曲目リスト
1. Intro
2. Project 妄
3. 妄走族 DA バカヤロウ
4. 王者 -DEFENDING CHAMPION-
5. P.M.D
6. すずらん -酔いどれ行進曲-
7. STOP THE WARS
8. YEN
9. クソMC 2003 Wack MC
10. まむし -Choice the Game- feat. D.O
11. 与太者 feat. MISTA SMITH
12. マンチスター東京 feat. Bigga Raiji
13. Skit cutting by DJ TURBO
14. Underground Over the Sky feat. Joeyslick
15. クソMC 2003 Sucker MC
16. Skit
17. 族中法度'改
18. ブリブリテーマソング Part Ⅱ feat. MISTA SMITH
評価: ★★★★★★★☆☆☆
東京三軒茶屋で結成されたラップグループ、妄走族の3rdアルバム。
2003年3月26日発売。
2001年の夏に2ndアルバムをリリース後にアルバムからのLPを2枚リリースした妄走族。
2002年に入ってからは妄走族としてのリリースはなくなり、代わりにDENとZORROのユニットであるGAS CRACKERZが1stアルバムをリリース。
他にはコンピレーションアルバムに楽曲を提供したくらいで、主に主戦場は現場だった模様。
ちなみにコンピレーションアルバムに参加した時点で既に565(現G-MAN)はメンバーに加わっていたようです。
そして2003年に突如3rdアルバムである本作をリリースしました。
それまでインディーズからのリリースでしたが本作はユニバーサルミュージックからのリリースとなり、彼らもとうとうメジャーに進出。
メンバーは以前の7MCに加えてMCとして565、DJとしてDJ TURBO、DJ JACK HELERが加入し、10人組となった妄走族の初のアルバムであり、妄走族全体としても初のメジャー流通アルバムでもあります。
本作で妄走族を初めて聴いたというリスナーは多いのではないでしょうか。
では、内容に。
1stアルバムでインパクトのある言葉選びと勢いというスタイルを突きつけ、2ndアルバムでエッジを広げてそのスタイルの完成形を見せつけた印象の妄走族。
3rdアルバムである本作では、だいぶ色が変わっています。
イントロは声ネタスクラッチという点では前作までと同じなのですが、スクラッチをかけているトラックが打ち込み系のトラックになっています。
そんなイントロから間髪いれず始まるM-2「Project 妄」はこれまた打ち込み全開のトラックで、全体的にサンプリング色が強いトラックが多かった前作とは明らかに雰囲気が異なっています。
もうこの始まり方からして「本作以前とは違う」となるはずです。
曲自体は全員参加の勢いのあるマイクリレーでみんないい仕事ぶりでぶっ飛ばされること必至。
M-3「妄走族 DA バカヤロウ」はこれまた全員参加のマイクリレーですが、こちらはおどろおどろしい雰囲気のトラック。
K DUBの名パンチラインに対して勝手にアンサーを返す剣や淡々とした声ながらも力強い言葉さばきで存在感を見せるZORROなど随所で聴きどころを提供しており楽しく聴けます。
DENのRIPとKICKに対するDISに関しては「RIPやKICKはとりあえずDISっとけ」という当時の風潮に安易に乗っかった感が否めず。
M-4「王者 -DEFENDING CHAMPION-」は「Project 妄」に負けない勢いのあるトラックで、狼→神→般若→剣の順番でのマイクリレー。
4人ともいいですが男臭いラップでガッツリと初陣を切る狼とインパクトのある言葉選びが光る剣が特にキレキレ。
M-5「P.M.D」はちょっとバウンシーな雰囲気でこれまた前作まではなかったタイプの楽曲。
この辺りから狼がちょこちょこ歌うようになりましたね。実際狼は歌の方も魅力があるタイプだと思うのでこの変化はアリだと思います。
M-6「すずらん -酔いどれ行進曲-」は神と狼のタッグによる陽気なアルコール賛歌。
本作の中でもかなり軽い雰囲気のトラックですけど、その上にのる神と狼の嫌味のないラップで純粋に楽しい気分になれますね。
「ほどほどにしてくださいよ」って感想は出ちゃいますが。
続くM-7「STOP THE WARS」はそんな楽しい雰囲気から一転、「戦争反対」という重いトピックを扱っていることもあってかなり重たい雰囲気のトラック。
マイクを握るのはDENと般若。
どちらもトラックの雰囲気にはよく合っていますが、DENのラップが誰にでも書けそうなリリックでもうちょっと独特な言葉選びが欲しかったところ。
般若の方は独特な言葉選びで重たいテーマにも関わらず楽しく聴けるのでますますDENの言葉選びの弱さが目立ってます。
M-8「YEN」は剣、般若、ZORROの3人による1stアルバムの「¥」のリメイク曲。
