作ですが、2013年というともう日本の西海岸系ラップのムーブメントがだいぶ下火になりつつあった時期であり、日本の西海岸系のラッパーやシンガーを大量に起用した本作の人選はいささか時代をちょっと間違えた感も否めないですかね。
ブームが起こっていた2000年代に本作がリリースしていたらかなり話題になっていたのではと思います。
では、内容に。
PIMP Gはプロデュースを手掛けた楽曲たちを聴くと分かるんですが、非常に幅広いトラックを作れるトラックメイカーなんですよね。
和風なトラックもあれば如何にもなアメリカを意識したトラックもありと。
そしてHOOD SOUNDからリリースされた本作なんですけど、やはり日本の西海岸系サウンドメイン。
日洋の楽曲たちをふんだんにサンプリングし、アメリカを意識したであろうトラックで全てが構成されています。
アメリカのHIP HOPアルバムのイントロのようなイントロを経てのM-2「FRIDAY feat. SYK, 大地, mai」は派手な音使いが耳の残るクラブチューン。
キャピキャピした歌い方のSYKとmai、キザなラップを乗せる大地の相性はとてもよく、途中でのスクラッチを駆使した盛り上げ方も凄まじくカッコいいです。
M-3「MIAMI BEACH,FL 33139」は次のM-4「GET READY TONIGHT feat. TWO-J, KOZ」に繋ぐためのエントランス的なインスト。
M-4「GET READY TONIGHT feat. TWO-J, KOZ」はHookのボーカル使いがキャッチ―で、TWO-Jのスムーズなラップも悪くはないですがKOZの荒削りながらもタイトなラップがいい味出してます。
M-5「LAS VEGAS,NV 89119」はハンドクラップ系のインストで繋ぎ。M-6「LET'S SIPPIN' ON feat. RICHEE, K-YO, GAYA-K」はノリのいいトラックの上でのマイクリレー。
3人での合唱Hookも聴いていて楽しいですし、RICHEEのちょっと高めの声を生かしたスムーズなラップ、K-YOの澄んだ声でのラップ、GAYA-Kのガラガラ声のインパクトのあるラップと三者三様で何度聴いても飽きがこないです。
M-7「HOW WE PLAY THE GAME feat. Kayzabro, S.S.G」は先行シングルで切られた曲で、パーティチューンが並んだこれまでの流れとは一線を隠すレイドバックチューン。
落ち着いた雰囲気のトラックの上でのKayzabroとS.S.Gのラップは間違いないハマり具合。
トラック自体も様々な音がそれぞれの音を邪魔することなく混ざっていて聴きごたえがあり、先行シングルで切っただけはある曲。
M-8「CHOP & SCREWED」は電話の会話を編集しまくったスキットで、まあ女性の前では絶対に聴けません。
しかしこのスキットを経てのM-9「DAMNAZZ feat. S.T.M」→M-10「LOS ANGELES,CA 90059」→M-11「THAT'S GANGSTA feat. T.O.P.」の流れはもう本作のハイライトなんです。
M-9「DAMNAZZ feat. S.T.M」はHIP HOPではお馴染みの下品なトピックなんですけど、S.T.Mのメンバー全員の言葉選びが上手くて聴いていてニンマリしてしまいます。
M-10「LOS ANGELES,CA 90059」は色々な音を混ぜたインストで銃声で〆。
そこからM-11「THAT'S GANGSTA feat. T.O.P.」に行く流れがもうノックアウト間違いなし。トピックはよくあるそド不良シットなんですけど、とにかくT.O.P.のやりすぎなくらいのギャングギャングなキャラが十二分に発揮されてます。
この曲ではなんとPIMP G本人もラップを乗せており、ザラっとした耳障りのラップでこれまたいいアクセント。
お互いの良さがバリバリ出た1曲になってます。
M-12「ATLANTA,GA 30303」はちょっとテンポが速いインストですが、後半からゆったりとしたテンポに変わり、次の曲への橋渡しを担っています。
M-13「MY RIDE (MY LIFE) feat. U-PAC, TWO-J」は暗い雰囲気ながらも爽やかさを兼ね備えたトラックが素敵で、U-PACとTWO-Jのスムーズなラップもかなりの相性の良さ。
M-4「GET READY TONIGHT feat. TWO-J, KOZ」はTWO-Jのラップの印象が薄かったですが、こちらではU-PACもTWO-Jもいいバランスで仕事してます。
途中での小話もいいアクセントになっていて、本作でもかなり作り込んだ曲と言えますね。
M-14「NASHVILLE,TN 37212」は会話ネタを入れ込んだせわしないインストで、M-15「PLAYA NEEDS NO LOVE feat. CRAY-G, DAZZLE 4 LIFE」はノリのいいトラックですが今までの曲と比べるとちょっと音は地味。
最もD4LのT-Trippinがトークボックスも入れ込んでいるのでその不満は最後まで聴けばさっぱりなくなります。
M-16「EPILOGUE」はアウトロで、レイドバックしたトラックの上でなんとゆっくりボイスを使用。
ゆっくりボイスでリスナーへの感謝、そして仲間たちの作品の宣伝を綴ってアルバムは終わり。
こういうのを最後に持ってくるのは好感が持てますね。
上にも書いたように思い切りアメリカ寄りのトラックやトピックを全編に貫いた本作。
インストをふんだんに入れ込んでいるのもあり、1曲1曲がというよりは最初から最後まで1つのアルバムとしての作品という内容になっています。
16曲という曲数ながら40分足らずというちょうどいい長さというのもあり、程よい時間で純粋に楽しい時間を提供してくれますね。
PIMP Gの緻密な作品作り職人っぷりが全面に出た作品。アメリカかぶれだとかそういう言葉で切り捨てるのは簡単ですが、純粋の内容の質で見れば間違いなく快作。
見かけたら是非どうぞ。
↓本作のCM。何曲か試聴できます
www.youtube.com