りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

Big Willie Style / Will Smith

Big Willie Style [Explicit]


曲目リスト


1. Intro
2. Y'all Know
3. Gettin' Jiggy Wit It
4. Candy feat. Larry Blackmon, Cameo
5. Chasing Forever
6. Keith B-Real I (Interlude)
7. Don't Say Nothin'
8. Miami
9. Yes Yes Y'all feat. Camp Lo
10. I Loved You feat. Valvin Roane
11. Keith B-Real II (Interlude)
12. It's All Good
13. Just the Two of Us
14. Keith B-Real III (Interlude)
15. Big Willie Style feat. Lisa "Left Eye" Lopes
16. Men in Black feat. Coko


評価: ★★★★★★★★☆☆


アメリカのペンシルベニア州フィラデルフィア出身のラッパー、Will Smithの1stアルバム。
1997年11月25日発売。


1987年にラップユニットであるDJ Jazzy Jeff & The Fresh Princeを結成してThe Fresh Prince名義でラッパー活動を開始。
同ユニットで世界的に大成功を収めた後には俳優としても活動を開始し、そちら方面でもひっぱりだこに。
1994年にユニットは解散して俳優としての道に専念したWill Smithですが、1997年にはWill Smith名義でラッパーとしてソロデビューを果たして1stアルバムである本作を発表。
大ヒット作になったのは言うまでもありません。
2024年現在では俳優としての認知が一般的なWill Smithですけど、ラッパーとしてのデビューの方が早いんですよね。


では、内容に。


DJ Jazzy Jeff & The Fresh Princeは聴きやすいトラックと馴染みやすいラップが定評のあるユニットでしたが、Will Smithの初ソロ作の本作の特徴もそれに感じます。
Will Smithのスムーズなラップはどんな人でもすんなりと聴けるでしょうね。


イントロを経てのM-2「Y'all Know」はシンプルなトラックの上でWill Smithが流暢にラップをキックしていく様がとても聴いてて気持ちいいです。
所々でのグイグイくる音使いもズシンと耳に来て残りますね。
続くM-3「Gettin' Jiggy Wit It」も随所にスクラッチが入りまくったトラックがカッコいいシングル曲。
トラックの元ネタはSister Sledgeの「He’s the Greatest Dancer」でイントロの元ネタはThe Bar-Kaysの「Sang and Dance」。
Hookのコーラスが如何にもパーティラップという感じでいい味出してます。どっしりとした乗りこなしのラップも言うことなし。

M-4「Candy feat. Larry Blackmon, Cameo」はLarry BlackmonとCameoが参加。
Will Smithの歯切れのいいラップの間にHookで挿入されるシンガー2人が担当するHookは贅沢で、ノリの良さと爽やかさを兼ね備えたような作り方が見事。

M-5「Chasing Forever」はStevie Wonderの「Ribbon In The Sky」をネタ使い。
上品な雰囲気のバラード曲を惜しみなく使いその上を駆け抜けるWill Smithのラップは雰囲気にバシッとハマってます。
随所でのStevie Wonderの歌もいいアクセントになっていてラップ曲なのにきちっとした品行方正さを感じますね。


会話スキットを挟んだM-7「Don't Say Nothin'」は楽しい雰囲気だったそれまでとは打って変わってちょっとシリアスな雰囲気。
Will Smithも全体的にせわしなくラップを乗せており、Hookではゴニョゴニョ声になるという他にない作り。
その作りのお陰でHookもバースもそれぞれ存在感を出しているのでつくづく作り方が上手いと実感しますね。
随所でのスクラッチも危険な雰囲気を増大させていていい役割。

M-8「Miami」はシングル曲で、The Whispersの「And The Beat Goes On」をネタ使い。
流れるようなトラックでWill Smithのラップもそれに絡むようにスムーズ。
車で浜辺付近を走る際には絶対にカーステに入れてほしい一曲ですね。

M-9「Yes Yes Y'all feat. Camp Lo」はCamp Loが参加。
Camp Loの出番はHookとイントロだけなんですけど、トラックの雰囲気にこの上なく合っているので存在感は凄くあります。
こちらも車で浜辺付近を走る際には・・なんですが、M-8「Miami」は晴れている日中で、こちらは夕べの浜辺に向いてそうな気がしますね。


M-10「I Loved You feat. Valvin Roane」はValvin Roaneが参加。
Will SmithのスムーズなラップとValvinのねっとり絡むようなラップがやばい化学反応を起こしており、インパクト抜群です。
会話スキットを経てのM-12「It's All Good」はシンプルなトラックなんですけどそれだけにWill Smithの隙間のないラップが聴きごたえあり。
トラックはシンプルながらもリズムが癖になる感じで聴いているだけで体を揺らしたくなること必至。

M-13「Just the Two of Us」はシングル曲でHook以外のすこしノリにくいリズムの取り方が特徴的。
その上に難なくラップを乗せる力量は流石で、随所での歌もいいアクセント。


会話スキットを経てのM-15「Big Willie Style feat. Lisa "Left Eye" Lopes」はLisa "Left Eye" Lopesが参加で、元ネタはEarth, Wind & Fireの「Something Special」。
Left Eyeの出番は3バース目とHookのみですが可愛い声のラップは存在感がすごくてガッチリWill Smithと組んで作ったという感じです。
どちらもトラックとの相性良し。

