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Bitter, Sweet & Beautiful / RHYMESTER

Bitter,Sweet&Beautiful


曲目リスト


1. Beautiful - Intro
2. フットステップス・イン・ザ・ダーク
3. Still Changing
4. Kids In The Park feat. PUNPEE
5. ペインキラー
6. Beautiful - Interlude
7. SOMINSAI feat. PUNPEE
8. モノンクル
9. ガラパゴス
10. The X-Day
11. Beautiful
12. 人間交差点
13. サイレント・ナイト
14. マイクロフォン


評価: ★★★★★★★★★★


どうも皆さんお久しぶりです。10月後半から仕事が忙しくなり、休日はオフしていたのでほとんどはてなに来てませんでした。
約1ヵ月半・・というかほとんど2ヵ月ぶりの更新ということで、今回は僕の中でもおススメの1枚をご紹介いたします。


早稲田大学にて結成されたラップグループ、RHYMESTERの10thアルバム。
2015年7月29日発売。


2013年に9thアルバムである前作をリリースしたRHYMESTER
活動休止を挟んだ後は積極的に様々な活動を行っていたRHYMESTERですが、前作から本作の間にも活動の手を緩めることはありませんでした。
2014年には活動休止後3枚のアルバムをリリースしたこともあって、活動再開後の2009年から2014年の楽曲をまとめたベストアルバムをリリースしました。
ちょうどこの頃は「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」が話題になり始めたこともあって、新規のファンも掴めたようです。
(本人たち曰く「俺らは宣伝に力入れても力入れなくても大して売上変わらない」らしいのでチャートなどでは他の作品と大差なかったようですが・・しかしそれはある意味すごいですよね)

そして2015年に事務所をNeOSITEからstarplayers Recordsに移籍。
移籍1発目としてメジャー13枚目のシングル「人間交差点/Still Changing」をリリース。

同年7月に移籍後では1発目であり、10thアルバムとなる本作をリリースしました。
前作から2年以上間が開いており、RHYMESTER史上最もインターバルが長くなったアルバムになりました。


さて、内容に。


RHYMESTERのアルバムの中でも時間をかけて作られた本作はコンセプトアルバムで、そのコンセプトはずばり「美しく生きること」。
さらに本作では若手(2015年当時?)の中でも有望株であるPUNPEEプロデュースの曲がリード曲となっており、客演もPUNPEEのみ。
PUNPEE色が強い1枚となっています。


まずM-1のイントロからHIP HOPらしからぬ美しいピアノのループでアルバムは幕を開けます。そしてそんな雰囲気からPUNPEEの一言でピシッと入るM-2「フットステップス・イン・ザ・ダーク」。
もうこの流れで圧倒されます。HIP HOPには珍しく暗い雰囲気での入りだしですが、RHYMESTERのMC2人のメッセージ性のある強いラップ、美しいピアノの旋律がすばらしく絡んでいて、この先も聴き進めたくなること間違いなし。
しかしこんなのはまだ序の口も序の口。この先にもっと素晴らしい展開が待っています。


先行シングルが切られたM-3「Still Changing」を挟んで、PUNPEE色が思い切り出たM-4「Kids In The Park feat. PUNPEE」。もうPUNPEEのHookとトラック、Mummy-D宇多丸ならではの深みがあるリリックが光るラップ・・すべてにおいて文句のつけようがなし。
聴いた瞬間名曲になること、保証します。
もうこの流れまで聴いたら、アルバムを聴き終わるまでこの世界から出られないはずです!


M-5「ペインキラー」はKREVAプロデュースで、詞は音楽を薬になぞらえるという面白い内容。
しかしながら宇多丸Mummy-Dも単純な音楽賛歌になっていないリリックを書いていて、中々怖い箇所もあります。
でもそこがトラックとも相まって、中毒性のある楽曲になっています。

M-6「Beautiful - Interlude」でまたしても美しいピアノのスキットを挟んだ後の、M-7「SOMINSAI feat. PUNPEE」はPUNPEEが最後のバースでラップでも参加。
宇多丸Mummy-Dの貫禄のあるラップが続いた後に声を張り上げ、その2人に全く負けていない臨場感のあるラップを披露するPUNPEEの力量の凄さを感じられます。

M-8「モノンクル」は「おじさん」というテーマを扱った楽曲ですが、2人とも本当に言葉選びが秀悦。一文字一文字も聞き逃したくないとさえ思えてしまいます。
気の抜けた雰囲気のHookとトラックも素晴らしいです。


M-9「ガラパゴス」はRHYMESTERが昔からテーマにしていた日本語ラップに対しての偏見を持つ人に対するメッセージソング・・・の側面もあるのですが、物事についての新しさを生み出すことの重要性を説いた内容で、これはHIP HOPだけでなく様々な面で必要なメッセージだと思います。
曲としても清々としたHookとバースの荒っぽさのギャップがたまらなく面白い曲になってます。
そしてM-10「The X-Day」は争いを繰り返す人間たちの愚かさをテーマにした楽曲ですが、よくある綺麗事を並べただけの楽曲ではありません。
かなり現実を上手く描写しており、どんな人間でもスッと心に入ってきそうな内容です。


M-11「Beautiful」は「美しさ」をテーマにした楽曲で、本作の中でも根幹となる楽曲となります。
本人たちは「このトラックにラップを乗せるのがとても難しかった」とのことですが、確かにこのトラックにラップを乗せるのは非常に難しいと思います。
ですが・・・2人ともこのトラックに対してフロウの面でもリリックの面でも最善のラップを乗せていると感じます。
それ以外何も言うことはなしです。

M-12「人生交差点」はM-3「Still Changing」と同じく先行シングルとして切られた1曲ですが、この位置に配置したのは大正解ですね。
M-11「Beautiful」からの流れの良さも相まって、物凄い魅力を感じます。勿論曲自体も名曲なのは言うまでもなく。


本作で最後を締めくくるのはM-13「サイレント・ナイト」からM-14「マイクロフォン」の流れですけど・・・もうこの流れは文句をつけられるものならつけてみろってくらい素晴らしい流れです。
2人の言葉選び、トラック、そしてその相性の良さ・・全てにおいて文句のつけようがありません。
特に後者の最後のMummy-Dのバースはもう聴くたびに身体が震えてしまう(←本当です)ほど。
ここまで素晴らしい終わり方を用意しているアルバムなんて、洋邦問わず数えるくらいしかないのでは。


2015年リリース当時に聴いて、その時から良い作品だとは感じていましたが、今月に久しぶりに何度か聴いてみたら改めて傑作中の傑作であることを再確認しました。
PUNPEERHYMESTERが組むと聴いて「どんな風になるんだ?」と思っていたリスナーも多かったと思いますが、本作は間違いなくその組み合わせで最善の結果が出せています。
Mummy-D宇多丸のリリックの深みを感じる言葉選び、トラックの上を巧みに乗りこなすフロウ、詞カードを見なくてもしっかりと伝わるメッセージ、PUNPEEのラップとトラックの面での好演、DJ JINやBach Logicを始めとするトラックメイカーたちの中毒性のあるトラックメイク・・そして最初から最後までの曲順。
全てにおいてこれ以上なしと言えるほどの名盤です。


自分でも文章がいつも以上にへたくそになっているのは自覚していますが、要するにこんな僕の感想を読むくらいなら是非チェックしてください。
聴いている時間が至高の時間になること間違いなしです。


↓M-4「Kids In The Park feat. PUNPEE」のPV。
www.youtube.com