りくぼーの音楽感想倉庫

音楽CDの感想を綴っていきます

Jointed Times / LOOZ

Jointed Time


曲目リスト


1. 雪
2. 手紙~キミに贈るコトバ~
3. 桃源郷(Album Version)
4. KODO
5. ムーンライト
6. One Day
7. アイドリング
8. Chat.1
9. Lowllin'
10. Country Road
11. SunRider
12. 宿り木
13. RIVER SIDE
14. 恋花火 -夜遊び編-


評価: ★★★★★★★★★☆


福島県福島市出身のラッパー、LOOZの1stアルバム。
2009年11月4日発売。


LOOZは福島県福島市出身。高校を中退した後に上京したものの3年後に地元に戻り、友人たちとイベントを開催。
そのイベントで友人が制作したミックステープを聴かせてもらったのをきっかけに、西海岸系HIP HOPの世界へ入り込むことに。
最初はDJのサイドMCとしてマイクを握っていたLOOZですが、19歳か20歳くらいの時にラップもやってみようという思いを抱きラッパーとしての活動を開始。
そんな彼に転機が訪れたのは2008年のことで、同年にリリースされたコンピレーションアルバムへの参加が決定。
そのアルバムにてLOOZが発表した「桃源郷」がインディーズながら配信サイトにて驚異的なダウンロード数を記録。
その後はライブ活動と制作活動を経て2009年8月に1stシングルを数量限定でリリースし2週間で完売。モバイル配信にて各サイトの1位を独占するという現象まで起こすというとんでもないデビューを果たしました。
同年9月に1stミニアルバムをリリースし、リード曲であった「One Day」は「ピラメキーノ」のED曲として起用。
そして同年11月に1stアルバムである本作をリリースしました。


さて、内容に。


LOOZの特徴は優しい声の歌も交えた柔らかいラップ。
リリックの内容にも不良臭さなどは全くなく、本当にそこらへんにいそうなお兄ちゃんが作った楽曲という感じがします。


アルバムのスタートを告げるM-1からしてもうそういう特徴はガツンと出ています。
ピアノをメインにしたトラックの上にのるLOOZのラップは本当に優しさが満点。
かなりしっとりした雰囲気のトラックはLOOZの声との相性もバッチリで、掴みとしては最高と言えます。

続くM-2「手紙~キミに贈るコトバ~」は初っ端のギターの音色がとてもキャッチ―で、LOOZはラップを封印し歌で押し切っていますね。
結構ギターの主張が強いトラックなんですけど優しい声ながらそれに負けない歌を披露しているLOOZの力量は流石のもの。


M-3「桃源郷(Album Version)」は本作では唯一のAILI仕事(この曲以外は全てトラックはFuekiss!!仕事)で、こういうジャンルではよく使われるクラシックのカノンをネタ使い。
優雅な雰囲気ではあるもののガッチリループさせたトラックになっていて、ここまで上手くHIP HOPと融合させた仕事は中々ないのでは。
そこに乗るLOOZのラップも非常に歯切れよく、聴いていて首を振りたくなること請け合い。

M-4「KODO」は休みの日の朝を連想させるような爽やかなトラックで、その上でのLOOZの甘い雰囲気のラップもバシッとハマっています。
3分もない短い曲なんですけど、とにかくトラックとラップの相性が良すぎるので満足度はかなり高いです。

M-5「ムーンライト」はバックコーラスでRayが参加。
HookではLOOZの歌と素晴らしい絡みを見せてくれ、曲の良さをガンと押し上げ。
様々な展開を見せるトラックも非常に聴いてて楽しいですし、その如何なる展開にも難なくラップを乗せるLOOZのスキルの高さが垣間見えますよね。


M-6「One Day」は、車が走り抜けるようなトラックで流れるようなLOOZのラップも抜群のハマり具合。
Hookでの随所のコールも相まって聴いていると車を飛ばしたくなります。
M-7「アイドリング」も同じくバイクネタ。バイクに関する愛を表したリリックは聴いていて笑ってしまいますね。
Hookでの歌の乗せ方なんて本当にラブソングっぽくて、作り方が本当に上手いです。
バイクの音のスキットを経てのM-9「Lowllin'」は本作で一番ノリがいいトラックで、LOOZも比較的攻撃的なラップを乗せています。
ちょっと異色な曲ですが全体としてもかなりいいアクセントになっています。

M-10「Country Road」は色々な音を混ぜ込んだトラックで、本作では一番インストほしい曲かも。
そこに乗っかるLOOZの楽し気な歌とラップもいいのは言うまでもなく。


M-11「SunRider」はかなりせわしないトラックでラップを乗せるの難しそうですけど、LOOZがこれまでの曲通りの乗せ方でしっかり乗りこなしています。
バースではしっかりとしたラップを乗せ、Hookでは優しい歌を乗せています。ギアをそれぞれ変えてどっちもしっかり聴けるようにしているのが凄みです。


M-12「宿り木」でガラッと雰囲気が変わりM-5「ムーンライト」と同じくバックコーラスでRayが参加。
神秘的なトラックでHookはRayの歌だけになっており、もはやLOOZとRayのコラボ曲と言っていいですね。
勿論双方の相性の良さは折り紙付きで、壮大なバラードに仕上がっています。

M-13「RIVER SIDE」はHookでは思い切り声を弄っていて本作でも異色。
その尖った声とLOOZの優しい声の対比が面白く、聴きごたえは凄くあります。


最後を〆るのはシングル曲のM-14「恋花火 -夜遊び編-」。
結構グイグイくる感じの打ち込みトラックですが、その上でもLOOZの歌とラップのハイブリッドスタイルを炸裂。
ハイライトは最後のHook前の歌ですかね。ここのトラックとLOOZの歌のハマり具合が半端ないです。


上に書いたようにリリースした曲が着うたでヒットを果たしたLOOZのフルアルバムですが、率直に言うと傑作です。
歌とラップを違和感なく融合させるLOOZの力量もさることながら、Fuekiss!!とAILIが手掛けたトラックもLOOZの声の魅力を存分に引き出していて、最初から最後まで捨て曲なし。
リリックの内容もそこまで攻撃的な詞はないため、どんな方にも聴けるのではないでしょうか。
LOOZの声もカッコよさと優しさが合わさった感じで、本当にバランスがいいです。
1曲1曲単位の曲も素晴らしく、全体の流れもスッと聴ける。2009年にリリースされたアルバムでも間違いなく上位に入るアルバムです。

しかし新人にしては異例の華々しいデビューを飾り、ここまで出来がいいアルバムをリリースしたLOOZですけど本作のリリース以降は同年のライブにいくつか出演したのを最後にバッタリと音沙汰がなくなりました。
2024年現在でも本作が最後の音源リリースとなっていて客演参加情報なども見つからないため、マイクを置いてしまったんでしょうね。
本作はシングル収録曲もミニアルバム収録曲も全て収録されているのもあり、1stアルバムである本作で全てを出し切ってしまったのかもしれません。
個人的にはかなり期待できるラッパーだと本作で感じたのでもっと活動してほしかったとも思うんですけど、本作みたいな傑作アルバムをリリースして活動を終えたと考えればこれでよかったんでしょうかね。
まあ真相は関係者しか分かりませんが・・。


とりあえず見かけたら是非チェックを。


M-1」のPV。
www.youtube.com