〆るのはM-16「Men in Black feat. Coko」でCokoが参加したシングル曲。
Cokoの爽やかながら芯のある歌声はWill Smithのラップとも相性抜群で、綺麗に曲を引き締めています。
アルバムの〆としてもかなりいい感じにまとめ上げているのでは。


全体的を通して丁寧に作られたアルバムになっています。
ラップもトラックも馴染みやすく、客演も全員がいい仕事ぶり。
とびぬけた名曲こそないものの、最初から最後まで聴きごたえがある良曲が並んで飽きない作品です。
Will Smithが俳優としてだけでなくラッパーとしても確かな実力があるのを実感してください。
見かけたら是非チェックを。


↓M-8「Miami」のPV。
www.youtube.com

Sin / ZANG HAOZI

SIN


曲目リスト


1. Lost'in Bad Game
2. Door Man feat. AK-69
3. 自由を生きる者たちへ
4. Represent dogs feat. HOKT, TWO-J, RICHEE, CITY-ACE
5. 街
6. Skit
7. Underground Casino
8. 名もなき者の詩
9. カーチェイス
10. Answer
11. 手紙 feat. EL LATINO, SHINTAI
12. E.D.E.N
13. Precious memory for two of us
14. NEVER CHANGE feat. 籠獅
15. Dear Juliet feat. BIG RON
16. 儚き宇宙…
17. 不滅のMelody


評価: ★★★★★★★☆☆☆


福岡県福岡市を拠点として活動するラッパー、ZANG HAOZIの2ndアルバム。
2010年7月21日発売。


ZANG HAOZIは宮崎県出身ですが拠点を福岡県福岡市として活動しており、同市で結成されたラップグループであるSHITAKILI IXに参加。
2001年にリリースされたSHITAKILI IXの1stアルバムで自身のラップを全国に初披露した後、DS455を筆頭に様々なラッパーやDJの作品に客演参加。
2006年にはインディーズで1stアルバムをリリースし、顔を広げていきます。
2009年にリリースされたラップアルバムの中でも屈指の好セールスを記録したAK-69の5thアルバムに客演参加したことで一気にその名前の広がりが加速し、2010年にはMS Entertainmentと契約。
2ndアルバムである本作でメジャーデビューを果たしました。


では、内容に。


ZANG HAOZIの特徴は澄んだ低音の声ですが、声を張り上げることもあれば淡々としたラップをすることもあり割と器用な乗せ方をするラッパーです。

ピアノのイントロから爆発力のある音展開に変わるトラックでガッチリと耳を持っていくM-1Lost'in Bad Game」でアルバムはスタート。
その上に乗っかるHAOZIのラップも熱量を感じるもので入りだしとしてはまずまずと言ったところ。

M-2「Door Man feat. AK-69」はHAOZIの名前を広げた人物であるAK-69とのタッグ。
どちらもアグレッシブさを感じる聴きごたえがあるラップを聴かせてくれます。
ただHookがAK-69の歌で悪くはないんですがHookもアグレッシブにラップのみで押し切ればネクストレベルに行けた感も。


M-3「自由を生きる者たちへ」はガンガンに効かせたギターが印象的な激しいトラックの上でのメッセージソング。
甘いラップでは音に負けてしまいそうなくらい激しいトラックですがHAOZIもがなるようなラップを乗せてしっかり応戦。
路線的にはM-1Lost'in Bad Game」と似たような感じですけどこちらはHookも臨場感があるので個人的にはこっちよりです。
中盤でのスクラッチもかなりカッコよく、聴いた後には爽快感がある楽曲です。

M-4「Represent dogs feat. HOKT, TWO-J, RICHEE, CITY-ACE」はHOKT、TWO-J、RICHEE、CITY-ACEが参加。
如何にも西海岸風なクールなトラックの上でCITY-ACEの歌Hookを挟みながら他4人でマイクを回していくマイクリレーもの。
全員声質が違うのもあって最後まで首を振りながら楽しく聴けます。
この客演チョイスはまさに正しかったと言えますね。

M-5「」は哀愁漂うトラックの上でのゲットー哀歌で、リリックの内容はまさにUSのギャングスタラッパーの直輸入。
HAOZIの貫禄のあるラップ捌きはリリックとトラックの雰囲気にバシッとハマっていて、Hookでのおどろおどろしい雰囲気も癖になります。


スキットを経てのM-7「Underground Casino」は曲名の通り裏社会でのカジノをテーマにしたリリック。
緊迫感のあるトラックとHAOZIの淡々としたラップが相性バッチリで、Hookの作り方が上手くゾクッとしてしまうこと請け合い。

M-8「名もなき者の詩」は自分の境遇を嘆きながらも立ち上がろうとするもう一歩ソング。
内容的にはM-3「自由を生きる者たちへ」に近いですが、Hookの臨場感の面であちらに分がありです。

M-9「カーチェイス」はエンジンの音を入れまくったイントロからしインパクトが強いですね。
その上に乗っかるHAOZIの大げさなラップも雰囲気にガッチリハマっていてハラハラしてしまうこと必至です。

M-10「Answer」は爽やかなトラックで雰囲気がこれまでとガラッと変わります。
HAOZIの歯切れのいいラップと落ち着いたHookでの歌唱がスッと入ってきますね。

