りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

This Is Hip Hop / V.A.

https://www.discogs.com/ja/release/1068297-Various-This-Is-Hip-Hop
Amazonで取扱していないのでDiscogsのリンクを貼ります


曲目リスト


1. Doggy Dogg World / Snoop Doggy Dogg feat. Tha Dogg Pound, The Dramatics
2. Flava In Ya Ear / Craig Mack
3. Give It Up / Public Enemy
4. I'll Take You There / Pete Rock & C.L. Smooth
5. Passin' Me By / The Pharcyde
6. Let Me Ride / Dr. Dre
7. It Was A Good Day (Radio Remix Edit) / Ice Cube
8. Back In The Day / Ahmad
9. Can't Stop The Prophet (Pete Rock Remix) (Dirty) / Jeru The Damaja
10. On Point (Beatminerz Mix) / House Of Pain
11. Afro Puffs / Lady Of Rage
12. The ? Remains / Gangstarr
13. Fantastic Voyage / Coolio
14. Tic Toc / Lords Of The Underground
15. Sound Of Da Police / KRS-One
16. Method Man (Crazy C.s Suthun Fried Radio Mix) / Wu-Tang Clan
17. The B-Side / Masta Ace Inc.
18. Breakdown / Fu-Schnickens
19. Unbelievable / The Notorious B.I.G
20. The Most Beautifullest Thing In The World / Keith Murray


評価: ★★★★★★★★★☆


90年代のアメリカのHIP HOP楽曲を集めたコンピレーションアルバム。
1995年発売。


東海岸からはWu-TangやKRS-One、西海岸からはDr.Dre2Pac、などなど2023年現在でも伝説と称されるラッパーやグループが数多く活動していた90年代。
そんな時代の半ばにリリースされたのが当時のHIP HOPを集めたコンピレーションである本作です。
1995年といえばHIP HOPの悲しい歴史の代表格である東西抗争がかなり激化していた年でもありましたね。
しかしその反面HIP HOPが盛り上がっていた時期であるのも事実。だからこそ本作のような作品もリリースされたのでしょうからね。


では、内容に。


上にも書いたようにHIP HOPの東西抗争の時期真っ盛りな時期にリリースされた本作ですが、収録内容を見ると分かるように東も西も関係なく楽曲が選曲されています。
これが当時の東派、西派に分かれていたファンからはどう思われていたのか気になるところです。


幕を開けるM-1Doggy Dogg World」はSnoop Doggy DoggにTha Dogg Pound、The Dramaticsという豪華メンバー。
確かSnoopの1stアルバムから切られたシングル曲ですね。
落ち着いたクールな音の上に乗るSnoopの舐めるようなラップにTha Dogg Poundの硬派なラップ、HookでのDramaticsの哀愁漂う歌と全てにおいて相性は最高で楽しみながら聴けます。

Craig MackによるM-2「Flava In Ya Ear」もシンプルなワンループトラックながらもCraig Mackの隙のないラップでガッチリ聴ける曲となっており、もうこの流れから耳を掴まれることは必至。


M-3「Give It Up」はPublic Enemyで、ネタ感強めのトラックの上での軽快なラップが首を振りたくなりますね。
まさに90年代HIP HOPど真ん中という感じです。

M-4「I'll Take You There」はPete Rock & C.L. Smoothで爽やかなトラックながらも身体を動かしたくなるドラムの取り方がセンスの良さを感じさせます。
嫌味のないスムーズなラップもさることながら、Hookの歌も非常にいいアクセント。

M-5「Passin' Me By」はThe Pharcydeで歌心あるラップと硬派なラップの合戦構図が抜群の聴きごたえ。
続くM-6「Let Me Ride」はDr. Dre。まあこれはHIP HOP好きなら知らない人はいないくらい有名な曲ですね。
Tillを体現したようなトラックの上でのDreの歯切れのあるラップ、中毒性のあるHookでの歌と文句のつけようがない曲ですから当たり前ですけど。
何度聴いても飽きが来ない、まさに名曲です。

M-7「It Was A Good Day (Radio Remix Edit)」はIce Cubeで、ファンタジーな雰囲気のトラックの上での硬派なラップという対比が面白いです。
M-8「Back In The Day」はAhmad。まったりした雰囲気のトラックですがその上での隙間のないラップによって最後まで飽きずに聴けます。
シンプルなトラックでもあくまでラップによって飽きさせなくするというのはこの時代によく見られた手腕ですよね。