リリックの方は原曲と同じ個所もあるものの大体は変えており、切れ味鋭い重たいトラックの上で3人ともキレキレな言葉選びを披露。
トラックとラップの相性も文句なしで満足感高めな楽曲。
M-9「クソMC 2003 Wack MC」は剣のソロで、曲名の通りDIS曲なんですが標的はKICK THE CAN CREW。
上に書いたDENのRIP、KICKに対するDISと同じ理由もありますが、1stアルバムの「クソMC」よりも言葉選びの鋭さが鈍ってるような。
シーンに対する反逆児的な立ち位置だった彼らですけどやっぱりメジャーで進出するとなると当時の風潮も考慮しないといけないんでしょうか。
2分もない楽曲なのでスキットみたいな立ち位置で聴くのがいいかも。
しかし次に控える雷からD.Oが参加したM-10「まむし -Choice the Game- feat. D.O」は本作の楽曲の中でも屈指の出来と言えます。
裏社会で生きている人間の仕事内容を本人たちの立場から描写するスト―リテーリングもので、最初から最後まで緊迫感溢れる展開を聴かせてくれます。
不穏なトラックと565のHook、最後に鳴り響くサイレンの音と一切曲中に無駄がありません。
M-11「与太者 feat. MISTA SMITH」は剣と神、565とMISTA SMITHの4人による極道モノの楽曲。
後に2人で極道モノのコンピアルバムを作るだけにこういうテーマだと剣と神の言葉選びの上手さが光りますね。
おどけた感じなのに吐く言葉の内容がえげつないMISTA SMITHもバースが短いのに他の3人に劣らない存在感を発揮。
M-12「マンチスター東京 feat. Bigga Raiji」は思い切り打ち込み系のトラックでHookはBigga Raijiの歌、全体的にダラダラした雰囲気というこれまた前作まではなかったタイプの楽曲。
Hookを交えながら般若→神→剣の3人でマイクを回すわけですが、上に書いた雰囲気のお陰でかなり新鮮に聴けます。
DJ TURBOのスクラッチによるスキットを挟んだM-14「Underground Over the Sky feat. Joeyslick」はHIP HOPの4大要素(ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティ)をテーマにしており、DJ JoeyslickがスクラッチとラジオDJ的な役割で参加。
剣がグラフィティ、神がブレイクダンス、般若がDJについてラップするという構成で、剣の言葉選びの面白さが中々聴かせます。
ただHookが英語なんですけど思い切りカタカナ英語になっていて聴き苦しさがあるのでこれはもうちょっと何とかならなかったのかなあと。
M-15「クソMC 2003 Sucker MC」は般若のソロで、特定のMCやDJがどうこうではなくシーンに対する喝入れ楽曲です。
上のDENと剣の取ってつけたようなRIP、KICKDISとは違ってこちらは説得力がある内容なので素直に受け止められます。
言葉選びはこの上なく下品なんですけど妄走族時代の般若特有の変幻自在なフロウを存分に楽しめますね。
スキットを経てのM-17「族中法度'改」は「族中法度」のパート2という感じで全員参加のマイクリレー。
トラックは「族中法度」のトラックをベースにしてリメイクしたものになっており、ZORROのラップが一番光ってますかね。
ZORROの淡々としつつも鋭いラップは重たいトラックにこのうえなく合います。
最後を〆るM-18「ブリブリテーマソング Part Ⅱ feat. MISTA SMITH」は前作の「ブリブリテーマソング」と同じメンツでのマイクリレー。
前作は陽気な雰囲気のトラックでしたがこちらはダウナーな雰囲気のトラックとなっており、MISTA SMITHと565のラップもきちんとしたラップになっているため前作より楽曲らしさは出ています。
こちらは最後を〆る565のラップが一番いい味がでています。アルバムの最後を565の陽気なラップで〆るというのも乙なものです。
マイクリレーがメインというのは前作までと同じですが、トラックは打ち込みがメインとなり様々な分野に挑戦、前作までとは色が変わった内容になっています。
前作が前作までのスタイルの完成形という感じだったので、その次の作品である本作で色が変わるというのは必然だったのかもしれません。
様々なタイプの楽曲が入っており、これはちょっと・・という楽曲もあるためアルバム全体のまとまりという面では妄のアルバムの中では今一つ。
しかし「まむし -Choice the Game- feat. D.O」、「マンチスター東京 feat. Bigga Raiji」など本作でしか聴けない名曲もあるのも事実なので十分に良作。
それらの曲を聴くだけでも本作を手に入れる価値はあります。
↓M-2「Project妄」のPV。
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