M-11「手紙 feat. EL LATINO, SHINTAI」ではEL LATINO, SHINTAIが参加。
HAOZIの荒い激情なラップとEL LATINOの流れるようなスムーズなラップはどちらもいい仕事ぶりで、HookでSHINTAIの艶のある歌声が華を添えます。

M-12「E.D.E.N」はシリアスな雰囲気のトラックで序盤は淡々としたラップで、後半になると感情を爆発させるという構成がインパクト抜群。
後半でもちょっとラップは入りますが。

M-13「Precious memory for two of us」はガンガンに色々な音を入れまくった激しい音の上での唸るようなHAOZIのHookがROCKぽい雰囲気。
ラップでは澄んだ声のラップを披露しているので切り替えの上手さが光っていますね。


M-14「NEVER CHANGE feat. 籠獅」は籠獅が参加。
とにかく籠獅のラップ捌きが上手くて耳に残りますね。リリックの面でもガシッと心に来る言葉を選んでいて光るものを感じます。
HAOZIのラップも悪くないんですが籠獅の印象が強いです。

M-15「Dear Juliet feat. BIG RON」はBIG RONが参加。
HAOZIの硬いライミングのラップはBIG RONの水っぽい歌声と相性は抜群で、BIG RONの歌が曲中でいいアクセントになっています。
センチメンタルなトラックとBIG RONの歌も見事にハマり具合。


M-16「儚き宇宙…」は宇宙をテーマにした壮大な楽曲でシリアスな雰囲気。
最後を〆るM-17「不滅のMelody」はHIP HOPではお馴染みの成り上がり物。
突き進んでいくような前向きな雰囲気があって聴いていて元気をもらえます。途中での声出しも〆感があって○。


ZANG HAOZIのメジャーデビュー作となった本作。
ガンガンな激しい楽曲もあれば穏やかな楽曲もありますが、ハードな曲の割合の方が少し高いですかね。
HAOZIのラップは芯がしっかりしていてどんなサウンドに負けない太さを持っているので、ガンガンギターなサウンドが多くなったのは分かるんですけど後半になるとちょっとそれが飽きてきますね。
ラップに関しては日本の西海岸系のラッパーの中でも強いラップができるラッパーだと感じているので、強烈なサウンド以外にも幅広いサウンドでやれるはず。
実際本作でもガンガンな楽曲以外の楽曲は良曲揃いですし、他の作品ではもっと幅広いサウンドで彩っていることを期待しています。
本作でもM-5「」やM-15「Dear Juliet feat. BIG RON」など良曲が収録されているため、チェックはしていただきたいですね。
まずは試聴を。


M-1Lost'in Bad Game」のPV。
www.youtube.com

A Vision / Jaguar

JAGUAR


曲目リスト


1. Up and Down
2. But Tomorrow
3. I Quit
4. Coming Alive
5. Together
6. Into Yesterday
7. A Vision
8. Feeling Free
9. Sweet Soul Music
10. Nothing
11. Better Blue
12. Closer to the End


評価: ★★★★★★★☆☆☆


イギリスのロンドンで結成されたバンド、Jaguarの1stアルバム。
1998年3月15日発売。


Jaguarはロンドンで結成されたバンドで、ギターとボーカル担当のMalcolm、ドラム担当のTam、ベース担当のJulianからなります。
結成されたのは1995年後半でしたがその際にはMalcolm以外のメンバーは別人で、そのオリジナルメンバーで活動していた1996年7月にワーナーブラザーズと契約。
コンピレーションカセットに「But Tomorrow」(M-2)を提供してデビューを果たします。
それが話題になったことでロンドンを中心に様々なライブ活動を展開して順調に支持を得ていくも、バンド内の人間関係がこじれたことでMalcolm以外のメンバーが全員脱退。
直ぐにMalcolmは再結成に向けてメンバー探しを行い、TamとJulianを加入させることに成功。
イギリス国内を回るツアーと並行しながらシングルのリリースを行い、1998年に一足先に日本で1stアルバムである本作をリリースしました。(イギリスでは1999年にリリースされた模様)
期待されていた新人グループでしたが1999年に解散したため、本作がJaguarの唯一のアルバムとなっています。


さて、内容に。


作詞作曲は全てMalcolm本人が手掛けているということですが、正統派なサウンドな楽曲と優しい雰囲気のサウンドな楽曲を並行してアルバムを構成している印象ですね。


アルバムのスタートを告げるM-1Up and Down」は静かな入りだしから急にインパクトのあるサウンドに変わるイントロが掴みとしては中々。
続くM-2「But Tomorrow」は上にも書いたように一番最初に発表された曲で、ギターを基調としたちょっと優しい雰囲気。
Malcolmのボーカルはちょっとスモーキーな感じで好みは分かれそうですね。
前者もインパクトのあるサウンドで悪くはないんですけど後者のようなちょっと聴きやすい雰囲気の方がMalcolmの歌には合っていると感じます。

M-3「I Quit」はこれまた優しめの雰囲気でMalcolmの歌を生かした楽曲。
随所での音の入れ方がサウンドの厚みを増していて、聴きごたえがある楽曲に仕上がっています。

M-4「Coming Alive」はベースの音が強烈で、本作の中ではハードなサウンド
対訳を見ると結構強烈なラインがあるので是非対訳と一緒にお聴きください。
M-5「Together」は路線的にはM-3「I Quit」と似ていて、Malcolmの優しさと情熱を合わせたような歌いまわしが斬新。
対訳を見るとパートナーに対するメッセージソングで、内容的にこの歌い方はとても合っていると感じます。