M-9「Can't Stop The Prophet (Pete Rock Remix) (Dirty)」はJeru The Damaja。
わちゃわちゃしたイントロから一気に冷たい雰囲気に変わる入りだしがインパクト抜群。その後のトラックもキレキレのスクラッチが入りまくりでノックアウトされること請け合い。

M-10「On Point (Beatminerz Mix)」はHouse Of Painで、とにかくラップの勢いが半端ではなく、アカペラで聴いてもノレるのではないかと思うくらいの熱量。
トラック自体はシンプルですが所々におかずとして入り込んでいる音がすごくいい働きをしていて、インストほしいなと思ってしまうくらいです。


M-11「Afro Puffs」はLady Of Rage。当時の西海岸を代表するフィメールラッパーですが、女性ながらも他のメンバーにも全く引けを取らない漢気を感じるラップです。
トラックの方も所々の音使いが見事で、Dreのクロニクルアルバムに入っていたのもそりゃそうだよなを思います。
こんなトラックの上に見事なラップを乗せるRageの力量も半端ないものですけどね。

M-12「The ? Remains」はGangstarr。
トラック自体はシンプルですがHookでのスクラッチがとんでもなくカッコいいです。ラップとの相性も文句なし。

M-13「Fantastic Voyage」はCoolioで、疾走感のあるトラックの上でのキレのいいCoolioのラップが聴きごたえ抜群。
Hookもラップなのですがキャッチ―な雰囲気も出していて、本作の収録曲でも流して聴いていてかなり印象に残る曲ではないでしょうか。
次のM-14「Tic Toc」はLords Of The Undergroundは最初から最後までラップで魅せるタイプの曲で、Hookでは曲名を生かしたインパクトあるラップが耳に残りますね。
所々のスクラッチもいいアクセントです。

ここまでの2曲は楽しい雰囲気が続きましたが、KRS-OneによるM-15「Sound Of Da Police」はガラッと雰囲気が変わり、鬼気迫るようなKRS-Oneのラップにグイグイ押されます。
タイトルがイントロやHookで連呼されるのは本当に存在感が凄いです。

M-16「Method Man (Crazy C.s Suthun Fried Radio Mix)」はWu-Tang Clan
あのHIP HOPを知るには避けて通れない1stアルバムの超有名曲である「Method Man」ですが、今回はRadio Mix。
ちょっと冷たい雰囲気のトラックになっていますが、原曲とは全く違った色を出していてこれはこれで名曲になっています。

M-17「The B-Side」はMasta Ace Inc.でシンプルなトラックながらもそれぞれのラッパーの個性あるラップ捌きで楽しく聴ける内容に。
M-18「Breakdown」はFu-Schnickensで、Hookは安定感あるラップですがバースの方のラップは結構危なっかしい乗せ方で心配になってしまいます(いい意味で)。
そのギャップが聴いてて飽きがこないんですけどね。


M-19「Unbelievable」はThe Notorious B.I.Gの有名曲。
様々なコンピに収録されているので知っている人は多いでしょうね。
勿論楽曲としてはラップもトラックも全てにおいて中毒性がある楽曲なわけですが、本作のこの流れで聴いてもご多分に漏れずカッコいい楽曲です。
本当に東西抗争は惜しいラッパーを亡くしたものです。

最後を〆るのはKeith MurrayによるM-20「The Most Beautifullest Thing In The World」。
落ち着いた雰囲気のトラックもMurrayのラップも煙たい感じで好きな人にはガッチリハマるでしょう。
最後の「Murry!」連呼も〆の曲っぽさがありいい感じです。


東西抗争の真っただ中にリリースされた本作。
東西共に聴き逃せない曲ばかり収録されており、まさに「This Is Hip Hop」というタイトルにふさわしい内容と言えます。
「地域に関係なくいいものはいい」というメッセージさえ込められているのではないか、という深読みをしてしまうくらいですね。

20曲ということでちょっと聴き疲れしてしまうかもしれませんが、90年代当時の「良質なUS HIP HOP」を詰め込んだ本作、見かけたら是非どうぞ。


↓M-16「Method Man (Crazy C.s Suthun Fried Radio Mix)」。
www.youtube.com