M-6「Into Yesterday」では今度はギターの音を始めとするすべての音が強烈。
Malcolmもそんなサウンドに負けないように本作の中では声を結構張り上げています。
まるでジェットコースターのような臨場感があるサウンドなので、インストでも聴いてみたいですねこの曲。

M-7「A Vision」は本作の表題曲で、壮大かつ繊細な雰囲気。
Malcolmのボーカルが語り掛けるような感じで、サウンドとの相性が最高です。
表題曲なだけあってかなり気合を入れたのが伝わりますね。

M-8「Feeling Free」は対訳を見ると聴く人に対する暖かいメッセージソング。
Hookではちょっと強烈なサウンドになるものの、それ以外の歌がのるパートではサウンドは抑え目にしていて歌を聴きやすくしています。
内容に合わせてこのようにサウンドの構成をしっかり変えるのはセンスの良さを感じます。

M-9「Sweet Soul Music」はうねる様なサウンドインパクト強いです。
その上でのMalcolmの乗りこなしぶりも流石なもので、本作でのサウンドが強烈な曲では一番の出来と感じます。

次のM-10「Nothing」も似たような感じですけどサウンドは正統派という感じです。


M-11「Better Blue」はちょっとシリアスな雰囲気のサウンドですが、全体の構成がちょっと普通過ぎて余り印象に残らず。
最後を〆るM-12「Closer to the End」は語り掛けるような歌い方とHookでの華やかな音使いが印象的。
〆としては良い感じで終われたのではないでしょうか。


Jaguarの最初で最後のアルバムとなった本作でしたが、Malcolmの声はどちらかといえば優しい雰囲気の楽曲の方が活きていますね。
Malcolmの声はどちらかといえばROCKよりもエレクトロとかの方が向いているんじゃないかと思います。
優しい雰囲気の楽曲メインで行けばもっといい内容になった気がしますが、本作は1stアルバムだったので彼らにとってはどっちの方がいいかという実験的な意味もあったのかもしれません。
最もハードなサウンドでもM-9「Sweet Soul Music」のような良曲もありますし、優しい雰囲気の楽曲はどの曲も良曲揃い。
これらの楽曲を手に入れるだけでも手に入れる価値はあるのでは。
まずは試聴を。


↓M-7「A Vision」。
www.youtube.com

zero soul seven V / 0 SOUL 7

zero soul seven V


曲目リスト


1. Get Along
2. お前のままに
3. Ride On feat. シュビドゥバ
4. My Fault
5. skit L→R
6. Home
7. ウェディング


評価: ★★★★★★★★☆☆


2005年から活動開始したラップグループ、0 SOUL 7の5thアルバム。
2009年6月24日発売。


2005年にMCのBABE.RYOTA、シンガーのSun-High、DJの DJ TSUNEというメンバーで活動開始した0 SOUL 7。(TSUNEは後に脱退した模様)
2006年にインディーズデビューを果たして3枚のアルバムをリリースし、2008年にメジャー1stシングルをリリースしてメジャー進出。
2009年には1月に早速4thアルバムをリリースしたのですが、その5か月後に5thアルバムである本作をリリース。


さて、内容に。


0 SOUL 7はジャンル的にはHIP HOPに入るみたいですが、いい意味であまりそれを感じさせないですね。
RYOTAの荒い声のラップと透き通るようなSun-Highの歌声はこのうえなく抜群です。


M-1Get Along」は優しいギターのイントロが非常にキャッチ―で、そこに乗るちょっと疾走感のあるトラックが程よいスタート。
序盤のRYOTAのラップの後に控えるSun-Highの爽やかな歌Hookから一気に惹きこまれること間違いなし。
リリックの内容も音楽に対する姿勢が伝わってくる内容で、この曲を聴いて彼らに好感を持つことは必至。

続くM-2「お前のままに」はリリックの内容は友情もの。
風が抜けるようなトラックの上でのRYOTAとSun-Highの響きがいいライミングがとても心地よく聴けます。
優しい雰囲気が2人の歌とラップによく合います。


M-3「Ride On feat. シュビドゥバ」はシュビドゥバが参加しており、こちらは本作では唯一といってもいいパーティチューン。
ガラっと雰囲気が変わりました。
全員歯切れのいいラップをマイクリレー形式で聴かせてくれ、スクラッチを大量に入れ込んだトラックも聴きごたえ抜群。
リリックの内容も嫌味がなくて本当に楽しく聴けます。

M-4「My Fault」はリリックの内容を見ると自分の内情に向き合うというUSのHIP HOPでありそうな内容。
RYOTAの声質がよく内容にマッチしていて、Sun-Highの歌もいいアクセント。
USのHIP HOPにありそうな内容と言ってもアメリカに被れたような言葉選びではなく、日本人でも誰でも思い当たりそうな言葉を選んで乗せているため共感しやすい内容になっています。

会話スキットを挟んだM-6「Home」はいつも自分を支えてくれる人へ向けた感謝ソング。
曲名を見ると家族に対する感謝ソングを連想してしまいそうですが、リリックを見ると向けている人物が誰かは分からず、恋人や友人に対しても成立するメッセージソングですね。
RYOTAも後半でちょっと歌ってみるなど優しい雰囲気を出しており、荒い声質なのにここまですんなりトラックに順応してしまうのは凄いですね。


最後を〆るM-7「ウェディング」は曲名の通り結婚ソングで、結婚する2人に対してのメッセージソング。
ストリングスをメインにした壮大な雰囲気のトラックはリリックの内容と2人の声との相性がバッチリで、RYOTAのラップは声的に浮きそうなんですがこれまたすんなり馴染んでいます。
RYOTAのラップは最後にも入るんですがそのラップを経ても壮大な雰囲気は途切れることはないですからね。
〆としてはかなり〇です。


このジャケットを見た時はよくあるラップアルバムかなと思いましたが、中身を聴いてみると予想以上に聴きやすくて心地よいサウンドが満載の内容でした。
DJ TSUNEの馴染みやすいトラック、RYOTAの荒い声質ながらも順応力の高いラップ、Sun-Highのとても綺麗な歌声が見事に拮抗してこのグループにしか作れない雰囲気が出ています。
どんな方にもお勧めできる作品。
2009年はGReeeeNやLGYankees、湘南乃風にLOOZなど似た系統で知名度のあるミュージシャンがアルバムをリリースしたのもあってかそれらに埋もれて余り話題にならなかった作品ですけど、内容的には当時の彼らの作品に全く引けを取らない内容でしょう。
見かけたら是非どうぞ。


↓M-6「Home」のPV。
www.youtube.com

God's Plan / G-Unit

topmixtapes.com


曲目リスト


1. Words From Eminem / Eminem
2. Catch Me In The Hood / G-Unit
3. Your Not Ready / G-Unit
4. Gangsta'd Up / G-Unit
5. If Dead Men Could Talk / 50 Cent
6. Banks Workout Pt.2 / 50 Cent & Lloyd Banks
7. Crazy / 50 Cent
8. 187 Ya Yo / 50 Cent & Tony Yayo
9. The World / Governor & 50 Cent
10. Short Stay / 50 Cent & Lloyd Banks
11. Minds Playing Tricks / Tony Yayo
12. Niggas / The Notorious B.I.G. feat. 50 Cent
13. Tainted / 50 Cent & Tony Yayo
14. Ching Ching Ching / 50 Cent & Tony Yayo
15. Work It Remix / Missy Elliott feat. 50 Cent


評価: ★★★★★★★★☆☆


アメリカのNYで結成されたラップグループ、G-Unitのミックステープ。
2002年11月1日発売。


中心メンバーの50 Cent(以後50)が2000年に銃撃により音楽業界から追放されたことで音楽活動の幅が狭まったものの、2001年にLloyd Banks(以後Banks)が加入し3人組となったG-Unit。
再起の為2002年に入ってからミックステープを着々とリリース。その活動がDreとEminemの目に止まり、2003年のブームに繋がっていくわけです。
その2002年にリリースしたミックステープの内最後にリリースされたのが本作になります。


では、内容に。


構成としてはこのようなミックステープでは時々あるビートジャック物。先人たちの名曲のトラックの上でG-Unitメンバーが客演も交えながらラップをかます内容となっています。

イントロを経てのM-2「Catch Me in the Hood」の元ネタはEminemの「8 Mile」。
50の「Wanksta」も確か同名映画のサントラに収録されていましたね。
緊迫感溢れるトラックの上でのマイクリレーで全員が持ち味を如何なく発揮。
中でも先陣を切るBanksの隙間ないラップはかなりぶっ飛ばされます。
最後の女性の歌声もかなりいいアクセントになっていてスタートとしては十分。

続くM-3「You're Not Ready」の元ネタはBeanie Sigelの「The Truth」で、M-4「Gangsta'd Up」の元ネタはTha Eastsidazの「G'd Up feat. Butch Cassidy」。
この2曲は50主導の曲でHookではこの頃の50の大きな特徴である耳に残るHookが楽しめます。
YayoとBanksのラップもいいアクセント。


G-Unitメンバー全員揃い踏みの楽曲はここまでで、以降はメンバーのソロ曲やデュオ曲が続きます。
M-5「If Dead Men Could Talk」の元ネタはThe Notorious B.I.G.の「My Downfall」で、50のソロ。
50の曲では珍しくHookがBiggieの声ネタスクラッチで、50はバースのみを披露しています。
トラックとの相性がいいため50のバースだけでも十分楽しめますし、Hookの声ネタスクラッチもそれ自体がカッコいいです。

M-6「Banks Workout Pt. 2」の元ネタはOutsidazの「Don't Look Now」で、マイクは50とBanksの2人。
とは言っても50はイントロとアウトロでMC的な役割をするだけで、ほとんどBanksのソロ曲です。
とにかく隙間なくまくしたてるようなBanksのラップが詰め込まれた展開はジェットコースターのようで、臨場感があるビートジャックに仕上がっています。
最初と最後の50のMCもアクセントとしては〇。


M-7「Crazy」の元ネタはBathgate & Fabolousの「Just Don't Stop」で50のソロ。
もうこの頃にはホニャホニャしたラップを操るようになっていた50ですが、この曲では隙間ないスムーズなラップを披露しています。
2分もない曲なんですけどM-6「Banks Workout Pt. 2」のBanksと同じく徹底的にラップを詰め込んでいるので満足度は高いです。

M-8「187 Yayo」の元ネタはDr.Dre & Snoop Doggの「Deep Cover」でマイクは50とYayoの2人。
構成としてはM-6「Banks Workout Pt. 2」と同じく50はMCのみでラップを披露するのはYayoのみ。
危険な雰囲気のトラックの上でのYayoの隙間ないラップは他メンバーと同様聴きごたえは抜群。
Hookでの元ネタサンプリングも楽しく聴けます。

M-9「The World」の元ネタはBiggieの「The World Is Filled... feat. Too Short, Puff Daddy」で50とGovernorがマイク担当。
本作では唯一シンガーを迎えた曲で、Governorの爽やかな歌がかなりいいアクセント。50ののっそりしたラップも悪くないですがGovernorの歌に比べるとちょっと印象薄め。


M-10「Short Stay」の元ネタはAngie Martinezの「 If I Could Go feat. Lil' Mo & Sacario」でマイクを握るのは50とBanks。
50は序盤のみラップをした後はHook担当に回り、ラップはBanksが基本担当しています。
しかしBanksが耳を惹くラップを披露している途中で次の曲に移ってしまうのでもうちょっと聴かせてほしかったです。
次のM-11「Minds Playing Tricks」の元ネタはGeto Boysの「Mind Playing Tricks on Me」でこちらはYayoのソロ。
HookはなしでYayoが隙間なくラップをするんですけど1分半もないので繋ぎ的な役割という感じがします。


M-12「Niggas」の元ネタはThe Notorious B.I.G.の「Niggas」でマイクはThe Notorious B.I.G.と50。
Biggieの細かい捌きを見せるラップと50の気怠いラップという組み合わせは非常に面白く、これはアイデア勝利ですね。

M-13「Tainted」の元ネタはSlum Village & Dweleの「Tainted」でマイクは50とYayo。
どちらかといえば50主導の曲でHookやBridgeでは50の独特な歌が楽しめます。
M-14「Ching Ching Ching」の元ネタはMs. Jadeの「Ching Ching feat. Timbaland, Nelly Furtado」でこちらもマイクは50とYayo。
Yayoがラップ、50がHookという感じで棲み分けているのでどちらもいい仕事ぶりを堪能できます。
他のG-Unit絡みの曲では聴いたことない雰囲気なので、これ目当てにしてもいいのでは。


最後を〆るM-15「Work it(Remix)」はMissy Elliottの同名曲のRemixで、Missyのアルバムにも収録されたようですね。
一応50のラップは入っているんですけど、少し入っているくらいなのでほぼMissyの曲です。
アルバムの雰囲気に合っているかというと微妙ではあるので、これはボーナストラック的な意味合いなんでしょうね。


上にも書いたように構成としてはよくあるビートジャックものな訳ですが、全体を通して中々楽しめた内容でした。
50のインパクトのあるHook作りや、BanksにYayoの詰め込んたようなラップなどこの頃のG-Unitメンバーの長所がしっかり発揮されています。
ミックステープということでオリジナルアルバムと比べると繋ぎなど粗い部分もありますが、無料配信されているミックステープとしては十分な内容。
興味ある方は無料ですし、ダウンロードしてみては?


↓M-2「Catch Me In The Hood」。
www.youtube.com

Jointed Times / LOOZ

Jointed Time


曲目リスト


1. 雪
2. 手紙~キミに贈るコトバ~
3. 桃源郷(Album Version)
4. KODO
5. ムーンライト
6. One Day
7. アイドリング
8. Chat.1
9. Lowllin'
10. Country Road
11. SunRider
12. 宿り木
13. RIVER SIDE
14. 恋花火 -夜遊び編-


評価: ★★★★★★★★★☆


福島県福島市出身のラッパー、LOOZの1stアルバム。
2009年11月4日発売。


LOOZは福島県福島市出身。高校を中退した後に上京したものの3年後に地元に戻り、友人たちとイベントを開催。
そのイベントで友人が制作したミックステープを聴かせてもらったのをきっかけに、西海岸系HIP HOPの世界へ入り込むことに。
最初はDJのサイドMCとしてマイクを握っていたLOOZですが、19歳か20歳くらいの時にラップもやってみようという思いを抱きラッパーとしての活動を開始。
そんな彼に転機が訪れたのは2008年のことで、同年にリリースされたコンピレーションアルバムへの参加が決定。
そのアルバムにてLOOZが発表した「桃源郷」がインディーズながら配信サイトにて驚異的なダウンロード数を記録。
その後はライブ活動と制作活動を経て2009年8月に1stシングルを数量限定でリリースし2週間で完売。モバイル配信にて各サイトの1位を独占するという現象まで起こすというとんでもないデビューを果たしました。
同年9月に1stミニアルバムをリリースし、リード曲であった「One Day」は「ピラメキーノ」のED曲として起用。
そして同年11月に1stアルバムである本作をリリースしました。


さて、内容に。


LOOZの特徴は優しい声の歌も交えた柔らかいラップ。
リリックの内容にも不良臭さなどは全くなく、本当にそこらへんにいそうなお兄ちゃんが作った楽曲という感じがします。


アルバムのスタートを告げるM-1からしてもうそういう特徴はガツンと出ています。
ピアノをメインにしたトラックの上にのるLOOZのラップは本当に優しさが満点。
かなりしっとりした雰囲気のトラックはLOOZの声との相性もバッチリで、掴みとしては最高と言えます。

続くM-2「手紙~キミに贈るコトバ~」は初っ端のギターの音色がとてもキャッチ―で、LOOZはラップを封印し歌で押し切っていますね。
結構ギターの主張が強いトラックなんですけど優しい声ながらそれに負けない歌を披露しているLOOZの力量は流石のもの。


M-3「桃源郷(Album Version)」は本作では唯一のAILI仕事(この曲以外は全てトラックはFuekiss!!仕事)で、こういうジャンルではよく使われるクラシックのカノンをネタ使い。
優雅な雰囲気ではあるもののガッチリループさせたトラックになっていて、ここまで上手くHIP HOPと融合させた仕事は中々ないのでは。
そこに乗るLOOZのラップも非常に歯切れよく、聴いていて首を振りたくなること請け合い。

M-4「KODO」は休みの日の朝を連想させるような爽やかなトラックで、その上でのLOOZの甘い雰囲気のラップもバシッとハマっています。
3分もない短い曲なんですけど、とにかくトラックとラップの相性が良すぎるので満足度はかなり高いです。

M-5「ムーンライト」はバックコーラスでRayが参加。
HookではLOOZの歌と素晴らしい絡みを見せてくれ、曲の良さをガンと押し上げ。
様々な展開を見せるトラックも非常に聴いてて楽しいですし、その如何なる展開にも難なくラップを乗せるLOOZのスキルの高さが垣間見えますよね。


M-6「One Day」は、車が走り抜けるようなトラックで流れるようなLOOZのラップも抜群のハマり具合。
Hookでの随所のコールも相まって聴いていると車を飛ばしたくなります。
M-7「アイドリング」も同じくバイクネタ。バイクに関する愛を表したリリックは聴いていて笑ってしまいますね。
Hookでの歌の乗せ方なんて本当にラブソングっぽくて、作り方が本当に上手いです。
バイクの音のスキットを経てのM-9「Lowllin'」は本作で一番ノリがいいトラックで、LOOZも比較的攻撃的なラップを乗せています。
ちょっと異色な曲ですが全体としてもかなりいいアクセントになっています。

M-10「Country Road」は色々な音を混ぜ込んだトラックで、本作では一番インストほしい曲かも。
そこに乗っかるLOOZの楽し気な歌とラップもいいのは言うまでもなく。


M-11「SunRider」はかなりせわしないトラックでラップを乗せるの難しそうですけど、LOOZがこれまでの曲通りの乗せ方でしっかり乗りこなしています。
バースではしっかりとしたラップを乗せ、Hookでは優しい歌を乗せています。ギアをそれぞれ変えてどっちもしっかり聴けるようにしているのが凄みです。


M-12「宿り木」でガラッと雰囲気が変わりM-5「ムーンライト」と同じくバックコーラスでRayが参加。
神秘的なトラックでHookはRayの歌だけになっており、もはやLOOZとRayのコラボ曲と言っていいですね。
勿論双方の相性の良さは折り紙付きで、壮大なバラードに仕上がっています。

M-13「RIVER SIDE」はHookでは思い切り声を弄っていて本作でも異色。
その尖った声とLOOZの優しい声の対比が面白く、聴きごたえは凄くあります。


最後を〆るのはシングル曲のM-14「恋花火 -夜遊び編-」。
結構グイグイくる感じの打ち込みトラックですが、その上でもLOOZの歌とラップのハイブリッドスタイルを炸裂。
ハイライトは最後のHook前の歌ですかね。ここのトラックとLOOZの歌のハマり具合が半端ないです。


上に書いたようにリリースした曲が着うたでヒットを果たしたLOOZのフルアルバムですが、率直に言うと傑作です。
歌とラップを違和感なく融合させるLOOZの力量もさることながら、Fuekiss!!とAILIが手掛けたトラックもLOOZの声の魅力を存分に引き出していて、最初から最後まで捨て曲なし。
リリックの内容もそこまで攻撃的な詞はないため、どんな方にも聴けるのではないでしょうか。
LOOZの声もカッコよさと優しさが合わさった感じで、本当にバランスがいいです。
1曲1曲単位の曲も素晴らしく、全体の流れもスッと聴ける。2009年にリリースされたアルバムでも間違いなく上位に入るアルバムです。

しかし新人にしては異例の華々しいデビューを飾り、ここまで出来がいいアルバムをリリースしたLOOZですけど本作のリリース以降は同年のライブにいくつか出演したのを最後にバッタリと音沙汰がなくなりました。
2024年現在でも本作が最後の音源リリースとなっていて客演参加情報なども見つからないため、マイクを置いてしまったんでしょうね。
本作はシングル収録曲もミニアルバム収録曲も全て収録されているのもあり、1stアルバムである本作で全てを出し切ってしまったのかもしれません。
個人的にはかなり期待できるラッパーだと本作で感じたのでもっと活動してほしかったとも思うんですけど、本作みたいな傑作アルバムをリリースして活動を終えたと考えればこれでよかったんでしょうかね。
まあ真相は関係者しか分かりませんが・・。


とりあえず見かけたら是非チェックを。


M-1」のPV。
www.youtube.com

5 (Murder Of Number) / 50 Cent

topmixtapes.com


曲目リスト


1. My Crown
2. NY
3. United Nations
4. Business Mind feat. Hayes
5. Roll That Shit feat. Kidd Kidd
6. Leave The Lights On
7. Money
8. Definition of Sexy feat. Guordan
9. Be My Bitch feat. Brevi
10. Can I Speak To You feat. Schoolboy Q


評価: ★★★★★★★☆☆☆


昨年の1発目は50 Centでしたが、今年も新年初の洋は50 Centです。


アメリカのNY出身のラッパー、50 Centのミックステープ。
2012年7月6日配信開始。


2009年に4thアルバムをリリースした後はしばらく音源リリースをしていなかった50。
2011年に入ってからミックステープをリリースして再びラッパーとしての存在をアピール開始。
その後2012年にアルバムをリリースすると告知し、その50の5thアルバムとしてリリースされる予定だったのが本作でした。
しかし急遽50本人から「誰も5 (Murder Of Number) を買えなくなった。フリーで出すからな」と告知があり、本作はミックステープとして無料でリリースされました。


では、内容に。


上にも書いたように元々は50の5thアルバムになる予定だった本作。
50は4thアルバムをリリースした際のインタビューで「2ndアルバムの収録曲は元々ミックステープ用に作った曲たちだったが、ああいう方向性を推し進めるべきだって言われて2ndアルバムに収録した」と発言していましたが、本作はその逆になります。


M-1My Crown」は様々な音が混じったトラックの入り方でちょっとせわしない始まり方。
随所で女性の歌が入っているのがミックステープ色がある楽曲です。
基本はいつもながらのフニャフニャなラップですが所々早口で乗せるところがあって聴きどころはあります。しかしトラックがちょっと単調で飽きが来る上に50のラップとの相性は微妙ですね。

M-2「NY」は夜のネオン街を彷彿とさせるような都会的な雰囲気のワンループなトラックで、封印された「Power Of The Doller」の雰囲気と似ています。
あの頃の50がラップを乗せたらもっと良曲に化けたんじゃとは思いますが、この頃の50とも相性は悪くありません。

M-3「United Nations」はピコピコ音が所々に入ったこの頃の流行りを意識したようなトラック。
その上に乗っかる気怠い雰囲気の50のラップとも相性よし。前半の客演なし曲の中ではこの曲が一番出来がいいと感じます。


M-4「Business Mind feat. Hayes」はHayesが参加。
50の癖になるようなHookが絶妙で、1stや2ndの頃のような耳に残るHookを聴かせてくれます。
そんなHookを挟みながらの50とHayesのラップ合戦も入れ替わるタイミングがバッチリで、間違いなく前半のハイライト楽曲。

M-5「Roll That Shit feat. Kidd Kidd」はKidd Kiddが参加。
Hookで展開を変えるトラックの作り込みの面白さもさることながら、Kidd Kiddが難なくスルッと乗せるラップがトラックによく合います。
50もKidd Kiddに負けないハキハキとしたラップを乗せており、いいアクセントになっています。


アルバムは後半へ。
M-6「Leave The Lights On」でシンプルなワンループトラックの上に乗るのは50のいつもながらの独特な癖のあるラップ。
Hookでは1stアルバムの頃のような少し音程のあるラップを乗せていて、50だからこそ作れた仕上がり。

次のM-7「Money」は雰囲気的には4thアルバムに入っていても違和感がないですね。
M-6「Leave The Lights On」ほど耳に残るHookではないですけど、悪くはないです。

M-8「Definition of Sexy feat. Guordan」はGuordanが参加。
気怠さが漂いながらドラムの音がしっかりとしたノリのいいトラックで、2ndアルバムの収録曲を彷彿とさせます。
50のラップがいつもよりガッチリ乗せてあり、Guordanも随所で歌にて援護射撃。
50もGuordanもトラックとの相性がバッチリで、後半の収録曲のハイライト。

M-9「Be My Bitch feat. Brevi」はBreviが参加。
壮大な雰囲気のトラックで、Breviの歌との相性がバッチリです。
50のホニャホニャしたラップもアクセントとして悪くないんですがBreviの歌の方がハマってますかね。

M-10「Can I Speak To You feat. Schoolboy Q」はSchoolboy Qが参加。
元ネタの色が強いトラックで硬派な雰囲気。
Schoolboy Qのラップが存在感強めでちょっと50が食われている感があり、〆としてはちょっと弱め。


内容としては過去の50の楽曲を彷彿とさせる懐かしい雰囲気の楽曲もあれば、当時の流行りを意識した楽曲もありでバラエティに富んでいます。
10曲という少なめの曲数ですがそのバラエティのお陰で最後まで飽きずに聴ける内容になっていますね。

ただ曲としては良し悪しがあり、色々なスタイルを模索していたように感じる内容でもありますね。
あとM-10「Can I Speak To You feat. Schoolboy Q」は曲自体は悪くないのに最後の〆となっているので魅力が削がれている気がします。
M-9「Be My Bitch feat. Brevi」が壮大な雰囲気なのでここで終わればいい〆になったのになんで最後でこんな硬派な曲を入れた?という感じです。
中盤あたりに入れた方が間違いなく冴えたと思います。


しかし本作でしか聴けない良曲もあり、全体で見れば良作なのは事実。
無料でダウンロードできるので、是非チェックしてみては?


↓M-2「NY」のPV。
www.youtube.com